一方、母は白血病から慢性腎不全になり、
週3回透析に通っていました。
免疫力の落ちている母を病室に呼ぶことを
ためらっていたのですが、
ある日、夫が母を透析の帰りに
父の病室まで連れてきてくれました。
痛みどめで朦朧としていた父ですが、
母が来たことがわかるとやにわに体を起こそうとし、
何か声を発しました。
手を取り合いふたりとも泣いているのを見て、
連れてきてくれた夫に心から感謝しました。
それからほどなくして、
桜が咲く頃に父は静かに逝きました。
いまでも桜の季節になると
「気をつけて帰るんだよ」という
父の最後の声を思い出します。
数年後、母も父の元へ旅立ちました。
(T)