おとなの小論文教室。

受験のテクニックとして、小論文の書き方を勉強した?
その後は、ナイスなテキストを書いていますか?
考えること伝えることの愉快を、ここで味わいましょう。
ありがたいことに、小論文というものを
考えたり、たのしんだり、たくさん読んできた
カジュアルで優しい先生がいるんです。
さぁ、山田ズーニー先生、お願いしまーす。

Lesson1015
見守る眼

「見守る」ことは難しい。

「本人にやらせる、
周りは手や口を出さずじっと見守る」、

というようなことがよく言われるけど、
実際、見守ってみると、
不慣れで、結果もうまくいかなかったようすを、
じっと見てるのはツラい。
最近、そう思ったのは、

「親のワクチン」。

新型コロナワクチンの予約は、
電話も、ネットも、つながらず大変だ。
私は、80代の母の予約を、

「母が自分でやるのがいいか?」

「私が代わってやるのがいいか?」

悩んだ。

高齢者ケアに詳しい姉は、
「母自身に予約させる」選択をしていて、
すでに母に、くわしい予約の取り方の説明も、
わざわざ実家に出向いてやってくれていた。
そんな姉の判断を尊重したかったし、

ワクチンにまつわる選択は、
命と尊厳にかかわる選択。
打つ・打たないに始まって、
いつ・どこで打つかまで、
「本人が決めた」という納得感を、
私は尊重したかった。

予約当日、

母は、故郷で、朝から電話で予約に挑んだ。

私は、東京で、
いつ母に助けを求められても、
すぐ! ネットで代わって予約できるよう、
万全のスタンバイをして待った。
ただ私がスタンバイしていることは、
母には一言も言わなかった。

「母は電話がつながっただろうか?」

心臓疾患があり、高齢の母、
つらいんじゃないか、疲れをださないか、
心配で、仕事が手につかない。

母は、いっこうに電話がつながらず、
朝からかけ続けてつながったのは午後4時過ぎ、
やっとつながった時には、
最後の、最後の、残り物しかなく、

「地域でいちばん最後の日の」

「家からいちばん遠い会場」。

そんなにも遠い、
交通便の悪いとこしかなかったのか、
私は、ガクゼンとした。

そんな折、Twitterには、
「親のワクチン予約、ネットでとれた!」と、
親に代わって予約をとってあげた人々の
苦労と歓びがあふれていた。

後日、母に電話をすると、

母は健気で、最終日なことも、遠い会場も、
良いようにとらえ、ひと言も文句は言わなかった。

ただ、親戚や知り合いに聞いてみたところ、
母と同じ最終日・最遠会場になった人は、
みんな独居老人ばかりだったらしく、
母は、ひとりごとのように、こうつぶやいた。

「ひとり暮らしの老人は、最後の、最後じゃ。」

電話の話のなかで、二度、言った。

“子や孫がそばにいる人はいい条件で、
代わって予約をとってもらえていいな”
なんて母は言わなかったけど、
それを暗示する言葉、

母は寂し気だった。

それから私は、毎日、
たとえば、夕飯の買い物に
歩いて行っているような時、ふっと、

「ひとり暮らしの老人は、最後の、最後じゃ。」

という母の寂し気な言葉が、リアルに
よみがえってきて、苦しんだ。

母に予約をとらせる選択は、
まちがっていたんじゃないか?

私は冷たかったんじゃないか?
「離れててもそばにいる、いつでも助ける」と、
それだけでも母に伝えたらよかったんじゃないか?

あんな遠い不便な会場、
そこだけでもどうにかならないものか、
不憫さと、罪悪感に、さいなまれる。

母の接種が近づいたある日、

母は確認したいことがあって、
ワクチン予約担当窓口に電話したそうだ。

すると、母があまりにも遠い会場になってることに、
気づいた担当者が、
担当者のほうから気を利かしてくれて、なんと!

「自宅から最も近い会場」

に変えてくださったのだ。
バス便もいい。
日にちも少し早めてくださった。

私は、さぁーっ! と、それまで鬱屈していたものが
一気に晴れる感覚がした。
嬉しくて、ほっとして、なんど心で、
この担当の方に、「ありがとう」を言ったことか!

あれから、
夕飯の買い物に行く時、
ふっと浮かぶのは、

もう母のあの寂しい言葉ではない。

もっと温かな“眼差し(まなざし)”だ。

今回、及ばずながら、
見守るということをやってみて、
はっ、と気づいたのは、

「母も、私を育てる時こうだったのかなあ。」

信じて、本人にやらせる、自分は見守る。

それがどれほど骨の折れることか。
いつ助けを求められてもいいように、
準備を万端にして、
でもそのことを本人には言わず、
自分のこと以上に気合いを入れて、

哀しむ顔に、哀しんで。
喜ぶ顔に、喜んで。

「見守る眼差し」

私が物心ついてから大人になるまで、
“自分で決めた” “ひとりでやった”
と思ってきたことの多くは、
親や姉、先生、だれかの眼差しに
守られていたのだ。

夕飯の買い物の道すがら、
その眼差しを思うと、
心が温かくなる。

「自立心すら、授かったもの」

そう思うと感謝がこみあげる。

こうして、

たくさんの人々のおかげで、
母は無事に2回のワクチン接種を終えた。
副反応も少なく、元気だ。

母のワクチン予約を「見守る」選択は、
よかったのか、わるかったのか、
いまだに答えは出ないけど、

母が自分でやったという手ごたえ、
地域の人の想わぬ助けを得た幸せ、
接種後いま母が元気なこと、

これらは、まぎれもなく「母のもの」。

「母の自信」になった、
と私は思う。

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お申込みはこちらから
http://www.kinjo-gakuin.net/event/open/202107/
お問い合せ 金城学院大学 入試広報部
TEL:0120-33-1791  Mail:nyushi@kinjo-u.ac.jp


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お問い合せ先:北日本新聞就職情報センター(kinet) 
メールアドレス:kitanippon.kinet@gmail.com 
電話:076-445-3337(平日9:00〜17:00)「とやま就活」まで


【満員御礼!】この講座は満席になりました。
キャンセル待ちも締め切りました。
たくさんのお申込みありがとうございました。

宣伝会議 表現力養成コース

編集・ライター養成講座20周年記念講座

山田ズーニー専門クラス
——–伝わる・揺さぶる!文章を書く

山田ズーニーです。
私は、これまで北は北海道から南は鹿児島まで、
大学・高校生から
ビジネスマン・プロのライターから作家まで
幅広い層に、数えきれないほど表現講座を開いてきました。
その原型が生まれたのが、
宣伝会議の編集・ライター養成講座でした。
現在も講師をつとめており、毎回、
受講者に次のような声をいただき手ごたえを感じています。

 

・自分の想いの根幹を探るという経験を
こんなにじっくりと時間をかけてやったことはなかった、
得難い経験でした。

・終了したとき、この講義の意図が
身体にしみわたるように理解できた。
コミュニケ―ションが苦手だったが、
非常に楽しく有意義に受講できた。

・自己開示が苦手だったが、一気に開くことができた。

・現実の出来事を多角的に見て、表現のヒントを探すことは
全ての実務に活かせると思います。

・自分の可能性を信じようと思えた。
自分はつまらない人間ではない。

今回20周年を記念して、ご担当者の、
「この先を行く特別な講座をひらきたい。
表現力をつけたい気持ちはあるものの、
そもそも自分に伝えたいことはあるのか、
と悩む人も多く、その人たちに、
自分を貫くテーマを発見したり、
相手の心に響くように伝えるコミュニケーション力を
つけたりできる場を提供したい。」
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相手に伝わる表現、社会に説得力を持って書く、
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ひとりでは気づけない自分の潜在力も、
多彩な仲間とともに引き出しあえるから開花します!
表現を通して他の受講者と心底通じ合える
「感動」の授業です。
心を揺さぶる文章を書きに、ぜひ、来てください。

あなたには書く力がある。

●詳細・お申し込み・お問い合わせは、すべて
こちらのページから
(株)宣伝会議 教育事業部 担当:小林Tel.03-3475-3030まで
*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。

………………………………………………………………………

「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.com までメールでお送りくださいね。
★仕事のご依頼はここに送らないでください。
山田ズーニーtwitter( @zoonieyamada )へお願いします。
または山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をおたずねください。


表現して人とつながる勇気のレッスン!



『理解という名の愛がほしい。』
河出文庫

会社を辞めた私がツラかったのは、まわりが
平日の昼間うろうろしている
無職のおばさんと見ることだった。

それまで仕事をがんばって経験を積んできた
他ならぬ私をわかってほしい。

この発想・考え・想い・感性が、
かけがえなく必要とされたい。

理解という名の愛がほしい。

「理解されたいなら、自分を表現しなきゃだめだ。」

やっとそう気づいた私は、
インターネットの大海原で
人生はじめての表現へ漕ぎ出した。


山田ズーニーワークショップ満員御礼!

いったんウェイトリストを締め切ります。

2017年6月開講したワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」
にたくさんのお申込みをありがとうございました。

大好評で即日満席、
2期、3期、4期と増設するも追いつかず、
1年待ちのウェイトリストのみ受け付けておりましたが、
現在までに12期分のお申込みがあり、
2年待ち以上の方が出てくる見込みが強くなりました。

責任を持って対応するため、
ここでいったんウェイトリストを締め切ります。

言葉の表現力をつけたいと
申し込んでくださった方々の想いを大切に
受け入れを進めてまいります。

 

●この講座に対するすべてのお問い合わせはこちらへ。

お問い合わせ先 
毎日文化センター東京 TEL03-3213-4768

http://www.mainichi-ks.co.jp/m-culture/each.html?id=699

2018年以降、東京開催、詳細未定、1年待ち。

*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。

 

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そのことにより、納得のいく選択ができるようになり、
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言いたいことを、相手に響くように伝えられるようになる。
インターネット時代に、広く社会に
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自分を知り、自分を表現することができる。

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山田ズーニーワークショップ型実践講座、
2017年6月東京で開講しました!


「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.comまでメールでお送りくださいね。

注:講演など仕事の依頼メールは、
上記アドレスに送らないでください。
山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)に
直接ご連絡いただくか、
山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をお問い合わせのうえで、
ご依頼くださいますようおねがいします。


★出演情報などお知らせのあるときは
 山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)にも掲載します。



『半年で職場の星になる!
 働くためのコミュニケーション力』
 ちくま文庫

あなたが職場の星になる!コミュニケーション術の決定版。
一発で信頼される「人の話を聞く技術」、
わかりやすい報告・説明・指示の仕方、
職場の文書を「読む技術」、社会人としてメールを「書く技術」。
「上司を説得」するチカラ、通じる「お詫び」、クレーム対応、
好感をもたれる自己紹介・自己アピールのやり方。
人を動かし現場でリーダーシップを発揮する表現力から、
やる気が湧き・上司もうなる目標の立て方まで。
この1冊で仕事のフィールドで通じ合い、チームで成果を出していける!
自由はここにある!


ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。


ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!



『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。



『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。



『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!



▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)


ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。



「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。



『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。


『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!


『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社


『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社


『おとなの小論文教室。』
河出書房新社


『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房</small



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)



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