さよならは、こんなふうに。 さよならは、こんなふうに。
昨年連載した
訪問診療医の小堀鷗一郎さんと糸井重里の対談に、
大きな反響がありました。
あの対談がきっかけとなって、
ふたりはさらに対話を重ね、
その内容が一冊の本になることも決まりました。



小堀鷗一郎先生は、
死に正解はないとおっしゃいます。
糸井重里は、
死を考えることは生を考えることと言います。



みずからの死、身近な人の死にたいして、
みなさんはどう思っていますか。
のぞみは、ありますか。
知りたいです。
みなさんのこれまでの経験や考えていることを募って
ご紹介していくコンテンツを開きます。
どうぞお寄せください。
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illustration:綱田康平
019 会うこともなかった父の姿を見たときに。
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父が亡くなった。
子どもの頃から、帰ってきたりこなかったり、
いるようないないような、そんな存在だった。
私たち子が成人し両親が離婚してからは、
会うこともなかった。
ときどきメールが届いた。
元気か、仕事はうまくやっているか。
いまさら。そんな思いもあって返さずいると、
手紙が届いた。
元気か、渡したいものがあるから、いつ会えるか。
ふぅん。読んで、しまって、忘れて。
次の連絡は、倒れたという病院からの電話だった。



病院に着いたら、死んでいた。
現実味がなくて、でも口にしていたのは
「苦しくなかったですか?」だった。



苦しむ間もなかったと聞いてやっと、涙が出た。
なにを渡そうとしていたの? 
私に会いたいと思っていたの? 
もう、一生知ることはない。



ドラマのように激しく後悔はしていないけど、
ただ、もう一生知ることはできないんだなと、
夜中に、仕事中に、食事中に、
唐突に胸によぎる思いは、
多分この先消えることはない。



(S)
2020-11-30-MON
小堀鷗一郎さんと糸井重里の対話が本になります。


「死とちゃんと手をつなげたら、
今を生きることにつながる。」
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『いつか来る死』
小堀鷗一郎 糸井重里 著

幡野広志 写真

名久井直子 ブックデザイン

崎谷実穂 構成

マガジンハウス 発行

2020年11月12日発売