おとなの小論文教室。

受験のテクニックとして、小論文の書き方を勉強した?
その後は、ナイスなテキストを書いていますか?
考えること伝えることの愉快を、ここで味わいましょう。
ありがたいことに、小論文というものを
考えたり、たのしんだり、たくさん読んできた
カジュアルで優しい先生がいるんです。
さぁ、山田ズーニー先生、お願いしまーす。

Lesson1027
誤解に、学ぶ。

「人から誤解されやすい」

通信簿にそう書かれた私は、
そのとおりよく誤解された。

小学校の時、

クラスに、
親が医療従事者の女の子がいて、
学級の救急箱に消毒薬を寄付してくれた。

この消毒薬が臭いと、

クラスの子たちが嗅ぎ合っては、
「クサイ!」「クサイ!」と騒いでいた。

で、私にも嗅がされたとき、

「ちっともくそうねえ!
うち、この匂い好き!」

のようなことを言ったら、わーっと周りが爆笑した。

だれもが臭いと言うなかで、
私は、数少ない消毒液のミカタだった。

なのに、

消毒液を寄付してくれた女の子が、
「クサイクサイと言われてツラい」と
先生に告げたのは、私の名前だった。

現場を見ていた子たちが説明してくれて、
誤解はちゃんと解けたけど、

あの頃の私は、
「なんで? 私なんだろう、なんで!」と、
くやしがるしかできない子どもだった。

昨年暮れ、はっ!と気づくことがあった。

NHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」である。

ここから先は、すでに放送済みの、
「安子/岡山編」のラストのネタバレがある。
ネタバレされたくない人は見ないでほしい。

優しいおかあさんの「安子」と、
ちいさなかわいい女の子「るい」は、

母一人子一人で愛しあって生きてきた。

るいの小学校入学式の朝、

式に出ると約束していた
おかあさんは、いない。

るいは、入学式をすっぽかして、
おかあさんを探して、探して、探しまわって、
やっとのことで見つけた時、

おかあさんは男性にハグされていた。

「おかあさんが自分を捨てて
男性のもとに走った」そう悟って、るいは、
強い拒絶を表明し、自分から母を捨てる。

以降、ふたりは別れ分かれに生きる。

しかし、これは「誤解」だった。

実は、母の安子は、道でゆきだおれ、
男性は、安子を看病していたのだ。

かねてから安子に好意があった男性は、
プロポーズをするも、安子は、

「るいが一番大事」「るいは私の命」

と、きっぱり断った。

なんということか!
おかあさんが、るいへの
至上の愛を表明する現場を見て、
るいは、捨てられたと思い込んでしまった。

誤解さえしなければ、るいは、
大好きなおかあさんとずっと一緒に生きられたのに。

最愛で、いちばん大切で、
世界中が敵になってもたった1人
るいを愛し続けてくれるかけがえのない存在を、
るいは、誤解して、自ら失ってしまった。

「誤解するほうも損なうものがある。」

「誤解する側の痛み」

私はこのドラマで初めて気づかされた。

映画作品なども、誤解された側が
どうのりこえるかを多く見てきた。

「自分はだれかを誤解していないか?」

「それで自分を損なっていないか?」

私は、そこを考えてこなかった。
その方向でふりかえってみたら、
私の場合、確かに損なっていた。
人を誤解することで、いいことなどひとつもなかった。

そして、

「真実はだれが握っているか?」

安子の事実認識は、正しい。

安子は確かにプロポーズを断った。
るいを選んだ。
必要なら現場にいた男性も証明してくれる。

一方、るいの事実認識は、まちがっている。

だから、

「真実は誤解された方が握っている。」

私はそう思った。けど、

「それはちがうんじゃないか?」

とヒントをくれた方々がいて、
考え直すとてもよい機会になった。

私は、誤解する方は、
重要な事実の見落としがあるせいで、
視野が欠けていると思う、でも、じゃあ、

「誤解された方は全体が見えているのだろうか?」

母の安子は、

娘のるいが、誤解せざるをえないまでに、
追い詰められていった心の過程が
見えていただろうか?

いつも一緒におはぎを売りに行っていた母に、
ある日を境に置いてきぼりをくらった、
るいの淋しさを。

その淋しさに、つけいるように、大人から、
“安子は、るいを独りで育てることを諦めた”
ようなことを言われた、るいの動揺を。

新しくひらくお店には、るいは、
おかあさんと一緒に住めないのだと
告げられた日の、るいの心の色を。

るいの中に、ちいさく、ゆっくり、
「母に置いていかれる」という不安が
積もっていったのを、

気づかなかったせいで、

ちゃんと説明しなかったことで、

もしかしたら自ら誤解を招くふるまいをして、

安子は安子で、事実の見落とし、
視野が欠けている部分もあったのではないか。

その淋しさも、痛みも、るいが生きてきた、
るいにとっての真実。

ひとつの事実を挟んで、向こうとこっち、
るいと安子の「ふたつの真実」がある。

誤解されたほうも、誤解するほうも、
どちらの視野にも限界があり、

どちらにもそれぞれ切実な真実がある。

そういうケースも日常には多いんじゃないか。
もちろん誤解にも色々あり一概に言えないが、
るいと安子のように大切な関係ならなおさら、

自分と食い違う「もうひとつの真実」を、
ないがしろにしていいということはない。

あの小学校の消毒薬のシーンに
タイムマシンで戻れるならば、

「どうしてそんなふうに思ったの?」

あの子に優しく話を聞いてみたい。

もしかしたら、それは、
自分に欠けていた視野を補う
もうひとつの真実かもしれない。

私が気づかないうちに、
嫌な想いをさせていたかもしれない。

私が人からはそんなふうに見えるのかと、
おどろく発見があったかもしれない。

私が知らず知らずやってしまっている
誤解をまねきやすい言動に、気づけたかもしれない。

誤解に、学ぶ。

小さくてもそれができていたなら、
その後の人生、誤解されないための
小さな鍵を手にできたかもしれない。

誤解されたとき、私は心がけたい。

「相手の真実への尊重。」

そして、耳を傾ける。

私が関わって、私が見えなかった
もうひとつの真実に。

誤解されたとき、
あなたはどんなふうにのりこえたのだろう。

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メールアドレス:kitanippon.kinet@gmail.com 
電話:076-445-3337(平日9:00〜17:00)「とやま就活」まで


【満員御礼!】この講座は満席になりました。
キャンセル待ちも締め切りました。
たくさんのお申込みありがとうございました。

宣伝会議 表現力養成コース

編集・ライター養成講座20周年記念講座

山田ズーニー専門クラス
——–伝わる・揺さぶる!文章を書く

山田ズーニーです。
私は、これまで北は北海道から南は鹿児島まで、
大学・高校生から
ビジネスマン・プロのライターから作家まで
幅広い層に、数えきれないほど表現講座を開いてきました。
その原型が生まれたのが、
宣伝会議の編集・ライター養成講座でした。
現在も講師をつとめており、毎回、
受講者に次のような声をいただき手ごたえを感じています。

 

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●詳細・お申し込み・お問い合わせは、すべて
こちらのページから
(株)宣伝会議 教育事業部 担当:小林Tel.03-3475-3030まで
*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。

………………………………………………………………………

「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.com までメールでお送りくださいね。
★仕事のご依頼はここに送らないでください。
山田ズーニーtwitter( @zoonieyamada )へお願いします。
または山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をおたずねください。


表現して人とつながる勇気のレッスン!



『理解という名の愛がほしい。』
河出文庫

会社を辞めた私がツラかったのは、まわりが
平日の昼間うろうろしている
無職のおばさんと見ることだった。

それまで仕事をがんばって経験を積んできた
他ならぬ私をわかってほしい。

この発想・考え・想い・感性が、
かけがえなく必要とされたい。

理解という名の愛がほしい。

「理解されたいなら、自分を表現しなきゃだめだ。」

やっとそう気づいた私は、
インターネットの大海原で
人生はじめての表現へ漕ぎ出した。


山田ズーニーワークショップ満員御礼!

いったんウェイトリストを締め切ります。

2017年6月開講したワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」
にたくさんのお申込みをありがとうございました。

大好評で即日満席、
2期、3期、4期と増設するも追いつかず、
1年待ちのウェイトリストのみ受け付けておりましたが、
現在までに12期分のお申込みがあり、
2年待ち以上の方が出てくる見込みが強くなりました。

責任を持って対応するため、
ここでいったんウェイトリストを締め切ります。

言葉の表現力をつけたいと
申し込んでくださった方々の想いを大切に
受け入れを進めてまいります。

 

●この講座に対するすべてのお問い合わせはこちらへ。

お問い合わせ先 
毎日文化センター東京 TEL03-3213-4768

http://www.mainichi-ks.co.jp/m-culture/each.html?id=699

2018年以降、東京開催、詳細未定、1年待ち。

*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。

 

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書くことによって、人は考える。
自分の内面を言葉で深く正しく理解する。
そのことにより、納得のいく選択ができるようになり、
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言いたいことを、相手に響くように伝えられるようになる。
インターネット時代に、広く社会に
説得力を持って自分の考えを発信できるようになる。

書く力=想い言葉で表現するチカラを鍛えれば、
自分を知り、自分を表現することができる。

自分の想う人生を、この現実に書いて創っていける。

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山田ズーニーワークショップ型実践講座、
2017年6月東京で開講しました!


「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.comまでメールでお送りくださいね。

注:講演など仕事の依頼メールは、
上記アドレスに送らないでください。
山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)に
直接ご連絡いただくか、
山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をお問い合わせのうえで、
ご依頼くださいますようおねがいします。


★出演情報などお知らせのあるときは
 山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)にも掲載します。



『半年で職場の星になる!
 働くためのコミュニケーション力』
 ちくま文庫

あなたが職場の星になる!コミュニケーション術の決定版。
一発で信頼される「人の話を聞く技術」、
わかりやすい報告・説明・指示の仕方、
職場の文書を「読む技術」、社会人としてメールを「書く技術」。
「上司を説得」するチカラ、通じる「お詫び」、クレーム対応、
好感をもたれる自己紹介・自己アピールのやり方。
人を動かし現場でリーダーシップを発揮する表現力から、
やる気が湧き・上司もうなる目標の立て方まで。
この1冊で仕事のフィールドで通じ合い、チームで成果を出していける!
自由はここにある!


ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日〜)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。


ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!



『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。



『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。



『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!



▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)


ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。



「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。



『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。


『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!


『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社


『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社


『おとなの小論文教室。』
河出書房新社


『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房</small



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)



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