私と芸術、私の友情。瀬戸内寂聴 私と芸術、私の友情。瀬戸内寂聴
2021年の夏、東京では
横尾忠則さんの作品があちこちで見られます。
国内外の団体がここぞと力を出し合い、
類稀なる存在をあらためて知らしめる、
しずかで大きな芸術活動です。
ほぼ日もそのちいさな一端を担います。

50年来の友人である作家の瀬戸内寂聴さんは、
横尾忠則さんを
「近代日本を代表する天才的人物」と言います。
第1回 近代日本を代表する、天才のひとりです。
瀬戸内
寂聴です。
──
ほぼ日の菅野と申します。
今日は、横尾忠則さんについて
お話を伺います。
瀬戸内
はい、どうぞ。
──
まず、横尾さんからメッセージを
お預かりしております。
瀬戸内
はい。
──
「こちらの耳がこんなふうになってしまって、
(横尾さんはここ数年、難聴です)
寂聴さんと直接お話ができなくなって、
自分が話さなくちゃいけないのに、
申し訳ない、とお伝えください」
瀬戸内
ええっ、なんで(笑)、そんなこと改めて言うの。
──
寂聴さんとお会いして
直接お話をなさりたいんだ、という
横尾さんの気持ちをいたく感じます。
瀬戸内
ええ、ええ。
──
寂聴さんと横尾さんの、
長い友情が続いた秘訣はなんでしょうか。
瀬戸内
そうねぇ、
とくに長く続けようとか、親しくしようとか、
お互いに思っていないと思います。
どっかで気が合うんでしょうね。
長いあいだ、一度もけんかしたことがないの。
肉親みたいな感じですよ。
横尾さんも、家族のひとりみたいに
思ってるんじゃないかな。
(横尾 影の声)

ハイ、極楽おばあちゃんです。
──
おお、なるほど。
瀬戸内
恋人とかね、そういう関係はまったくないの(笑)。
そういうことは、お互いに何もない。
奥さんとも子どもたちともなかがよいし、
ほんとうに、横尾さんの家族の
一員みたいになってますよ。
(横尾 影の声)

何いってんですか、
言い訳しているように思われますよ、
お坊さんのくせに。
──
おふたりの出会いは約50年前。
横尾さんもお若いときですね。
瀬戸内
はじめて会ったときはね、
横尾さんが年より若く見えて、私は
「なんていう、すてきな美少年だろう」
と思いましたよ。
(横尾 影の声)

いまの爺さんを誰も信用しません。
──
少年!
瀬戸内
それはそれは、きれいな少年だったの。
体型はいまと同じようですけど、
すごくおしゃれで目立ちました。
たしか、どこかの新聞社で会って、
その新聞社からの帰りに車を呼んでもらってね、
横尾さんとふたりで車に乗って帰ったんですよ。
その車の中で、横尾さんが
ふたりの子どもの父親だって言うので、
びっくり仰天した。
(横尾 影の声)

男のぼくが産んだわけじゃないので、
びっくりなんかしないでください。
──
英さんと美々さんのお父さんですね。
瀬戸内
少年だとばっかり思ってたらね、
子どもがふたりいるって。
子どもが子どもを
生んだみたいな感じだもの。
(横尾 影の声)

おたまじゃくしじゃないんですからね。
──
ふふふふふ。
瀬戸内
年の差はありますけれども、
それをお互い感じたことがないみたい。
それからずうっと仲よくしています。
(横尾 影の声)

色坊主といわれますよ。
──
寂聴さんが1922年生まれ、
横尾さんが1936年生まれ。
14歳ちがいですね。
瀬戸内
年の差も感じたことがない。
格別なつかしいとかなんとか、
そういう感情もないの、
ほんとうに身内みたいなの。
(横尾 影の声)

年の差は14歳もあります。
──
出会ったとき、横尾さんから
「才能のにおいがした」と
おふたりの往復書簡の本
『老親友のナイショ文』にありました。
瀬戸内
ええ、才能はね、
私はもう、頭が上がらないですよ。
私が横尾さんとなかよくしているのは、
やっぱり横尾さんには
ものすごい才能があるからです。
近代日本を代表する、天才のおひとりだと、
私は信じています。



横尾さんはね(笑)、私に
「あんまり天才、天才って言わないでくれ」
って言うんですよ。
私が「横尾さん、天才だ」と
いろんなところで言うと、
横尾さん本人が天才って
言われたがっているように思われる、
とか言うのよ。
そんなこと誰も思わないですよね。
横尾さん、あんがい難しいんですよ。
(横尾 影の声)

天才は難しくないです。
──
あんがい難しい‥‥そうかもしれないですね(笑)。
瀬戸内
お友達がたくさんあるようだけどね、
ほんとうは難しいんじゃないかしら? 
あんまり難しくて、編集者なんかもみんな、
怖がってるかもしれない。
(横尾 影の声)

ぼくの優しさがわからないのは勉強不足です。
──
そうですよね、少し怖いイメージもあります。
瀬戸内
横尾さんは、怖がられてるなんて
知らないんじゃないかな。
自分はやさしいと思ってるからね(笑)。
でもほんとうに、何も怖くないんですけどねぇ。
私は年の差もあったし、関係が長く続いたのかなぁ。
私、男好きだから、
すぐ誰かを好きになるんだけど、
横尾さんとはそういうことがないの。
横尾さんのことは好きだけれども、
異性との恋愛感情みたいなものが全くないの。
(横尾 影の声)

得度したお坊さんはおとなしくしなきゃダメ。
──
不思議ですね。
瀬戸内
でもね、そういう関係は続くんですよ。
恋愛関係があったら、両方とも、
すぐに感情が入るでしょ。
ビリビリしてダメになる。
(横尾 影の声)

まだ言っている。これでお坊さんだからねぇ。
──
私も若い頃は恋愛がしたいなと
思っていた時期がありましたが、
いまとなっては長く続く友情に、
とてもあこがれます。
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※「横尾 影の声」は横尾忠則さんによる加筆です。
(つづきます)
2021-06-30-WED


この夏、横尾忠則さんの作品が
東京のあちこちで見られます。
ほぼ日は渋谷PARCO8階「ほぼ日曜日」で
横尾忠則さんのお人柄や生活にスポットをあてた
展覧会を開催します。

また、みなさまからの熱い要望により、
連載『YOKOO LIFE』を
糸井重里との新規対談を加えて書籍化します。



みなさま、この夏、
『YOKOO LIFE』の本を片手に
「東京YOKOOめぐり」をなさってください。
(めぐった方には横尾只海苔をプレゼント!)
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『YOKOO LIFE』
横尾忠則(著)

糸井重里(聞き手)

1,320円(税込)

渋谷PARCO ほぼ日曜日で
7月17日より注文販売。
7月21日より先行販売。
東京都現代美術館のショップ、
横尾忠則現代美術館、豊島横尾館で、
7月21日より先行販売。
ほぼ日ストア、全国書店で
8月3日より販売開始予定。
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打ち合わせや旅のあいだのおしゃべりが、
宝もののようで、聞き逃がせなかった。
だから録音機をできるだけまわした。
どうおもしろいのか、説明はできない。
そんなふうにおそるおそるはじまった、
横尾忠則と糸井重里による
「ほぼ日」のおしゃべり連載は、
通な方々のあいだでじわじわと話題となった。

「あれ、本にすればいいのに!」
という声をいただくも、
編集方針について迷いに迷い、数年経過。
この記念すべきYOKOOイヤーに、
思い切って追加の対談を収載し、
奇跡のような本を誕生させます。
本になって、さらに宝もののような、
貴重な内容です。
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「YOKOO LIFE 

横尾忠則の生活」
会期/2021年7月17日(土)→8月22日(日)

   11:00→20:00

会場/渋谷PARCO8階「ほぼ日曜日」

入場料/450(¥OKOO)円

主催/ほぼ日

協力/朝日新聞社



2021年7月17日(土)→10月17日(日)

東京都現代美術館 企画展示室1F/3F



2021年7月21日(水)→10月17日(日)

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3



2021年7月17日(土)→9月5日(日)

丸の内ビルディング、新丸の内ビルディング



ジャケットとパンツを
2021年7月1日(木)から順次発売

ISSEY MIYAKE SHIBUYA(渋谷PARCO2階)、
A-POC ABLE ISSEY MIYAKE / AOYAMA、
ISSEY MIYAKE SEMBA、
ISSEY MIYAKE MARUNOUCHI、
ISSEY MIYAKE ONLINE STORE
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横尾只海苔

(よこおただのり)

プレゼントします。
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横尾さんの描き下ろし直筆文字入り!



渋谷PARCOの「YOKOO LIFE」展入口で、
東京都現代美術館で開催する
「GENKYO 横尾忠則展」のチケット
(電子チケットの画面可)をご提示の方に、
横尾忠則書きおろし文字入り
「横尾只海苔」(ホンモノの海苔)を
プレゼントします。
※「横尾只海苔」はなくなりしだい配布終了します。
「GENKYO 横尾忠則展」チケットは
観覧前、後どちらも可です。