タモリ先生の午後。
こんな職員室があればいい。
前々から、タモリさんという人は
先生として最高なんじゃないかと思っていた。
生徒をあせらせない。
最低限の知恵と道具だけを与えるけれど、
そのまま気づかれなくても、気にもせずに笑ってる。
そのくせ、こども以上に好奇心が強くて、
なまけもので、みょうに小まめで、ちょとスケベ。
そういう先生に、タモリさんはなれそうだ。

そういう先生のいる職員室で、
出がらしのお茶でも飲みながら、むだ話をしてみる。
そんな感じの対談ができました。


糸井 毎日、まったく変わんないみたいですね、
タモリさんの日々っていうのは。
タモリ 変わんないですね、ほんとに。
代わり映えしないって言ったら
私じゃないですかねぇ。
糸井 大昔に、ぼくはタモリさんと1度
雑誌で対談したことがあって。
その本が出てきたんで、
パラパラめくってみたんですけど、
ほとんど今言ってることと同じです(笑)。

すでに当時、
「どうあるべきでやってきたわけじゃないし、
 この世界って、運だけだから。
 俺自身、何も変わっていないんだけど、
 すごく変わったようにいわれると戸惑う」
とか言ってた。変わらないと。
タモリ そうですね、何も変わってないですねぇ。
糸井 子どものときから?
タモリ 子どものときからそうですね。
糸井 (笑)
タモリ ぼくの精神年齢がいちばん高かったのは、
4歳から5歳にかけて。
そんとき、俺はすごかったですね、やっぱり。
糸井 将来について考えたりしてたんですか?
タモリ いや、あのね、ウチに、じいさんがいまして。
だいたいじいさんばあさん育ちなんですけど、
近所に、じいさんと同じぐらいの歳の
友だちがいるんですよ。
その人、でかい家に住んでるんですけども。
で、ウチに来てじいさんとこう喋ってたのを
後ろで聞いてたんですよ。
映画を観たらしいんですよ、その人が言うには。

「映画を観てて、映画の中で、
 クジラを捕る場面があって、
 クジラにモリを打って血が流れるのを見たとき、
 映画は確かにゴムのクジラかもしれませんけど、
 思わず、画面に向かって、両手を合わせました」

そう、じいさんの友だちが言ったときに、
言葉としては後で知るんですけども、
「偽善」ってものを嗅ぎとりまして……。
糸井 (笑)名前がついてない概念として?
タモリ うん、ちゃんとわかった。
4歳、5歳の時に思ったんですよね。
糸井 油断ならないですね。
タモリ 油断ならない。
さらにわたしは、
幼稚園に行けと言われて、
幼稚園ってどういうところだろうかと思ったんで、
子どもの足で歩いて、20分ぐらいですかね、
そこに行けといわれたんで、
半日、見学に行ったんです、外に。
糸井 うん。
タモリ 外からこう、幼稚園を見たんです。
そしたら、
「♪ギンギンギラギラ 夕日が沈む」
っていうのをうたっていて……。
俺はああいうことはできないと。
糸井 ありゃ違うと。
タモリ あれが、なんであれが楽しいんだ。
それで、なんで
あれをやんなきゃいけないんだと。
で、親に、
「幼稚園は絶対に行きたくない」
「なんでだ?」
「見た。で、こんなことやってた。
 俺はああいうこと、絶対にやりたくない」
糸井 (笑)
タモリ ま、だからまあ、あの当時の親って、
いい加減なもんですね。
「じゃあ、いいや」ってことになった。
「ま、いいよ、おまえ、行かなくて」って。
でも、後から後悔するんですけど……。
まわりの子ども、全員行くでしょ?
やることがないんですよ。
糸井 (笑)ひとりぼっちですよね。
タモリ もう、朝飯終わったら途方にくれてましたね。
糸井 毎日、することなくて?
タモリ うん(笑)。
糸井 その後、行くとか言わなかったんですか?
タモリ それは言わなかったね。
糸井 それは意地っ張りなんですか?
タモリ いやぁ、それでもやっぱり
ギンギンギラギラはやめようと。
  (つづきます。)

このあとのふたり

タモリ先生の午後。


























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2003-12-24-WED

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