エピックソニーを立ち上げ、
プレイステーションを大ヒットさせた
ソニーグループの丸山茂雄さんが、
会社を辞めたと思っていたら‥‥
まったくのゼロから「音楽配信の会社」をはじめた。
「まーだ、うまく説明できないんだけどさ、
 アハハハハハハ!」
世界的に有名な大企業の社長から、
数人だけの新しい会社の社長へ。
でも、いっそう「音楽の仕事」になってるらしい。

「社長に学べ!」シリーズの5番目のゲストは、
「株式会社247MUSIC」代表、丸山茂雄さんです。
丸山社長に学ぼうと思っていたら、
逆に丸山さんのほうが、好奇心で目をキラキラさせて
「ほぼ日から、なにか学んでやるぞ」と意気込んでる。
こうやって、数々のミュージシャンやゲーム制作者と
コラボレーションしてきたんだろうなぁ。


丸山茂雄さんの発言
(赤い吹き出し)
糸井重里の発言
(グレーの吹き出し)



最終回 1パーセント閃きを
5年くらい前に、
エジソンのことばについて
書かれた記事を読んだことがあるんですよ。
ぼくはその切り抜きを
いまだに持ってるんだけど。
あの、エジソンの有名な言葉で
「発明とは、99パーセントの努力と
 1パーセントの閃きである」
っていうのがあるじゃないですか。
はい。
日本人はそれを誤解している、
っていうんです。
どういうことかというと、
日本人はあのことばを、
「努力が大事なんだ」というところに
力点を置いて理解している。
ところがそうじゃなくて、
「新しいものというのは、
 1パーセントの閃きがなかったら
 99パーセントの努力は
 なんの意味もない」と。
うん。そうですよね。
最初の閃きが大事で、閃いたら、
その後を形にするのは
99パーセントの努力が要るんだけど、
努力したからって、
1パーセントの閃きがなかったら
なんの意味もない。
ずーっと素振りして試合しない人、
みたいになっちゃいますよね。
「後は99パーセント努力すれば、
 最初の1パーセントがいいんだから
 うまく行くはずだ」
と思い込まなきゃやってられない、
というのもあるんだろうけど。
うん。まったく、そうですよね。
逆に、その1パーセントがないのに
努力できる、というのは怖いですね。
それが、農耕民族だったという
我々のDNAじゃないですか。
基本的に「努力」「一生懸命」でしょ。
一箇所を掘り続けるという。
ぼくは農業の人たちとの
つき合いがあるからわかるんだけど、
やっぱり、いい農家は
閃きを持っていますよね。
うん、じつはそうですね。
何かの奴隷みたいになっちゃうと、
閃きが要らなくなっちゃう。
ルーティンワークを何時間こなしたから、
いくらもらえる、みたいなことで。
農家の人たちって、
石の拾い方ひとつにしたって、
「そんなことしてたら、
 お前、1日かかっちゃうよぉ、
 こうするんだよ!」
というのを持っているじゃないですか。
それは親の代から受け継いだこともあるし、
自分で考えたこともある。
そうじゃないと
農家はやってられないと思うんですよね。
ですよね。
その意味ではすごいですよ。
一見、ルーティンに見える
いままでの古い人たちのやってきたことが、
閃きの集合だったりしますから。
うん、うん。
歌もそうじゃないですか。
ぼくらが当時夢中になっていた
歌手だとかバンドの人たちで
いまも生き残っているのは
努力だけじゃなくて、
閃きやイメージを持っている人だけですよね。
「お前に何があるんだ」
と言われたときに、
努力だけじゃない何かを持っているコは、
死なないんですよね。
売れるために全部やりましたというコは、
生き残れないんですよね。
うん。
丸山さんがいまやれているのは、
自分ひとりでひらめいた
イメージがあるからなんですよ、きっと。
それはもう、「詩」みたいなものですよ。
アハハハハ、そうなんだ!
だから、やっぱり丸山さんは
市場よりも作り手というか
生産者の地図を見てますよね。
努力のほうよりも
閃きのほうに興味が向かうんですよね。
どちらかというとそうだよね。
そもそも音楽の世界では
「ヒットしたから買う」という
ユーザーがほとんどだし、
本当に音楽が好きで
新しいものを見つけることが好きだという人は
もともとそんなに数多くないと思うんですよ。
でも、数が多くないとしても、
そういう「新しいものを求める人たち」に
新しい音楽が伝わって、
その人たちが「いい」と言いはじめると、
きちんとまわりに広がっていくんですよ。
だから、どうしても、真ん中にいる
「数少ない人」を固める必要があるんです。
やむを得ずサラリーマンになっている
元ミュージシャンというのは
たくさんいるじゃないですか。
自分じゃできなかったけど、
「あいつは、なかなかいいタイコ叩くよな」とか
「あいつはなかなかいいベースだ」とか、
そういうふうに音楽を聴いているファンというのが、
たくさんいることをぼくは知っているんです。
だから、そういう連中が、
「あそこの音楽はけっこうおもしろいよね」
と言ってくれるのを待っているというのがいまだし、
そうやって、ぼくらが発信する音楽が
まわりに広がっていくのを願ってますね。
うん。応援してます。
きっと、いろいろ難しいことはあるんでしょうけど、
丸山さんがそういうことを思い続けていれば、
だいたい誰かが手伝ってくれて、
丸山さんは機嫌よく馬鹿笑いして
いられるような気がするんですよ。
「よくわからねえんだよ、アハハハハ!」って。
アハハハハハハ!
(おわり)
2006-07-26-WED
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