南伸坊さんと糸井重里が
あちこちを小旅行しながら、
めくるめく雑談をくりひろげる、
そこそこ人気のシリーズ、黄昏。
思えばずいぶん久しぶりの新作です。
奈良に居を移したゲージツ家、
「クマ」こと篠原勝之さんと話します。
それぞれが二十代のころから
とっくに雑談し合ってる3人、
はたしてどこまで行くのやら。
どうぞ、のんびりおつき合いください。
必然、「老いと死」についても語ります。

>糸井重里

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糸井重里(いといしげさと)

コピーライター
株式会社ほぼ日会長

雑談オールラウンダー。
ダジャレもシモもどんどん行く。
タコの話なども得意。

>南伸坊

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南伸坊(みなみしんぼう)

イラストレーター
エッセイスト

蓄積した雑学から雑談を展開。
さまざまなモノマネ経験あり。
タコの話なども得意。

>篠原勝之

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篠原勝之(しのはらかつゆき)

ゲージツ家
作家

鉄や土の作品をつくる一方、
文筆家としても活躍し、
泉鏡花文学賞を受賞する。
過去のエピソード豊富。

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第31回 じっと手を見る


糸井
石川啄木のことなんだけどさ。
南
石川啄木。うん。

糸井
啄木がさ、
「じっと手を見る」って言ってたじゃない。
高校生のとき、あの歌が教科書にあって、
俺、先生に質問された覚えがあるんだよ。
啄木はなぜ見たんでしょう? みたいな。
で、そこで俺は
「ただなんとなくじゃないですか」って
答えた覚えがあって。
南
ははははは。
糸井
それ、いつまでも妙に、
あの答えはないなぁ、って、
この年になっても思ってるわけよ。
南
はははははは。
篠原
はははははは。
糸井
ないよなあ、やっぱり。
でね、またそれを考えてたんだけどね、
あれ? って思ったのよ。
「じっと手を見る」ってさ、
100人中100人が、
手のひらだと思ってるじゃない?
南
そうだね。こう。
糸井
手の甲を見るってことは
誰も言わなかったなと思って。
俺、手の甲を見る方に
ちょっと1票入れてみたい。
南
「なんとなく甲を見てるんじゃないですか」
ってことね。
糸井
なんとなくじゃなくて(笑)。
今回は、しっかりした答えだよ。

糸井
というのもね、歳を取るとさ、
ああ歳取ったな‥‥って、
手の甲を見て思うんだよ。
南
ああ、ああ、思うね。
シワがあったりシミが出たりとかして。
篠原
うん。だいたい、
じじいになると手の甲を見るね。
糸井
じじいになると見るよね。
篠原
女の人もな、手に歳が出る。
逆に手のひらは、ほとんど歳関係ないから。
糸井
そうなんだよ、甲なんだよ。
こっちだよね。
篠原
うん、こっちだ。

南
啄木は、じっと手の甲を見てた。
糸井
ただね、残念なことに‥‥
あの歌を詠んだとき、
石川啄木、二十代。前半。
南
手のひらだな、やっぱり。
篠原
ふつうは、手のひらだな。
糸井
つまんないなあ、それじゃ。
甲にしてほしい。
南
啄木も、まだまだだね。
じっと甲を見てほしいね。
糸井
まだまだだね。
でも、年齢が手の甲に出るっていうのは
みなさんの同意があってよかった。
篠原
見るよ、俺、手の甲。
老けてきたなあ、とか思う。
糸井
若くないなと思うよね。
歳をとってもきれいな
女の人たちっているじゃない?
あの人たちも手の甲は
写真に撮らせないんじゃないかなあ。
あ、でも、クマちゃんの手は若いね。
土をやってるからかな。
篠原
俺か?
糸井
80過ぎた手じゃないよ、それ。
南
そういえばそうだね。

篠原
いや、シワシワになってきたよ。
おじいさんになったよ。
糸井
しょうがないよね、それは。
篠原
大根の漬物みたいに干しちゃえばいいかな。
一日干してたら、水分がちょっと飛んで、
張りが出てくるんじゃないか。
南
手を干すのはたいへんだよ。
取り外せないんだから。
篠原
そりゃそうだな。
糸井
そんなことよりさ‥‥。
南
うん。
糸井
高校時代のあの
「なんとなくじゃないですか」
ってのは、ダメだったなぁ‥‥。
もうちょっとあっただろう。
南
はははははは。

(自分の手の甲を見ちゃいますね。つづきます)

2026-03-27-FRI

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  • 写真・山口靖雄(MountainDonuts)

    これまでの「黄昏」シリーズ

    黄昏

    黄昏放談

    黄昏 日光・東北編

    黄昏 あちこち編

    黄昏 スカート編

    黄昏 ブータン編