おとなの小論文教室。

受験のテクニックとして、小論文の書き方を勉強した?
その後は、ナイスなテキストを書いていますか?
考えること伝えることの愉快を、ここで味わいましょう。
ありがたいことに、小論文というものを
考えたり、たのしんだり、たくさん読んできた
カジュアルで優しい先生がいるんです。
さぁ、山田ズーニー先生、お願いしまーす。

Lesson1040
子親

母と歩いた。

このゴールデンウィーク、
父の見舞いに行った帰り、
病院から家までの道のりを歩いた。

一般の人なら40分くらいで歩けるだろう。

でも、87歳の母の足どりでは倍以上かかる。

ふるさとの交通事情を、
東京の人は想像しづらいかもしれない。

バスの便数は極端に少ない。
ながしのタクシーは皆無。
タクシー呼ぶのも難しい。

文句を言いたいのではない。

その逆だ。

ふるさとのバス、タクシーには、
手を合わせておがむほど感謝してもしきれない。

バスは、
私たち以外だれも乗っていないことも多く、
きっと赤字だろうに、廃線しないでいてくれる。
「どうか、このまま走り続けてください。」と、
祈らずにはおられない。

そのバスが、
ゴールデンウィークで便数が減っていて、
歩くより他なかった。

私は、母の歩幅に合わせ、
ゆっくり、ゆっくり、
ふるさとの道を踏みしめながら歩いた。

すると、子どものころ、思春期、大学時代‥‥
と、たくさんたくさん記憶が蘇る。

その記憶のかたわらに若かった母がいる。

若い日、母はこの道を自転車で駆け抜けた。

いつだったかなあ、
私が帰省した折、
買い物に行こうとして、
いつもの母の自転車が見つからない。

「自転車、どこに置いたん?」

とたずねて、初めて、
母が老いて、もう自転車には乗れないのだ、
だから処分したのだ、と知った。

あの時は胸をしめつけられるように
寂しかったけど、あんな寂しさも、もう、

遠い。

いくつもの記憶を思い出すそばから、
あまりにも時が過ぎ去ってしまったことを知る。
若かった父も、母も、私も、

すべては遠い。

母は、道脇の花を見ては綺麗と言ったり、
時折、鼻歌を口ずさんだり、
唐突に昔話をしたりした。

私は、そんな母から目が離せず、

「母が疲れはしないか。
喉は渇いていないか。
母が少しでも楽に歩けますように」と、

確かに私1人分歩いているはずなのに、
なんだか2人分歩いているように、
気力、体力、張り詰めていた。

あと10分ほどで家、
という段になって、母が、

「そこで休もう。」

と言う。え? え? と私は見回したが、
休む場所など見当たらない。
気がつくと、もう、

母は、ちょこん、と座っていた。

それは、小さな道ばたの、
小さな小さな側溝にできた、
わずか数センチほどのコンクリの段差。

言われなければ見過ごしてしまうような
その小さな段差に、母が、

服を着て36㎏の小さな小さな母が、
ちょこんと座っていた。

その、かわいらしさ、儚さ、愛しさ。

生まれて初めてのような感情が湧く。
この日の母の姿を、
私は一生忘れないんじゃないかと思う。

私は、黙って母の隣に腰かけた。

涼しい。

5月の陽射しは暑いのに、
ここだけひんやり風が通る。

母は、きっと、買い物帰りや、
父の見舞いに病院に行った帰り、
あとほんのちょっとの距離がしんどくて、
ここを見つけたんだろうな。

元気な人からすれば、
「なんで? あとちょっとで家よ。
家に帰ってゆっくり休めばいいのに。」
と言うところだろう。

でも、その、あとちょっとが、しんどい。
いつのまにかそんな「老人の目線」で、
家までの距離を見ている自分がいた。

私が小さいころ、
母もこんなまなざしで私を見ていたのだろうか。

子どもには、「子どもの目線」があり、
「子どもの時間の流れ」がある。

母はいつもそこに寄り添ってくれた。

小さい子どもの私が、
家まであとちょっとの帰り道が我慢できず、
「疲れた」としゃがみこんでも、
「まだ遊びたい」と泣いても、

小さく儚い私に、母は付き合ってくれた。

「関係の逆転」

連休中ずっとそれを思っていた。

例えば私が用事に集中している時、
母が唐突に話しかけてくる。
いつもの私なら「静かにしてよ」と言い返すところ、
でも、今回はこう感じた。

「小さいころ、私もこうして、
用事をしている母に話しかけた。
すると、若い日の母は、用事の手を止めて、
小さい私の話に、何度でも耳を傾けてくれた。」

いま、母は、食が細く、
ほんとに痩せて小さくなってしまった。
それが家族の心配の種で、
私も、毎日、きょうは母に何を食べさせよう、
どうやって食べてもらおう、と思つめた。

「きっと母もそうだったのだろう。
幼い私や姉に、きょうはどんなものを
食べさせよう、たくさん食べてくれと、
毎日、毎日、心を配ったのだろう。」

小さいころ母がしてくれたことを、
いま私が、母にする番が来た。

そう想うと、
あの側溝に、ちょこん、と座った母を見て、
私から湧き出た初めての感情は、
「母性」かもしれない。

「親子」

という一言では、とてもくくりきれないほど、
親と子の関係は変化する。

子どものころ、
親がいなければ生きられないほど、
依存しきった関係から、

子どもはいつか自立し、

月日は流れ、

いつしか親は老い、
子が親を守るようになる。

いま、年老いた親と、私の関係を、
昔と同じ「親子」と呼ぶには、
あまりにも違っていて、切ない。

かといって代わる言葉も見つからない。

保護者のような目で、自分の親を見ている、
この関係をなんと呼べばいいのだろう。

この関係に私は、まだまだ慣れない。

だけど、親も、最初の子が生まれた時、
親経験ゼロ歳から、徐々に慣らし、
子どもと一緒に成長していくという。

「私も、この、親との新たな関係、
新たな責任感を、生きていこう。」

じっくり、じっくり、
親と一緒に成長しながら。

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お問い合せ先:北日本新聞就職情報センター(kinet) 
メールアドレス:kitanippon.kinet@gmail.com 
電話:076-445-3337(平日9:00〜17:00)「とやま就活」まで


【満員御礼!】この講座は満席になりました。
キャンセル待ちも締め切りました。
たくさんのお申込みありがとうございました。

宣伝会議 表現力養成コース

編集・ライター養成講座20周年記念講座

山田ズーニー専門クラス
——–伝わる・揺さぶる!文章を書く

山田ズーニーです。
私は、これまで北は北海道から南は鹿児島まで、
大学・高校生から
ビジネスマン・プロのライターから作家まで
幅広い層に、数えきれないほど表現講座を開いてきました。
その原型が生まれたのが、
宣伝会議の編集・ライター養成講座でした。
現在も講師をつとめており、毎回、
受講者に次のような声をいただき手ごたえを感じています。

 

・自分の想いの根幹を探るという経験を
こんなにじっくりと時間をかけてやったことはなかった、
得難い経験でした。

・終了したとき、この講義の意図が
身体にしみわたるように理解できた。
コミュニケ―ションが苦手だったが、
非常に楽しく有意義に受講できた。

・自己開示が苦手だったが、一気に開くことができた。

・現実の出来事を多角的に見て、表現のヒントを探すことは
全ての実務に活かせると思います。

・自分の可能性を信じようと思えた。
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今回20周年を記念して、ご担当者の、
「この先を行く特別な講座をひらきたい。
表現力をつけたい気持ちはあるものの、
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相手に伝わる表現、社会に説得力を持って書く、
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多彩な仲間とともに引き出しあえるから開花します!
表現を通して他の受講者と心底通じ合える
「感動」の授業です。
心を揺さぶる文章を書きに、ぜひ、来てください。

あなたには書く力がある。

●詳細・お申し込み・お問い合わせは、すべて
こちらのページから
(株)宣伝会議 教育事業部 担当:小林Tel.03-3475-3030まで
*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。

………………………………………………………………………

「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.com までメールでお送りくださいね。
★仕事のご依頼はここに送らないでください。
山田ズーニーtwitter( @zoonieyamada )へお願いします。
または山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をおたずねください。


表現して人とつながる勇気のレッスン!



『理解という名の愛がほしい。』
河出文庫

会社を辞めた私がツラかったのは、まわりが
平日の昼間うろうろしている
無職のおばさんと見ることだった。

それまで仕事をがんばって経験を積んできた
他ならぬ私をわかってほしい。

この発想・考え・想い・感性が、
かけがえなく必要とされたい。

理解という名の愛がほしい。

「理解されたいなら、自分を表現しなきゃだめだ。」

やっとそう気づいた私は、
インターネットの大海原で
人生はじめての表現へ漕ぎ出した。


山田ズーニーワークショップ満員御礼!

いったんウェイトリストを締め切ります。

2017年6月開講したワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」
にたくさんのお申込みをありがとうございました。

大好評で即日満席、
2期、3期、4期と増設するも追いつかず、
1年待ちのウェイトリストのみ受け付けておりましたが、
現在までに12期分のお申込みがあり、
2年待ち以上の方が出てくる見込みが強くなりました。

責任を持って対応するため、
ここでいったんウェイトリストを締め切ります。

言葉の表現力をつけたいと
申し込んでくださった方々の想いを大切に
受け入れを進めてまいります。

 

●この講座に対するすべてのお問い合わせはこちらへ。

お問い合わせ先 
毎日文化センター東京 TEL03-3213-4768

http://www.mainichi-ks.co.jp/m-culture/each.html?id=699

2018年以降、東京開催、詳細未定、1年待ち。

*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。

 

ワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」

――3回で一生ものの書く力・話す力が育つ

書くことによって、人は考える。
自分の内面を言葉で深く正しく理解する。
そのことにより、納得のいく選択ができるようになり、
意志が芽生える。

さらに、

言いたいことを、相手に響くように伝えられるようになる。
インターネット時代に、広く社会に
説得力を持って自分の考えを発信できるようになる。

書く力=想い言葉で表現するチカラを鍛えれば、
自分を知り、自分を表現することができる。

自分の想う人生を、この現実に書いて創っていける。

あなたには表現力がある。

山田ズーニーワークショップ型実践講座、
2017年6月東京で開講しました!


「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.comまでメールでお送りくださいね。

注:講演など仕事の依頼メールは、
上記アドレスに送らないでください。
山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)に
直接ご連絡いただくか、
山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をお問い合わせのうえで、
ご依頼くださいますようおねがいします。


★出演情報などお知らせのあるときは
 山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)にも掲載します。



『半年で職場の星になる!
 働くためのコミュニケーション力』
 ちくま文庫

あなたが職場の星になる!コミュニケーション術の決定版。
一発で信頼される「人の話を聞く技術」、
わかりやすい報告・説明・指示の仕方、
職場の文書を「読む技術」、社会人としてメールを「書く技術」。
「上司を説得」するチカラ、通じる「お詫び」、クレーム対応、
好感をもたれる自己紹介・自己アピールのやり方。
人を動かし現場でリーダーシップを発揮する表現力から、
やる気が湧き・上司もうなる目標の立て方まで。
この1冊で仕事のフィールドで通じ合い、チームで成果を出していける!
自由はここにある!


ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。


ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!



『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。



『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。



『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!



▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)


ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。



「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。



『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。


『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!


『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社


『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社


『おとなの小論文教室。』
河出書房新社


『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房</small



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)



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