さよならは、こんなふうに。 さよならは、こんなふうに。
昨年連載した
訪問診療医の小堀鷗一郎さんと糸井重里の対談に、
大きな反響がありました。
あの対談がきっかけとなって、
ふたりはさらに対話を重ね、
その内容が一冊の本になることも決まりました。



小堀鷗一郎先生は、
死に正解はないとおっしゃいます。
糸井重里は、
死を考えることは生を考えることと言います。



みずからの死、身近な人の死にたいして、
みなさんはどう思っていますか。
のぞみは、ありますか。
知りたいです。
みなさんのこれまでの経験や考えていることを募って
ご紹介していくコンテンツを開きます。
どうぞお寄せください。
画像
※投稿は匿名で掲載します。
ご指定のない場合はこちらでイニシャルに変更します。
投稿は掲載する際に編集する場合があります。
いただいたメールの著作権は、
ほぼ日に譲渡されたものとします。



illustration:綱田康平
016 どんなふうにさよならできたらうれしいか、答えは出ない。
画像
もうずいぶん前、30代のはじめに
私は癌に罹りました。



手術をするために入院した初日、
同室となったSさんは
「私もできたから大丈夫」と
笑いながら術後の経過を教えてくれました。



それから私たちは、
ぬいぐるみを貸して励ましあったり、
パジャマのファッションショーをしたり、
体さえつらくなければ
合宿のような日々を送りました。



Sさんとは退院後も会いつづけ、
5年ほど経った春のある日に
彼女は突然、旅立ちました。



「近いうちに歩けなくなるかもしれません」と
医師に言われた彼女は、
「そうなったら1階に引っ越さなきゃなー」と
言っていたそうです。
最後までひとりでなんとかしようとして、
いつでも楽しいことを考えようとして。



このあいだ部屋の掃除をしていたら、
病室でやっていた「数独」にSさんが
大きい花丸をつけてくれた紙がでてきました。
Sさんのことを想うとき、
じぶんの死が怖くなったとき、
いつも彼女が「私もできたから大丈夫」って
言ってくれる気がします。



癌になったことで、なんどもなんども
死のことを考えました。
友達も自分もいつ死ぬかわからない。
体が不調だらけだ。
生きているだけでうれしい。
生きてればどんなでもいいの?



でもどんな人でも同じなんだ。
コロナ禍であらためて私はそう思います。
みんな等しくいつ死ぬかわからない。
「あたりまえ」は簡単にうらがえる。



どんなふうにさよならできたらうれしいか、
考えても答えは出ないから、
そして思いどおりにもならないから、
一生迷いながら揺れていたいと思います。
いまを一生懸命に味わっていようと思います。
きっと先に亡くなった人たちみんなが
「大丈夫だよ」って応援して
見守ってくれているはず。



(V子)
2020-11-25-WED
小堀鷗一郎さんと糸井重里の対話が本になります。


「死とちゃんと手をつなげたら、
今を生きることにつながる。」
画像
『いつか来る死』
小堀鷗一郎 糸井重里 著

幡野広志 写真

名久井直子 ブックデザイン

崎谷実穂 構成

マガジンハウス 発行

2020年11月12日発売


発行を記念して、
オンラインのトークイベントを行います。



日時:11/25(水)19:00

全国の紀伊國屋書店と紀伊國屋WEBで
『いつか来る死』を
ご購入くださった方に
お申し込みいただけます。
(紀伊國屋書店の会員登録が必要となります)
申込方法や期間など、
くわしくはこちらをごらんください。
※お申し込み多数の場合は、抽選となります。