子どもの頃から、帰ってきたりこなかったり、
いるようないないような、そんな存在だった。
私たち子が成人し両親が離婚してからは、
会うこともなかった。
ときどきメールが届いた。
元気か、仕事はうまくやっているか。
いまさら。そんな思いもあって返さずいると、
手紙が届いた。
元気か、渡したいものがあるから、いつ会えるか。
ふぅん。読んで、しまって、忘れて。
次の連絡は、倒れたという病院からの電話だった。
病院に着いたら、死んでいた。
現実味がなくて、でも口にしていたのは
「苦しくなかったですか?」だった。
苦しむ間もなかったと聞いてやっと、涙が出た。
なにを渡そうとしていたの?
私に会いたいと思っていたの?
もう、一生知ることはない。
ドラマのように激しく後悔はしていないけど、
ただ、もう一生知ることはできないんだなと、
夜中に、仕事中に、食事中に、
唐突に胸によぎる思いは、
多分この先消えることはない。
(S)