ツイッターやブログ、インスタグラムなどの
SNSツールを使って、個人が自由に発信することは、
ずいぶん前からあたりまえになっていました。
まんがもそのひとつです。
毎日からにじみ出るようなできごとや
「描きたいこと」を描いているだけなのに、
いつしか読者を獲得し、
ついには「食える道」を切り開くこともあるようです。
「私小説」のようなおもしろさをもつ
「私まんが」をテーマに、
まんがをとりまく世界と、これからのことについて、
ホットなまんが家さん4人といっしょに
糸井重里が話しました。

  • 第1回 なぜこの座談会を開いたか? 2015-09-29
  • 第2回 とよ田さんの大発明。 2015-09-30
  • 第3回 小山さんの「お前ら可愛いすぎるんじゃ」 2015-10-01
  • 第4回 山本さんが登った階段。 2015-10-02
  • 第5回 simicoさんの悩み。 2015-10-05
  • 第6回 冒険まんがを描くべきか? 2015-10-06
  • 第7回 食えるの? それとも、食えないの? 2015-10-07
  • 第8回 編集者と、高め合いたい。 2015-10-08
  • 第9回 まんがのルールを守ってない。 2015-10-09
  • 最終回 これからあとにつづく人。 2015-10-13

第1話

なぜこの座談会を開いたか?

──
本日は、お集まりいだきまして
ありがとうございます。
初対面の方もいらっしゃると思いますので
かんたんに自己紹介をお願いいたします。
とよ田
「最近の赤さん」というまんがを描いています、
とよ田みのるといいます。
どうぞよろしくお願いいたします。

illust_1

simico
「しみことトモヱ」
ウェブまんがで描いてるsimicoと申します。
よろしくお願いします。

illust_2

一同
よろしくお願いします。
山本
「岡崎に捧ぐ」という、
幼なじみとの話をまんがで描いてます、
山本さほです。よろしくお願いします。

illust_3

小山
「手足をのばしてパタパタする」
を描いてます、小山といいます。
よろしくお願いします。

illust_4

糸井
ええっと‥‥この座談会は、
ぼくが言いだしっぺなんで、
いきさつをお話しいたします。
ぼくは糸井重里と申します。よろしくお願いします。
一同
(笑)
糸井
ぼくはみなさんの描くもののファンで、
Twitterやらブログやら、
ほんとうによく見ています。
糸井
てっきり、まわりのみんなもぼくと同じくらい
見てるんだろうなと思ったら、
あんがいばらつきがあって、
よく知っている人もいれば、知らない人もいました。
ぼくはみんなに
「あのあたりのまんがをどう説明すればいいのかな?」
と思って、それで浮かんできた言葉が
「私(し)まんが」です。
小山
しまんが。
糸井
私小説(ししょうせつ)という言葉がありますよね?
「わたくし」の身辺や考えを
書いていくのが私小説だとすると、まんがにも
そういうものがあるんじゃないでしょうか。
とよ田さんは、
「タケヲちゃん物怪録」など、
ストーリーのある長編まんがも
描いてらっしゃるけど。
とよ田
はい、出してます。
糸井
どちらかといえば、まんがの中心になっているのは
そういう「架空のストーリーのある長編まんが」です。
でもこのところ、
ぼくが見ておもしろがってるのはみんな、
身のまわりのことを描いているまんがです。
それを編集者やプロデューサーのような人を通さずに
個人が出しちゃって、
なおかつお客さんがついています。
しかも、さがしてつくったネタではなく、
日常からじんわりにじみ出たまんがなんです。
この現象は「ネット以後」なんじゃないでしょうか。
そして、可能性としては、日本中の全員が
それをできるんじゃないのかな?
山本
そうですね。
糸井
絵の上手下手はまちまちなんですが、
まんがは「おもしろければいい」という時代に
なっちゃったかもしれないし。
自分のSNSメディアを中心に、
すでに読者をお持ちのみなさんが
どういうことを考えて、
どんなふうになろうとしてるのかな、と思いました。
「漠然としてていいので、
 そういう人だけ集めて話をしたらどうだろうね」
と言ったことが、この座談会を開くきっかけです。
ですから、この座談会の、
話の落としどころはございません。
一同
(笑)
糸井
ひとつよろしくお願いいたします。
simico
よろしくお願いいたします。
とよ田
お願いします。
糸井
ちょうど山本さんの
「岡崎に捧ぐ」が出版されたばかりですね。
山本
はい。
糸井
山本さんは、あれよあれよと言うまに
一般まんが家になっちゃった。
「一般まんが家」という言葉は、
とても変なんですけど(笑)、
で、まずぼくは、
とよ田さんにおうかがいしたいのです。
メジャーデビューした
「一般まんが家」として活躍しているかたわら、
なぜ、ご自分の家の話を
描こうと思われたんですか?
吉田戦車さんも、このところ、
ご自身の子どもさんのことを
描いていらっしゃいますが、
あのジャンルのものは、
描きはじめたくなっちゃうものなのでしょうか。
とよ田
まんがを描いてる人って、ついつい、
身のまわりに起きたおもしろいことを
まんがにしたくなるんじゃないかな、と思います。
あまりにもかわいくてかわいくて
しょうがなくて(笑)。

illust_5

糸井
はい(笑)。
とよ田
でも、「最近の赤さん」は、いわば、
自分の子どもがかわいいと自分が思っているという
勝手な自慢みたいなことだし、
読む人がうっとうしいかなと思って、
最初の1年間は我慢していたんです。
糸井
我慢してたんですか(笑)。

つづく!

2015-09-29-TUE