第五回 人が集まらなければしょうがない
もともと、丸山さんて
「偉い人」じゃないですか。
偉い人の言うことだから我慢して聞く、
という人がいてもいいと思うんだけど。
相手も「偉い人」だと、
そういうことはうまく働きますね。
だから、年齢的に50歳ぐらいの人には
「おい、バカヤロー!
 お前、俺に協力しろ」と。
頭に、「バカヤロー」が入るのね。
「こんにちは」の代わりにね(笑)。
そうそう。
だから、「バカヤロー」っていうのは、
相手が一流の人であればあるほど
言えることなんですよ。
だって、若い人にはじめてお会いして
「バカヤロー」って言ったら
大変なことになるじゃない。
言えないね。
そう、言えない。
だから、いま、ぼくが
「バカヤロー」と言える人には
なるべく会わないことにしているんですよ。
それは他の人にやってもらってね。
はじめて会う人に
「よろしくお願いします」と言うのは
それはそれで素直にできるんだけど。
ただ、ひじょうに難しいところにいるね!
アハハハハ、
それは性格の問題で。
そう。性格の問題だね。
でもね、丸山さんのやっていることって
やっぱりおもしろいんですよ。
自分のやっていることと重なることもあるし。
ぼくらもね、よーく考えると、
わからないことだらけなんですよ。
だけど、「いいじゃん!」と思っちゃう。
アハハハハ。
そのあたりは丸山さんと同じですよ。
取材に来たよその人がね、
「『ほぼ日』は何で儲けてるんですか?」って
必ず質問するんですよ。
で、自分が期待していたような
明確な答えがないということに
呆れて帰るんですよ。
「ほぼ日」は糸井さんが
コピーライターとして稼いで
「ほぼ日」に注ぎ込んでいるんじゃなくて、
それはそれでちゃんと別にして、
これでちゃんと食えてるの?
食えてますよ。
偉いなぁ!
最初は、ぼく個人の仕事のほうを
注ぎ込まないと無理でしたけど、
いまはもう、そんなことよりも
一人ずつのスタッフを
元気づけているほうが稼げますよ。
ふ〜〜〜ん。
通常、ネットで稼ぐというと、
「まずは広告収入」ってなるじゃない?
そうですね。
でも、「ほぼ日」では
そこは外しているでしょ。
そうすると、コンテンツなのかと。
たとえば、連載されているコンテンツは
本になっていってるじゃない?
だけど全部が東京糸井重里事務所から
出版されているわけじゃない。
よその出版社から出版された場合は、
「ほぼ日」は何も儲からないじゃないですか。
著者が別にいる場合は、
著者のところにふつうに印税が入ります。
基本的に、ウチにはお金は入ってきません。
そうですよね。
だけど、おもしろいコンテンツがあって、
そこにたくさんの人が集まってくると、
それが大きな財産になるんですよ。
だから、「ほぼ日」をはじめたときに
よくぼくが言っていたのは、
「銀座通りを作る」ということだったんです。
人が大勢集まる銀座通りをつくったら、
そこに自動販売機を置こうが、
小さい店を出そうが、
あるいは味噌汁が得意だから
味噌汁だけの店を出そうが、
人通りは多いんだから、商売できるんです。
そういうことは、漠然と考えていましたね。
俺ね、いま、その段階なのよ。
ですよね。
うん。
ぼくのブログを読んでいるとわかるでしょ?
漠然としているのが。
すごくよくわかる(笑)!
3周遅れくらいでここまで来たんだけど、
人がたくさん集まらなければ
しょうがないというので、
いまは集まる方向に思いっきり走っているわけね。
そうなんだけど、
「じゃ、集めてどうするんですか?」
と聞かれると、説明できないんだよなぁ(笑)。
それは簡単ではないですよ。
たぶん、丸山さんがやっている
「mF247」の具体的な難しさは、
演奏するコが必要だということですよね。
そう、そう。
下手でも楽しいっていうコもいるし、
下手だけど買いたくなるコもいるし、
上手いから人を呼べるっていうコもいれば、
上手いけど必要ないっていうコもいる。
そういうのを全部集めなきゃならないというのが、
たぶん、きついんですよ。
そうですね。
大会社でレコードをやっていたときは、
「おまえは、いいや」って言えたんです。
「おまえは、ちょっとルックス悪いから」とかね。
でも今回はものすごくいい意味での
「有象無象」がいないと
エネルギーが生まれないわけだから。
それをやるには、我慢が必要ですよね。
丸山さんにしてもぼくにしても、
これまでに生きてきたなかで
自分なりの「好き嫌い」とか「性格」を
確立しちゃってますから。
だけど丸山さんは
きっと我慢するんだろうなと思って、
「がんばれ! がんばれ、丸山!」
と見ているんですよ。
応援されているんだ。
丸山さんのブログでの
コメント欄を読んで
たまにぼくが腹を立ててたりしますよ(笑)。
ハハハハハハハ。
ああいうときって、
本人はカーッときても
意外に我慢できたりするんですよね。
それを見た他人のほうが
書いたヤツに対して怒ってますよ。
「お前、なんてケチな男なんだ!」みたいに。
うん、うん(笑)。
2006-07-24-MON
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