インディーズ映画の冒険野郎。
石井聰亙監督の話をふむふむ聴く。
有名であることと、メジャーでないということは、
石井聰亙監督については両立しているみたいです。
インディーズ映画のトップランナー、石井聰亙さん。
浅野忠信さんや永瀬正敏さん、
作家の町田康さんなどといった、
ひとくせもふたくせもある、輝く才能が、
こぞって石井監督の映画に集ってきます。

メジャーであるとかインディーズであるとか、
そんな垣根は、石井さんには見えないのかもしれません。
「俺の先祖は旅芸人!」という石井聰亙監督の
いま考えていることは、
次の時代の「映画」や「表現」を考えている人々にとって、
なんだか大事なヒントになりそうだぞ。

って、そんなことを、おおげさにせずに、
午後のコーヒーショップで語ってもらいました。

聴き手は、「どうぶつビスケット」こと、
ゆーないとです、すいません。
石井聰亙さんプロフィール 今までの作品リストはコチラ

第1回 映画監督さんってどんなんだろうか?




ほぼ日 じゃあ、『鏡心』によって
吹っ切れた監督は、改めて
「普遍」的な物語への冒険に、
向かうわけですね。
石井

普遍性をもつための技術と、
自分の今までつきあってきたこと
とのバランスで、
何かできるだろうと思います。
大変だろうけど楽しみです。

さっきも言ったけど、
今まで、自分では
何も難しいことはやってなかったのに、
何で人は見てくれないんだろうなー
って思ってましたね。
もっと見てくれればいいのになって。
別に特殊なことをやってる意識って
全くなかったので。
わかりやすいじゃん俺の映画、
って思ってたんだけど、
どうやらそうでもないらしいんですよね(笑)。
これだけ作ってると、
さすがにわかりました。いくら鈍感な俺でも。

ほぼ日 そういうピンポイントを、
狙って作ってらっしゃるんだと
思ってましたもん。
石井 狙ってないんですよー。
いつもいつも
シナリオには力入れてるし、
万人に見せたいと思って
作ってるんですよ。
『鏡心』は違ったけどね。

で、それは変わってないんだけど、
やっぱこれだけ作ってると、
「こういう技術が足りないんだな」
とかって
自分でハッキリわかってきました。
ほぼ日 監督の作品って、
やっぱりちょっと難しいというか、
受け手側にパワーがないとダメだし、
監督の一瞬一瞬のイメージとか、
メッセージを受けて、
色々と考えを
巡らせなきゃならないんですよねー。
だから、結構大変かも(笑)。
石井 そんなに
メッセージを送ってるつもりはー
‥‥ありますね。
自分では意識してないんだけど。
でも、情報量が多いのは
たしかかもしんない。
今までは、軽く出来なかったんですよ。
ほぼ日 だから、観る側は何も考えないで、
おかし食べながら
ぼーっとは観れないんですよね、
やっぱり。
石井 また今後は、
違ってくると思いますよ。
自分のオリジナリティはさらに伸ばして、
世界中の人との普遍的な接点は
どうやったら持てるか
っていう映画的技術を、
より強く考えるようになったし。

自分がこういう映画を作りたい
って思っても、すぐ出来るわけではないんで、
タイミングとか、
運命の糸とかが
折り合って
出来てくるもの
だから、
それに従うんだけども。

今まではデビューしてから、
「そんなの関係ねえよ!」って
無理矢理突っ走ってた感じは
確かにあった。
でも、
「やっぱ違うんじゃないかな」
って迷いも
どこかに出ていたかもしれないし、
「自分の観たい映画」っていうのは
そのままで強い普遍性を持つ
って信じていたんだけど、
それもなんか違うかなと。

今は本能的な強い意思は
そのままフル回転させつつ、
普遍的な流れとしっかりリンクする技術、
っていうものが見えてきた。
それが実際に
どれくらい出来るのかっていうのは、
なんとも言えないんだけど、
次からそれに向かうのはたしかだ。
って思います。
不思議なことに、そういう普遍とかと
まったく遠いところにあるような
今回の作品(『鏡心』)が、
そういうことを思わせてくれる
きっかけになった。

それほど遠いところに
来てしまったのかもしれないけど‥‥。

『鏡心』をどういう人が見るか、
って、楽しみです。
特に楽しみなのは、
今まで「僕の映画を見てない人」と
出会うことが楽しみだな。
知ってる人はおそらく
戸惑うのがわかってるので。

ほぼ日 全然違いますからね〜、毛色が。
石井

以前作った作品で、
『水の中の八月』っていうのは、
高飛び込みやってる
高校1年の女の子の話なんですけど、
青春純愛初恋ロマンみたいな装いに、
コズミックな内容を入れたり
してるんだけど、
そのときに、
「石井は変わった!」
って言われたんですよ。
だけど、
『サンダーロード』とか
『爆裂都市』とかの
爆発系が好きな人の中にも
「いや、べつに変わってないよ」
って言う人もいたんですよね。

でも今回は、たぶん、
そういうことじゃないような
気がするな‥‥。
明らかになにかが断ち切れてて、
なにかが始まろうとしている。
そんな気がしますね。
だから、
自分でもおどろいたんだと思う。
だから、次は
まったく違う映画を撮るだろし。
自分でもわからないね。
新しい山があれば、
登ります!

みたいな感じ。

まあとにかく冒険好きです。
今は、命を落とすなと勘が働いたら
絶対やらないので、
行けると踏んでやるんですけども、
読みが甘いかもしれないな(笑)。
自分では大丈夫と思ってても、
よその人から見たら無謀だ、って。
自分では絶対的な
勝算あって行くんですけどね。
映画創りは相当大変だからきついし、
お金も時間もかかるし、
人を巻き込むから、
失敗するってわかってたら、
行かないですけどね。
成果がないとか、
命を落とすとか、
玉砕するとかね。

昔は無茶苦茶でしたよね。
何にも考えずに突撃していました。
でも、他人から見ると、
やっぱり現在でも甘いかもしれない。
ちょっぴり(笑)。
人に迷惑はかけたくないから、
かけないように、
自分なりに心がけていますけどね。
関わってくれる人には、
もうけてもらいたいし、
幸せになって欲しいんですけどね。
果たせてないかなぁ‥‥(笑)。
でも、有意義な仕事だと
思ってくれていると信じてます。

ほら、本当の冒険には
なかなか行くことが出来ないけど、
映画という
表現の旅だったら
行くことができる
じゃないですか。
だから、命を落としたりすることは
ない。
はずです(笑)!

(つづく)

冒険家の石井聰亙は、
「勝算あります」と、強く言いながら
新しい表現の冒険に出るのだった。
無事でご帰還してください!!!

連載、まだ続きます。
お楽しみに〜!


『鏡心』エキシビションツアーが始まりました!
(3月30日ラフォーレでのレポートはコチラです!)


最新のデジタル機材を使って作られた
監督の新作『鏡心』がツアーで日本中を上映して回っています!

監督が完成を見て、自分でおどろいたと言う、
今までの作品とは違った雰囲気の最新作『鏡心』。
バリを舞台とし、
バリの波の音とガムランの音が体に響きます。


主催:鏡心エキシビションツアー実行委員会
http://kyoshin-xx.com/


3月30日(水)〜4月4日(月) ラフォーレミュージアム原宿
4月16日(土) 金沢21世紀美術館 シアター21
4月30日(土) 札幌 シアターキノ
5月28日(土)、29日(日) 京都造形芸術大学 映像ホール
6月4日(土)、5日(日) 大阪 應典院
6月11日(土)、12日(日) 神戸アートビレッジセンター
6月25日(土) 福岡アジア美術館

プレゼントのお知らせです!

応募は締め切らせていただきました。
 たくさんのご応募ありがとうございました!

  (3月29日11時現在)


3月30日(水)〜4月4日(月)6日間行われる
ラフォーレ原宿での『鏡心』上映イベントに、
「ほぼ日」読者をご招待していただけることに
なりましたヨ!
当選者の方には直接メールでお知らせし、
チケットの引き渡しは、当日会場にてとなります。

*応募は締め切らせていただきました。

このイベントは、
『鏡心』の上映に加えて、
監督によるレクチャーや関連特別短編の上映、
主演の市川実和子さんや、町田康さんをはじめ、
豪華ゲストとの対談などが行われます!

イベントの詳細は、コチラへ!!


お問い合わせは、
『鏡心』エキシビジョンツアー実行委員会
チケット販売チーム 担当:カミクリ
tel 03-5771-5080
E-mail ticket@kyoshin-xx.com

石井聰亙さんへの激励や感想などは、
表題に「そうごさん」と書いて、

postman@1101.comに送ろう。

2005-05-06-FRI

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