第三回 ほんとは不戦勝がいいよね
社長としては
めずらしいタイプであるはずの丸山さんが、
実際に「社長ができちゃう」ということは
すごく素敵なことだと思うんですよ。
「向いてなくて、できなかったよ」ではなくて
「できるんだよ」というところが、
もうそれだけで、おもしろいんですよ。
丸山さんって、社長の勉強はしてない、ですよね?
たぶん、社長の勉強はしていなくて、
チームの勉強をしていたんだと思う。
それでなぜ社長ができるかというと、
つまり、ぼくは基本的に
「創業者」ならできるんです。
社員が10人くらいから始めて
大きくなっていくのは、
なんとか持っていけるじゃないですか。
ほぉー。
たとえば、エピック・ソニーを
始めたばかりのころだけど
社員をダーッと見渡すと、みんな若いんです。
社長は別にいたけど、
その人は実務をやらない状態だったんです。
それで、みんなを集めて、
「見渡したところ、俺がいちばん年上だ。
 よって、俺はナンバー2だ」
と自分で宣言するの。
(笑)
まあ、わかりやすくいえば、
「俺の言うことを聞け!」と。
エピック・ソニーは最初、
20人くらいしかいない会社だから、
それで成り立つんですよ。
プレイステーションのときも
最初は10数人しかいないわけだから。
ああ、そうなんですか。
そう。だから、
「俺を中心にしてやろうな!」
と宣言しちゃうと、
「それは変だ」とは、
まわりはなかなか言わないんですよ。
会社がある程度大きくなってくると、
「それは、いかがなものか」
みたいなのが出てくるんだけど。
経営企画室みたいなものができてね(笑)。
つまり、ある程度会社が成熟すると
背広どうしの話し合いになるんですよね。
うん。でも、現場では
「俺、一番だよな」という感じだから
「そっすよね」と軽く決まる。
うん。「こうするんだ!」みたいな。
そう。それで、
エピックがデカくなって偉くなっちゃった。
プレイステーションもえらくデカくなっちゃった。
その前に、CBSソニーも入っていませんでした?
あのときはペーペーだもの。
そうか。
CBSソニーのときにエピックをつくったんだ。
そう。若干、左遷ふうの経緯で。
アッハハハハハ!
たしか、当時は、
中原理恵さんや太田裕美さんなんかが当たって
その背景には松本隆さんとかがいて、
それでニューミュージックの市場が
できてくるわけですよね。
うん。
つまり、会社ができる前に、
材料はあったわけなんですよね。
そう、材料はあるんです。
それはいまも同じ状態。
いま、ぼくは沖縄にいるんだけど
沖縄の男の子ってあまり働かないんですよ。
働かないっていうと語弊があるけど、
上昇志向が薄いわけ。
そこで自分自身のことを考えると、
上昇志向がないわけではないけど、
競争はあまり好きじゃないんです。
だから、ぼくが何を努力するかというと、
「混んでいないところ」を探す努力をするんですよ。
混んでいないところを見つければ、
競争しなくていいじゃないですか。
だから、沖縄に目が向けた理由のひとつは、
「競争しなくていい」ということなんですよ。
ああー、なるほど。
競争しないところで
なんとなく長くやっていると、
だんだんそれが広がっていって
なんとなくメジャーになったりするんです。
そうすると、世間の人たちは
「先見の明がある!」なんて言ってくれる(笑)。
(笑)
そういう感じで、ずーっと来ているんですよ。
ほんとは、最初はその場所は
メジャーじゃなくてニッチだったんだけどね。
なるほどねー。
丸山さんは、基本的に
「戦乱」があると嫌なんですね。
うん。でも、オレね、
負けるのは好きじゃないのよ。
負けず嫌いではあるんだ(笑)。
負けると悔しいじゃない!
だから、不戦勝、不戦敗。
できれば、ドローでいきたいのね。
ほんとは不戦勝がいいよね。
(笑)
競争の激しいところって、
たとえ、そこでの戦いに勝ったとしても
その前にすごく努力を
しなければいけないじゃないですか、
でも、競争がない場所なら
あまり努力しなくても、
きっちりとやってさえいればいいわけだから。
うん、うん。
ほら、オリンピック選手でも、
たまにいるじゃないですか。
「オリンピックに出る」ということを
最初の目標にして‥‥。
あまり知られていない競技で
エントリーする、みたいな。
そうそうそう!
「その手があったの?!」みたいな。
つまり、勝ったの負けたのという
ゲームとしては好きなんですね。
うん。大好き。
遊びたいんですね。
ビジネス以前に、プレイなんですね。
そう、プレイ。
2006-07-20-THU
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