もくじ
第1回はじまりは大失恋 2017-12-05-Tue
第2回彼女に怒って帰られる 2017-12-05-Tue
第3回悲しいうちに書いとこう 2017-12-05-Tue
第4回歌詞にメッセージ性はない 2017-12-05-Tue
第5回そういう体質 2017-12-05-Tue
第6回失恋の対価 2017-12-05-Tue

16歳の老犬と暮らしています。
春夏秋冬、いつでも歩き回っています。

恋を、音楽にささげた人。

恋を、音楽にささげた人。

担当・中川

第4回 歌詞にメッセージ性はない

――
メロディと歌詞はどちらが先にできますか?
大久保
どっちかって言うと歌詞かな。
でも歌詞も「こういうの書こう」って書くんじゃなくて、
フレーズのストックがあって、
曲を作ったときになんとなく
「この雰囲気にはこれを歌おうかな」って決めて、
その前後をつくっていく、みたいな。
――
元のフレーズがサビになるとは限らない?
大久保
大抵サビにはならない。
――
でもそこに一番言いたいことがあったりする?
大久保
いや、あんまり「言いたいこと」がない。
――
「戻りたい」っていうのは言いたいことじゃないの?
大久保
でも、歌詞にメッセージ性はない。
基本的には
刹那的なシーンをどう美しく表現にするか、
とかそういうとこだから。
――
「表現にする」ことなんだ。
大久保
「振られた」とか「悲しい」とか
「失恋した」とかいう絶望的な状況も
音楽にしたらさ、芸術‥‥美しいものになるわけで。
なんかその変換作業が楽しいって感じかな。
だから基本的には楽しい、作ってるときは。
――
失恋と向き合う作業でも?
大久保
うん、楽しい。というか充実感がある。
「あ、これはよく書けた」とか
「これはすごく今の気持ちを言えてるな」とか、
そういうのが。
多分、俺すごくロマンチストで、
“自分の失恋体験をよりドラマチックにしてくれる音楽”
をつくってる感じだと思う。
――
でもそれの失恋体験を聴いた人が
「これは自分の体験だ」って重ねられるのが
大久保くんの歌詞だよね。
歌詞、褒められるでしょ?
大久保
そうね。でも最初は歌詞を意識してなくて。
2ndアルバム(『DRILL』)に入ってる
「OK(2006)」って曲を書いたときに、
実際書いたのは1stアルバムより前だったんだけど、
初めて歌詞を褒められて。
そのときに詞で表現することの喜びを感じた。
――
最初の頃からずっといい歌詞だと思う。
大久保
もう忘れられないシーンとか、
焼き付いてる瞬間とかを、
言葉にできたときの快感はある。
ある風景を自分の中で
映画のワンシーンにできる、みたいなさ。
――
ちなみに歌詞の話で言うと、
アイドルユニットlyrical school(リリカルスクール)の
「夏休みのBABY」や「CALL ME TIGHT」などの
作詞も手掛けてますけど。そこは何か違う?
大久保
そこは全く違う、感覚が。
どちらかって言うとコピーライターのほうの
能力を使ってるイメージ。
(※大久保くんはコピーライターでも活躍中)
――
彼女たちを生かすにはどんな歌詞がいいだろう、
みたいなところ?
大久保
うん。
――
そこに自分の経験は乗せないの?
大久保
女の子の歌だし
あんまり具体的な自分の経験は乗らないけど、
恋に関する感覚は
時代とか世代が変わっても一緒な気がする。
ただ、音楽の聞き方とか言葉の使い方は確実に違うから、
そこは技術的にやってる感じかな。
――
今までの話に比べると“仕事として”感があるね。
大久保
でも基本的にはメンバーやお客さんを
思って作ってるから、思い入れは強いよ。
やっぱりメンバーの夢がかかってるし、
頼まれたからには結果を出さないとって思うしね。
だから自分“ふたり”でやってるようなイメージがある。
――
コピーライターとしての大久保くんと、
ミュージシャンの大久保くんと。
大久保
そう。それができるのは自分の強みだと思うしね。
――
アナのときは?
大久保
アナはやっぱり超個人的で、
失恋とかなにかを表現したいって
欲が出てきたときに書く感じ。
思ってるのは、好きな子のことだけ。

(つづきます)

第5回 そういう体質