インディーズ映画の冒険野郎。
石井聰亙監督の話をふむふむ聴く。
石井聰亙さんプロフィール 今までの作品リストはコチラ


 

ほぼ日 また映画のお話に戻りますが、
今回の新作『鏡心』では、
石井監督は、
製作、監督、撮影、脚本、と、
全部をやられたんですよね?
それってやっぱり相当大変なことでしたか?
石井 そりゃあ大変ですよー。
「出来た」って言っても、
あくまで重心は監督においての、
「製作」であったり「撮影」ですけどね。
やっぱりスタッフは
いたほうがいいんですよ。
優秀なスタッフがいたほうがいい。
「人は必要だ。無理だわ、これ」
って思いました。

だから今回の作品を作ったことで、
俺にはこういう映画の作り方もあるんだ
っていう、選択肢のひとつとして
確認できましたね。
俺って、どうしても
作らざるをえない男
だから、
作れなくなっちゃうと、
しんどくなっちゃうんですよ。

実は20代の後半、『逆噴射家族』の後、
『半分人間』っていう作品から
『エンジェル・ダスト』という作品までの間、
作れない時期があったんです。

世間には「10年沈黙した」
と言われてるんです。
沈黙はしてなかったんですけどね‥‥。

ただ作れなかったんですよ。
あれは、そうとうきつかったなー。
作りたい映画が作れないっていうか。
毎回映画作ってても、
何らかの理由でダメになる。
5、6本あったかなぁ、その時期。
クランクインの3日前にダメになるとか、
準備してたけどダメになるとか。

そういうのがいっぱいあって。
企画段階でダメになるやつが
いっぱいあって。
そういうのってめげるじゃないですか。
作りたくてやってるから。
やるっていう気持ちはあって、
とりかかって、相当入り込んでるのに
自分以外の理由で出来なくなるっていうのは、
精神的におかしくなっちゃうんですよね。

だから、ようやく今、
自分の調子が戻ってきたって感じです。
今は、そういう
「作れない!」っていう状態は
もう来ないっていう安心感があるから。
ゆうゆうと出来て、
別のアプローチにも気持ちがいきますよね。
万が一ダメでも、
安心してつっこめるっていうか。
ほぼ日 とんとん拍子ってわけじゃ
なかったんですねー。
石井 苦しかったですよー。一歩一歩。
そのつど、すごいチャレンジ。

結果的にはそれを毎回見えない状況で、
「ものすごく楽しんでる」んでしょうけど。
見えちゃったら、
つまんないんでしょうねー。
そういうところに自分を追い込む。
「どうやってそれを攻略するか
っていうところが、また楽しみなんだよね。
成功したかどうかは、
自分ではあんまり興味ないっていうか。
ほぼ日 毎回、自分に点数とか
つけるようなことは、ありますか?
石井

そういうのはわからないですね。
毎回、限界までやってるから。
満足はしてないですけど、
これ以上できない。

点数とかは、
他の人がつけるんじゃないですか。
お客さんがどう思うかは、
もうしょうがないんで。
全然関係ないっていうか。
やりきった。

‥‥うん、ほとんどそうだな。
やりすぎた!!!
っていうかね(笑)。
またやったかー。って。

ほぼ日

今回の作品『鏡心』、
名前を出さなければ、
石井監督の作品だってわからないと思います。
新人監督みたいな感じが出てる気がします。
上映形態にしてもそうですし。

石井 自分でもわからないですよ。
ほぼ日 フレッシュさみたいなものが、
なんだかあるんですよね。
でも、実はこんなにたくさん
作ってきた後なんだっていうのが、
とても興味深いです。
石井 振り返ったらわかるんですよね。
いつも。
その時にはわからないですよね。
その時のことが、わかればいんですけど。
実際、企画するのにも
数年かかりますからね。
今回のは2年くらいかな。1年半くらい。
早い方ですね。わりと、
産地直送的な。
ほぼ日 『エレクトリックドラゴン』も上映まで
撮ってから時間だいぶたってたんですよね?
石井 そう、2年くらいですよ。
『デッドエンドラン』も。
だいたいそうですよね、日本映画って。
出来上がって1年待つ。
っていうのは、
上映する館が少ないから、
そういうことが、
もう当たり前になってるんですよ。
ほぼ日 上映館の空きがないってことですか?
石井 そう、空きがない。
日本映画を上映する所が少ないから。
だから、やっぱりホットじゃないんですよ。
大手はまだいいんですけど、
独立で作ってる人たちは、
大ヒットしたりすると、
上映期間延びたりもするしね。
そういう映画はコツコツやるのが多いから、
出来た時点では
あたり前でも企画段階からは
3、4年かかってる。

だから、封切られるときには、
気持ち的には
2年とか3年くらい前の自分に
戻らないといけないんですよね。
ほぼ日 それもつらいですねー。
もう気持ち、変わっちゃってますもんね。
石井 だから本当は、
「次」とか、「その次」
のことをしてるんですよね、監督って。
なかなか難しいことなんですよ。
ほぼ日 もったいないなあ〜。
作った時の気持ちのままで出せないって。
映画館じゃない所でも、「映画やってます」
ってなってどんどん上映出来る場所が、
増えていけばいいですよね。
石井 そうですね。
増えてくんじゃないですかね。これから。

たぶん今回(『鏡心』の上映形態)
みたいなことを、
5年とか10年とかやり続けていたら、
それなりの成果は
絶対に生むと思うんですけど、
それが自分の性格とか役割じゃない
と思ってるから、
じゃああとは、
これをいいと思った人がやってくれ。
自分なりにアレンジしてくれ。
っていう感じ。
俺は、次の冒険にいくから。
って。
(つづく)

「作れなかった時期」は本当に辛かったという監督は、
作れることの喜びを体全部で感じて、
表現につなげています。

冒険家・石井聰亙のものすごくストレートな話、
次回もお楽しみに!

石井聰亙さんへの激励や感想などは、
表題に「そうごさん」と書いて、

postman@1101.comに送ろう。

2005-04-08-FRI


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