もくじ
第1回売れてみて、どうしたらいいか。 2016-05-16-Mon
第2回見えない10年後、20年後を語るのって 2016-05-16-Mon
第3回「当事者になれない」から、できたこと 2016-05-16-Mon
第4回本当のこと言う偽物が、 結局なれる場所 2016-05-16-Mon
第5回お金って、なんだろうなあ。 2016-05-16-Mon
第6回楽しみにされるようなおじさんでいたい 2016-05-16-Mon

株式会社プレスラボの編集者/ライター。

当事者じゃなさすぎる僕らにできること

古賀
でも、遠くの5万人とか遠くの50万人にモテてる俺
っていうのを喜ぶ人も、確実にいますよね。
糸井
それはものすごく面白いゲームだし、
僕なんかの中にそれはなくはないんだけど、
何人読んでくれてるっていう、まさしく100万人。
それはあの、「ええーっ」っていう
嬉しさがあるじゃないですか。
アルプスってあれか、日本か、日本のアルプスか、
じゃなくてヒマラヤとかさ、ああいうのが見える場所に
立ったことあります?

古賀
いや、ないです。
糸井
ないですか。たまたま立ったりしたときに、
「大きいなあ……」って思うじゃないですか(笑)
古賀
ああ、ナイアガラの滝で感じました(笑)。
糸井
いいですよね。
古賀
いいです、いいです。うん。
糸井
で、「来て良かったなあ」って思うじゃないですか。
古賀
思います、思います。
糸井
人に「もしナイアガラの方に行くんだったら、
近く通るんだったら絶対行った方がいいよ」
と思うじゃない。あれですよね。
古賀
はあああ。

糸井
僕はだから人に、結構、
ピラミッドは勧めてますもん。
俺、そんなもの見たかというと、
実は仕事でそんなもの見てないんですよ。
100万部なんてもう絶対ないし。
だから何が大きい数字かな、
っていうのは宿題ですね。
エベレストのふもとで、
「登れないけど、これかあ」
って思うみたいな。
古賀
はい。
糸井
それ宿題なんで、今やりかけてる仕事が、
初めて100万みたいなのの先のこう、
ビジョンとしては億だとかっていう単位で
数えなきゃいけないぞというところに
いってもいい仕事になったんです。
古賀
はい。
糸井
だとしたら、どういうふうになるかわからないけど、
億人の人がやる、っていうのを想像しながら
生きてみたいな
って思うじゃないですか。
それは「どうだ俺はすごいだろう」じゃなくて、
ヒマラヤですよ。
その仲間もヒマラヤって見られるのがいいよね。
古賀 
うんうんうんうん。

糸井 
古賀さんが「すっごく、お金なんかないですよ」って子に
「ちょっと今儲かったから連れて行ってあげます」って、
ヒマラヤが見えるとこに立って「なあ」って言うと、
その子が「ほんとだあ」って言うじゃないですか。
その「ほんとだあ」が、自分以上に嬉しいですよね。
この間あったじゃない、それ。
古賀 
はい。うちの子が。
糸井 
ヒットしたんだよね。
古賀 
そうですね。
糸井 
あれですよ。
古賀 
そうですね、あれは本当に、気持ちいいですね。
自分のこと以上にぜんぜん、その、
会社の子が10万部いって、
それは嬉しかったですね。
糸井 
それは嬉しいと思いますよ。
だから、なんだろう
「人が喜んでくれることこそが
自分の嬉しいことです」
っていうのを綺麗事として言葉にすると、
すごく通じないんだけど、
例で、あったでしょ、そういうことが。
たとえばお母さんが子供に、
お母さんは食べないで、
イチゴを食べさせるみたいな。
あれもまったく同じだし。
そういう経験をすればするほど、
人の喜ぶことを考えつきやすくなりますよね。
古賀
そういうとき、その、遠くの5万10万、
あるいは億の人たちとかを考えるとき、
糸井さんの中では、
お金っていうのはたとえば
「ミリオンセラーになったら1億円だ」
とか、そういうような、
お金っていうのは想像しますか。

糸井
あのね、人はそれをすぐに想像するので、
そこのところに対して無防備でいると、
その人の小ささに合わせて自分像が見えちゃうんで。
古賀
ほうほう。
糸井
それは嫌なので。
僕はお金に対してはちょっと警戒心があって、
「お金好きです」っていう発言を
ときどきするようにしています。そうしないと
「そうじゃないフリをしていたのに好きじゃねえか」
っていうふうに。
古賀
むっつりスケベみたいな(笑)。
糸井
結構そこね、リスクなんですよね。
うーん、なんだろうなあ。
邪魔するのに、非常に都合がいいんですよ。
古賀
邪魔するのに都合がいい?
糸井
あいつは、あいつの欲望のために何かしてる
っていうふうに思う、と。
たとえば古賀さんが、
何か「これは面白いぞ」ってことを考えて、
「俺もそれやりたいです、参加させてください」
って言った人に、
「それをやればやるほど古賀さんが
儲かる仕組みなんだよ」って誰かが言ったら、
動きにくいんですよ。
古賀
そうですね。
糸井
だからもっと屈託なくやるためには、
お金について僕はこういうふうに思ってますし、
具体的にこうですよねっていうのが、
わりといつも見えるようにするというか、そこはなんか、
それこそ管理しないとできないですね。
古賀
それはその、喜びの源泉として
「おっ、1億円」とか、
そういうものはあったりするんですか。
糸井
それはまったくないですね。
古賀
ないですか。
糸井
なぜないかっていうと、
僕が求めて得られるような数字って、
お金で言うと、ちっちゃいからですよ。
どうしたってちっちゃいですよ。
街歩いてたときに、チンケなビル
いっぱい建ってるじゃないですか。
これあなたのお金で建ちますか。

古賀
そうですよね。
糸井
前提として、チンケなビルつったでしょ。
古賀
ええ、はいはいはい。わかります。
糸井
つまり、「古賀さん、その本売れて儲かったでしょ」
っていうのって、チンケなビル以下なんですよ(笑)。
古賀
そうですよね、うん。
糸井
なんでビルが建つかっていうのは、本当は違って。
つまり、借りて作るから建つんですけど、
でもそれにしても、そのお金で何か勝負するには、
やっぱりタネ銭にしかすぎないわけで。
古賀
うんうんうん。
糸井
そのくらいのお金で、
持ってるだの持ってないだの、
儲かりましたねとかっていうのは、
モテちゃって大変じゃないというのと同じような。
古賀
はいはいはい。
それ気づいたの、いつぐらいですか。
糸井
とっくです(笑)。とっくにわかってました。

古賀
そうですか。20代とか30代とか?
糸井
30代ですね。
20代にはまったく、そういうタイプのお金は
見えないですから。
だから、千万単位が
「ああ、千万単位ってこういうことか」
って思うときがありますよね。
それがたぶん30代の初めぐらいで。
自分じゃずいぶん儲かったなって思うんですね。
でも、意味ねえなって。
実はみんなが思ってるのの半分ですよね、
税金だから。
古賀
うんうん、そうですね。
糸井
となると、
プロ野球選手の年俸とか見てても、
「この人が来年怪我しちゃったら、
これ実は、こんなもんなんだよね」っていうのを、
使い道として想像できるようになるんですよね。
そしたら、その、
ないがゆえにうらやましがってたり、
ひがんだりしてる人たちが言ってることって、
お門違いすぎて。
古賀
そうですね、うんうんうん。
糸井
政府からくる補助金みたいなのを使って
こういうことをやろうとか考えてる人の方が、
僕らよりずっとやっぱり
お金のリアリティをわかってますよね。
古賀
うんうん。
糸井
これはだから、なんだろう、
いわゆる会社員の発想でお金を考え続けると、
やっぱり何もできなくなりますよね。
古賀
そうかあ。

糸井
たとえば、自分の知ってる人が
会社を辞めて企業したときに、
大きくてこのぐらい用意しなきゃならなかったろうな、
小さければこうだろうなみたいな、
ってだいたい想像つくじゃないですか。
古賀
そうですね。
糸井
それ、すごい大きいお金なんだけど、
ちっちゃいですよね。みんなが
「俺たちが出したお金どうしてくれるんだ」
って言うかも知れないとか考えると、あんまり、
だから、スタートするときは、
僕はとにかく借りないとか、
そういう発想になりがちなのは、
わらしべ長者の方が、
最初からようかん1本もらうより、
やりやすいからなんです。
古賀
うんうんうん、はいはいはい。
糸井
その辺は、ちょっと先輩っぽく教えられますよね。
古賀
そうですね。
糸井
なかなか整理して考えられないんですよね。
古賀
でもそれと、「じゃあお金はなしでやるよ」
っていうのとも、また違いますよね。
糸井
ぜんぜん違います。
お金って、なんだろうなあ。
エンジンが回るみたいなとこがあって。
そのエンジンだって発想をするためにも、
ちっちゃいお金でうだうだしていると、
消し炭の奪い合いみたいになっちゃうんで。

<第6回へ続く>

第6回 楽しみにされるようなおじさんでいたい