もくじ
第1回売れてみて、どうしたらいいか。 2016-05-16-Mon
第2回見えない10年後、20年後を語るのって 2016-05-16-Mon
第3回「当事者になれない」から、できたこと 2016-05-16-Mon
第4回本当のこと言う偽物が、 結局なれる場所 2016-05-16-Mon
第5回お金って、なんだろうなあ。 2016-05-16-Mon
第6回楽しみにされるようなおじさんでいたい 2016-05-16-Mon

株式会社プレスラボの編集者/ライター。

当事者じゃなさすぎる僕らにできること

第2回 見えない10年後、20年後を語るのって

糸井
追い詰めすぎなのかもしれないけど、どうですか逆に。
古賀
いや僕は、そうだなあ。やっぱり、つい「業界のため」
とかっていうのを、言っちゃうし、考えるんですよね。
たとえば10年前、20年前、自分が新人だったころは、
こんなカッコいい先輩たちがいたって、
今自分らがそれになれてるんだろうかとか。
今残っている50代60代の中に、
どれくらいカッコいい人たちがいるだろうと思うと、
やっぱり昔の思い出のほうがカッコよく見えるんですよ。

糸井
そうですね。
古賀
で、そのときに若くて優秀な人が、カッコいいなとか、
入りたいなって思う場所になってるかどうか
っていうのは、たぶん端的に言って、
ネット業界とかのほうがキラキラして見えるはずなので。
うーん、だから多少のキラキラとか、
なんて言うんですかね……。
羽振りの良さみたいなものとか、そういう、
サッカーの本田圭佑さんが白いスーツ着たとか、
ポルシェに乗って成田にやってきたとか……。
糸井
あえて、やってますよね。

古賀
はい。ああいう演出とかも、何かしら出版業界の中とか、
僕らみたいな立場の人間が、
多少はやったほうがいいのかなあっていう思いも
若干あるんですけど。でも、
今の糸井さんの話を聞いて、
三日三晩自分にそれを問いかけたら……。
糸井
あっはっはっは。
古賀
……と、思いますね(笑)。自分が、うーん、
やっぱりそうだなあ、問い詰めると、どっかには
「ちやほやしてほしい」という気持ちはあるんで、
それを良くないことと片づけるのは、
あまりにももったいない原動力だから。
糸井
人間じゃなくなっちゃう、ってとこがあるからね。
古賀
はい。だから「ちやほやされたい」と
どう向き合って、そこをこう、
下品にならないようにとか、
人を傷つけたりしないようにとかの中で、
自分をこう前に進めていくっていうのが、
今やるべきことなのかなという気はします。

糸井
まあ、本当のこというと、
やるべきことなのかどうかも
わからないんですよね。
つまり、なんて言うんだろう、
変なハンドルの切り方してみないと、
まっすぐが見えないみたいなところがあって。
古賀
はいはいはいはい。
糸井
やっぱりその、僕はよく言ううんだけど、
社内で「昔はみんな立ちションベンしてたんだよ」
って言い方して。
地方に住んでた人は、もっとですよね。
古賀
そうですね。
糸井
田んぼと年の境目みたいな場所だらけだったから、
田んぼや山の中でするのはおかしくないわけで。
重なってる領域みたいなところにみんな
生きてるわけだから。
古賀
はい。
糸井
それから、今倫理的にものすごく
あちこちで追及されるけど、
その、おめかけさんのいる人とかって、
いくらだっていた。で、今の基準で良い悪い
って言うのは簡単ですよ。答えがわかってて、
その後押しをしているわけだから。
だけど、タバコ吸って、女子供のいるところで
モクモクの部屋でえらそうなことを
オヤジたちが喋ってて、
「あ! 酒こぼしちゃった」なんつって
「あらあら」なんて拭いてもらう。
古賀
はいはいはいはい。

糸井
ああいう時代に生きてたっていうのが、
僕の中にはまだやっぱり、あの、
しっぽがついてますからね。
だから、比べる機会がものすごく多いんですよね。
あのままそっち行ってたらこれは今もう袋叩きだぞ、と。
そんなこと山ほどあるんだけど、
今ってスタートラインリセットでゼロにして、
すぐにチェックし合うみたいなことになるじゃないですか。
「歯に青のりついてない?」みたいなとこから
始まるじゃないですか。
古賀
ええ、ええ。
糸井
青のりつけちゃったほうが、人として健全な、
こう、免疫というか、
それをつくれるんじゃないかなと思うんですよ。
今、ネットのほうが華やかに見えるっていうけど、
あれやってる人は、痙攣的に楽しいんじゃないですかね。
楽しいとしたら、ピリピリするような。
古賀
うんうんうん。
糸井
やっぱり追い抜く方法を自分でわかっていながら、
追い抜かれるのを待つみたいなわけじゃない。
古賀
そうですね。うんうん。
糸井
僕がコピーライターやってるときにも、
それの浅いやつはありました。
古賀
ほう。
糸井
その、あいつがこのくらいのところで出してくるなら、
俺はそれよりずっと飛んじゃいたいなとか。
でも今って、その、僕の時代が月単位で動いてたとしたら、
月刊誌の尺度で動いてたとしたら、週刊さえ超えて、
時間単位ですよね。
あそこで“「俺は裏の裏まで読んでるんだ」ごっこ”を
ピリピリしながらやってるというのは、
なんにも育たない気がする。

古賀
だから先日糸井さんが、その、
3年後の話というのを書かれてたじゃないですか。
糸井
あれ、ピリピリくるでしょ(笑)。
古賀
でもその時間軸をどういうふうに
設定できるかっていうのが、すごく大事で。
見えもしない10年後、20年後を語りたがる人って……。
糸井
まずそれはいやだね。
古賀
そうですね。
そこで満足している人たちっていうのは、
結構たくさんいて。若い人たちにも、
ある程度年齢がいっている人たちにもいて。
本当に今日明日しかないんだっていう、
「だってわからないじゃん」って。
僕もどちらかというと、そういう立場だったんですよね。
でもそこで考えに考えたら、
3年先にこっちに向かってるとか、
あっちに向かってるとかの大きなハンドルは切れるんだ
っていうのは、うーん、
あれは結構ピリピリきましたね(笑)。
糸井
それをだから僕は今の歳でわかったわけです。
古賀
ああーーーー(笑)。

糸井
古賀さんの歳でも、わかる人はいるかもしれない。
だけど、そんなに簡単にその考えになりたくない
みたいなところがあって、たぶん抵抗するんですよね。
古賀
うんうん、そうですね。

<第3回へ続く>

第3回 「当事者になれない」から、できたこと