プロローグ ラーメン屋が「蕎麦」を作ると、こうなった。


糸井重里をはじめ、
「ほぼ日」の乗組員はみな、食べることが好きです。
人並みか、もしくは人並み以上に
いろいろな食べもののことを愛しています。
もちろん、ラーメンのことも。
そんなわれわれがよく行くラーメン屋さんのひとつに
「一風堂」というお店があります。

ことしの2月のことでした。
糸井重里と乗組員の数名が、
「ちょっとラーメンが食べたいかも」などと言いながら、
ご近所の「一風堂」南青山店へ
ふらりと足を向けたときのことです。

階段をおりて入った店内に、こんな看板が‥‥。


やや戸惑ってから、
われわれはその蕎麦を食べました。

その翌日の「今日のダーリン」に、
糸井重里は以下のような文章を記しています。

今日のダーリン     2012.02.15
 
 もともと、このラーメン屋は意欲的だったのです。
 店の本流は博多風の九州ラーメンであるのに、
 東京風の澄んだしょうゆラーメンや、
 最近の流行のどろっとしたつけ汁のつけめんなど、
 みごとに「メニュー」にしてみせてました。
 そして、こんどは「そば」かい!
 
 帰り道、ああいう意欲的な試みって、
 開発に苦心はするだろうけれど、
 思えば、リスクなんかないんだ、と。
 時間やお金のかかる「金型」がいるわけじゃないし、
 人気がないようだったら、工夫して変化させたり、
 メニューからなくしてしまったっていい。
 失敗のリスクが小さくて開発のコストが少ないのなら、
 やる気さえあるなら、ああいう挑戦ってオッケーだ。
 「見習わなきゃなぁ‥‥」と、信号渡りながら、
 ぼくはつぶやいたのですが、同行していた乗組員は、
 どう思っていたことでありましょうか。

「見習わなきゃなぁ‥‥」という、
信号を渡りながらのつぶやき、
たしかに同行した乗組員は聞きました。
そしてさらに、
そのあと糸井はこんなこともつぶやいていました。
「一風堂の社長に会って話がしたい」

こうして、
「博多 一風堂」店主・河原成美さんと、
糸井重里の対談が実現することになったのです。

明日からその連載がはじまりますが、
その前に、
対談のきっかけとなった
「その蕎麦」を紹介させてください。

ラーメン屋さんが作る「蕎麦」って‥‥?

ミニレポートを、どうぞ。

 


こちらが「ほぼ日」の近所にある、
「一風堂」南青山店の入り口です。

上の看板をよく見ると‥‥。
「IPPUDO」の下に「蕎麦COMBO」という店名がもうひとつ。


階段をおりて「一風堂」に入ると、こんな矢印が。


ショップインショップのスタイルなので、
「一風堂」の中に、さらに入り口があるわけです。

矢印のほうへ進みましょう。


これが「蕎麦COMBO」の入り口。


最初にこれを見たときは、
驚きましたし、不思議な感覚でした。
いつも来ているラーメン屋さんの中に、
ある日突然ちがうお店の入り口ができていて、
しかもそこには「蕎麦」って書いてある‥‥。
「え? え? え?」
と混乱しながら中に入って、またちょっとびっくり。


「蕎麦」なのに、こういう雰囲気ですから。

これがメニュー。


「B級もつ煮ソバ」、「パクチーソバ」、
「イモ天ソバ」、「スパイシー坦坦ソバ」などなど。
ふつうの蕎麦屋さんの品書きとは、
ずいぶんちがう名前が並んでいます。

この日取材にお邪魔した3名の乗組員は、
「パクチ−」「スパイシー坦坦」「イモ天」
という3種類の蕎麦をオーダーしました。

待ってるあいだに、メニューの裏にある
「蕎麦COMBO」についての説明を読みます。


※クリックで大きな画像をご覧いただけます

「テーマは、“もしラーメン屋が勢い余って
 蕎麦屋を出したら”である。」
からはじまる、
このお店の「前書き」のような文章です。

壁を見れば、ワインのメニュー‥‥。


カウンターには‥‥チーズ?


いったいどこまで
「蕎麦屋」っぽくなくなるんでしょう‥‥?

ほら、この写真、これ蕎麦屋さんのカウンターですよ?


何度か来ているお店ですが、
「やっぱりここ、ふしぎな場所だよねぇ」
などと話しているうちに、
お蕎麦が完成。

ご覧ください。

まずは「パクチーソバ」。
パクチーと水菜で、蕎麦が見えないほどです。


つづいて、「スパイシー坦坦ソバ」。
蕎麦の上に、そぼろがたっぷりのっています。
これは、坦坦スープで。


そして、「イモ天ソバ」。
基本的に、つけ汁は「一風堂」のスープ。
冷たい蕎麦を、あたたかいつけ汁で食べます。


奥のイモ天の左に、
白いミルクピッチャーがありますよね。
これにはハチミツが入っています。
2枚のイモ天のうち、
1枚は蕎麦といっしょに食べ、
もう1枚は最後にハチミツをかけて
デザートにするのがおすすめだそうです。

以上が、
われわれが出会った「その蕎麦」たちです。

ラーメン屋さんが「蕎麦」を作ると、
こんなふうになるんですね‥‥。

糸井が書いていたように、
「意欲」と「挑戦」で開発されたものだと、
あらためて思いました。
勇気あるユニークさだと思いました。
そしてそれは、ちゃんとおいしいんです。

「蕎麦COMBO」さん、
取材へのご協力をありがとうございました!

この「蕎麦」がきっかけで生まれたコンテンツ、
「一風堂」河原成美さんと
糸井重里の対談が、明日からはじまります。

ユニークな蕎麦を生み出した、こちらが河原さん。


終始たのしい対談でした。
盛り上がった場面では、河原さん、立ち上がって!


「ラーメンのこれから」を語る場面では、
情熱をこめて、ちからづよく。


たくさんのお話をうかがいました。
どうぞ、お楽しみに!


(つづきます)

2012-04-30-MON
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もくじ  
プロローグ ラーメン屋が「蕎麦」を作ると、こうなった。 2012-04-30-MON
第1回 ラーメンという「情報」。 2012-05-01-TUE
第2回 時間の長さとスープのおいしさ。 2012-05-02-WED
第3回 環境を整える。 2012-05-03-THU
第4回 サッカーと野球。 2012-05-04-FRI
第5回 俺んち作戦。 2012-05-07-MON
第6回 焦点は、粉。 2012-05-08-TUE
第7回 名前が決まれば内容も決まる。 2012-05-09-WED
第8回 ライブ感のある店。 2012-05-10-THU
第9回 年をとっても、わからない。 2012-05-11-FRI
 
いままでの「社長に学べ!」シリーズ
 
 
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