- ――
-
ひとつの失恋でいくつか曲を作るにしても
そんなに書くことってありますか?
- 大久保
-
でも歌ってることはほとんど一緒だからねえ。
シーンが違うだけで。
基本的には「戻りたい」っていうのを
いろんな表現で言ってる(笑)。
- ――
- でもそれ、本人が聴くこともあるわけでしょ?
- 大久保
-
うん。ただそもそもデビューを目指したきっかけも、
もちろん音楽で食いたいっていうのがあったけど、
高校を卒業して、好きだった子の居場所が
わからなくなってたから。
単純に有名になっておけば
こっちの居場所はわかるでしょってところで。
- ――
- 発信したかったんだ。ここにいるよ、と。
- 大久保
-
そう。連絡が途絶えたから、
なんかもうこっちが表に出とくしかないなって。
- ――
- デビューすらも失恋がきっかけ‥‥。
- 大久保
-
まあでも最初のきっかけよ。
それだけでずっとやってきたわけじゃない。
- ――
- そうよね。そしてその恋を21、22歳まで引きずって。
- 大久保
- やっと好きな人ができた。
- ――
-
でもそれじゃ曲はできないわけでしょ?
失恋じゃないと書けないから。
- 大久保
- ただその子には、出会った次の日に一回振られたので。
- ――
- まず失恋。
- 大久保
-
そう。それで何曲か書けて(笑)。
そのあと、がんばってちゃんと恋人になって
数年間付き合ったけど、その間もいろいろあったから。
そういうときに曲を書いてた。
- ――
-
「いろいろ」を表に出すってこと?
付き合ってる最中に。
- 大久保
-
そう。だから忘れもしないのが、
ちょっと気持ちが冷めて
一人になりたいなあって思ってるときに
それをそのまま書いて、
ライブで「新曲やります」って歌ったら
曲の途中で彼女が怒って帰ったことあるよ。
スタスタッて出て行くのを覚えてる。
- ――
- その姿を見てどう思うの?
- 大久保
-
「悪いな」とは思ったけど、
その頃はプロになりかけの頃で
どうしても音楽のほうが上だったから。
- ――
- しょうがないって思ってた?
- 大久保
-
しょうがないっていうか、
身を削ってやっていこうっていう
覚悟はしてた。
- ――
- そこは身を削るしかないのでしょうか。
- 大久保
-
才能がある人は想像で書けるんだろうけどね。
自分は実体験‥‥実体験っていうか、
そういうネガティブな精神状態から
生まれたものじゃないとよくならないって
思ってたから。
- ――
-
でもそれって相手も関わってるわけでしょ?
さっきの出て行った話じゃないけど、
彼女からなにか言われたりする?
- 大久保
-
なにか言われたことはないけど、
あんまりいい気分じゃないだろうね。
でも今までに数曲だけ、
しあわせな時期に書いた曲があって。
それは「これってわたしのこと?」って聞かれた。
- ――
- それはうれしくて?
- 大久保
-
そうなんじゃない?
「そうよ」って言ったら「ああよかった」って。
「こんな気持ちだったんだ」って思うみたいで。
- ――
- それ聞かれたの、別れた後?
- 大久保
- そう(笑)。
(つづきます)