おとなの小論文教室。

受験のテクニックとして、小論文の書き方を勉強した?
その後は、ナイスなテキストを書いていますか?
考えること伝えることの愉快を、ここで味わいましょう。
ありがたいことに、小論文というものを
考えたり、たのしんだり、たくさん読んできた
カジュアルで優しい先生がいるんです。
さぁ、山田ズーニー先生、お願いしまーす。

Lesson1018
大切な人に
“これが最期になるかも”と逢いに行くときに

父が危篤で、2年ぶりに故郷へ帰った。

父は、一命をとりとめた。

「これが最期になるかも」と大切な人に逢いにいくときに、
どうしたらいいのだろう?

正解なんかどこにもないし、
参考書もおそらくない。

だからこれは、私の、あくまで1つの経験だ。

もしも私と同じ立場の人がいたら、参考にするもよし、
これにとらわれないで勇気をもって、
ご自身の想うようにやってほしい。

……………………

父がいよいよ危ないと知らせを受けて、
しばらくボーッと、ポンコツのように、思考停止した。

とにかく荷造りを、と重い腰をあげ、
動き始めたら、ようやく、やっと、
私は、オロオロしはじめることができた。

「こんな時どうしたらいいんだろう?
何か大事なことを忘れてないだろうか?」

いっこうに思考が進まず、
どうにか、やっと、浮かんだのが、
先に御父様を無くされた友達の顔だった。

「最期の時に、なにかやっておくといいことはないか?」

聞こうとしたけれど、それは、やっぱり友達に
悲しい記憶をよみがえらせるので、やめた。

心細かった。

しーん、と無になった時、
浮かんできたのは、「学生たちの表現」だった。

いままで、数えきれないほどの学生たちの、
家族との最期の別れについての文章を読み、
スピーチを聞いた。

その中の多くに共通する「3つの後悔」がある。

1つは、「ありがとう」を伝えられなかった後悔。

2つめに、「好きだった」「大好きだよ」を伝えられなかった後悔。

3つめに、死に向き合えなかった後悔。

3つめは、
例えば御爺様の死期が近いと聞いた学生が、
死というものが恐くて、生まれて初めてで、
大好きな御爺様の悲痛な姿を見るのが辛くて、
逃げてしまって、とうとう逢いにいくことができなかった、
という後悔だ。

「勇気を出して父と向き合わなければならない。」

私は心を強くした。
勇気を出して、愛する人の死の際に大事なことを
伝えてくれた学生たちに報いるためにも。

「伝えるんだ! 父に、
まず一生分のありがとうを。
それから、私の想いを。」

心は決まった。

故郷は遠く、6時間かかる。

新幹線に乗ってる時間を含め、
父に伝えたいことを、洗い出したり、整理する時間は
充分すぎるほどあった。

コロナ禍で、家族の最期に逢えなかった
という話をたくさん聞いていたので、
私は、父には直接逢えないだろうと諦めていた。

しかし、父に10分だけ逢わせてくれるという。

私はワクチン2回接種+2週間以上たっていたけれど、
それでもPCR検査を受けなければならなかった。
3万円かかる、1時間検査結果を待たなければならない。

コロナ禍で、私と同じような立場の人がいたら、

現金で3万円持っていくといいかもしれない。

そして、会えても、会えなくても、
検査を受けるように言われても、待たされても、
医療従事者の指示には全面的に従ってほしい。
「ありがとうございます」の言葉も忘れずに。

東京の部屋を出発してから8時間後、
とうとう父と会えた。

眠っている父の姿は天使のように清らかだ。

目は覚めていないし、
私の言葉が聴こえているのかいないのかもわからない。
ほぼほぼ聴こえてないだろう。

それでも、10分間、父と2人っきりで、

ゆっくり、ゆっくり、
静かに、静かに、

私は、父のようすを見ながら、
伝えたいことを順に話していった。

話の内容は、父と私の秘密にしておきたいので
ここには書かないが、

構成だけはお伝えできる。

まず、「ありがとう」を伝えた。

ありがとうを伝えられなかったことは、
学生たちの一番の心残りだったので、
想い残しがないように、
「何に、どう感謝しているか」
渾身で伝えた。

この世に生んでもらった感謝、
育ててもらった感謝、
外国航路の船員をしていた父が、
家族と遠く離れて定年退職まで勤め上げてくれて、
おかげで私は大学まで出してもらった感謝。
そのおかげで、いま、私は、
社会に出てどんなふうに働き、
どんなふうに幸せかを伝えた。

つぎに「父との楽しかった想い出」。

小さい頃にさかのぼって、
もっとも印象に残っている父とのシーンから、
ひとつ、また、ひとつ、
あの時は、あんな気持ちで、楽しかったね、と語った。

それから、いま、父が生きてくれていることの意味。

生きてくれてる、それだけでどんなに尊いか。
母や、姉、私に、どんなにチカラを与えてくれているか。

最後に、父がここをのりきって元気になったら、
一緒にしたいことを話した。

そうして10分の面会は終わった。

ひとつ、ひとつ、話しているうちに、
父の顔が清らかに、安らかに、澄んでいった。
私の心も澄んでいった。

父と私を包む空気が、澄み渡っていった。

あの澄んだ10分間のことを想い出すと、
いまも心が洗われる。

心の底から伝えたいことを伝えきった時、
たとえそれがどんな状況でも、
人には深い内的な解放がある。

父は一命をとりとめた。

姉も、母も、それぞれに、
父が命をとりとめたのは私の語りかけがよかったからだ
と言った。父は聴こえてないだろうから
現実そんなことはない。でも、

伝えたい人に、伝えたいことを、
伝えたい時に、伝えきる。

これができて私はとても心が澄んだ。

大切な人に“これが最期になるかも”と逢いに行く
私のような人がもしもいたら、

「いちばん伝えたいことは何ですか?」

それを想い残さず伝えきってほしい、
と私は思う。

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お申込みはこちらから
http://www.kinjo-gakuin.net/event/open/202107/
お問い合せ 金城学院大学 入試広報部
TEL:0120-33-1791  Mail:nyushi@kinjo-u.ac.jp


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お問い合せ先:北日本新聞就職情報センター(kinet) 
メールアドレス:kitanippon.kinet@gmail.com 
電話:076-445-3337(平日9:00〜17:00)「とやま就活」まで


【満員御礼!】この講座は満席になりました。
キャンセル待ちも締め切りました。
たくさんのお申込みありがとうございました。

宣伝会議 表現力養成コース

編集・ライター養成講座20周年記念講座

山田ズーニー専門クラス
——–伝わる・揺さぶる!文章を書く

山田ズーニーです。
私は、これまで北は北海道から南は鹿児島まで、
大学・高校生から
ビジネスマン・プロのライターから作家まで
幅広い層に、数えきれないほど表現講座を開いてきました。
その原型が生まれたのが、
宣伝会議の編集・ライター養成講座でした。
現在も講師をつとめており、毎回、
受講者に次のような声をいただき手ごたえを感じています。

 

・自分の想いの根幹を探るという経験を
こんなにじっくりと時間をかけてやったことはなかった、
得難い経験でした。

・終了したとき、この講義の意図が
身体にしみわたるように理解できた。
コミュニケ―ションが苦手だったが、
非常に楽しく有意義に受講できた。

・自己開示が苦手だったが、一気に開くことができた。

・現実の出来事を多角的に見て、表現のヒントを探すことは
全ての実務に活かせると思います。

・自分の可能性を信じようと思えた。
自分はつまらない人間ではない。

今回20周年を記念して、ご担当者の、
「この先を行く特別な講座をひらきたい。
表現力をつけたい気持ちはあるものの、
そもそも自分に伝えたいことはあるのか、
と悩む人も多く、その人たちに、
自分を貫くテーマを発見したり、
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相手に伝わる表現、社会に説得力を持って書く、
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ひとりでは気づけない自分の潜在力も、
多彩な仲間とともに引き出しあえるから開花します!
表現を通して他の受講者と心底通じ合える
「感動」の授業です。
心を揺さぶる文章を書きに、ぜひ、来てください。

あなたには書く力がある。

●詳細・お申し込み・お問い合わせは、すべて
こちらのページから
(株)宣伝会議 教育事業部 担当:小林Tel.03-3475-3030まで
*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。

………………………………………………………………………

「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.com までメールでお送りくださいね。
★仕事のご依頼はここに送らないでください。
山田ズーニーtwitter( @zoonieyamada )へお願いします。
または山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をおたずねください。


表現して人とつながる勇気のレッスン!



『理解という名の愛がほしい。』
河出文庫

会社を辞めた私がツラかったのは、まわりが
平日の昼間うろうろしている
無職のおばさんと見ることだった。

それまで仕事をがんばって経験を積んできた
他ならぬ私をわかってほしい。

この発想・考え・想い・感性が、
かけがえなく必要とされたい。

理解という名の愛がほしい。

「理解されたいなら、自分を表現しなきゃだめだ。」

やっとそう気づいた私は、
インターネットの大海原で
人生はじめての表現へ漕ぎ出した。


山田ズーニーワークショップ満員御礼!

いったんウェイトリストを締め切ります。

2017年6月開講したワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」
にたくさんのお申込みをありがとうございました。

大好評で即日満席、
2期、3期、4期と増設するも追いつかず、
1年待ちのウェイトリストのみ受け付けておりましたが、
現在までに12期分のお申込みがあり、
2年待ち以上の方が出てくる見込みが強くなりました。

責任を持って対応するため、
ここでいったんウェイトリストを締め切ります。

言葉の表現力をつけたいと
申し込んでくださった方々の想いを大切に
受け入れを進めてまいります。

 

●この講座に対するすべてのお問い合わせはこちらへ。

お問い合わせ先 
毎日文化センター東京 TEL03-3213-4768

http://www.mainichi-ks.co.jp/m-culture/each.html?id=699

2018年以降、東京開催、詳細未定、1年待ち。

*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。

 

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「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」

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インターネット時代に、広く社会に
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自分を知り、自分を表現することができる。

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山田ズーニーワークショップ型実践講座、
2017年6月東京で開講しました!


「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
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題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.comまでメールでお送りくださいね。

注:講演など仕事の依頼メールは、
上記アドレスに送らないでください。
山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)に
直接ご連絡いただくか、
山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をお問い合わせのうえで、
ご依頼くださいますようおねがいします。


★出演情報などお知らせのあるときは
 山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)にも掲載します。



『半年で職場の星になる!
 働くためのコミュニケーション力』
 ちくま文庫

あなたが職場の星になる!コミュニケーション術の決定版。
一発で信頼される「人の話を聞く技術」、
わかりやすい報告・説明・指示の仕方、
職場の文書を「読む技術」、社会人としてメールを「書く技術」。
「上司を説得」するチカラ、通じる「お詫び」、クレーム対応、
好感をもたれる自己紹介・自己アピールのやり方。
人を動かし現場でリーダーシップを発揮する表現力から、
やる気が湧き・上司もうなる目標の立て方まで。
この1冊で仕事のフィールドで通じ合い、チームで成果を出していける!
自由はここにある!


ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。


ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!



『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。



『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。



『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!



▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)


ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。



「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。



『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。


『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!


『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社


『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社


『おとなの小論文教室。』
河出書房新社


『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房</small



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)



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