私は癌に罹りました。
手術をするために入院した初日、
同室となったSさんは
「私もできたから大丈夫」と
笑いながら術後の経過を教えてくれました。
それから私たちは、
ぬいぐるみを貸して励ましあったり、
パジャマのファッションショーをしたり、
体さえつらくなければ
合宿のような日々を送りました。
Sさんとは退院後も会いつづけ、
5年ほど経った春のある日に
彼女は突然、旅立ちました。
「近いうちに歩けなくなるかもしれません」と
医師に言われた彼女は、
「そうなったら1階に引っ越さなきゃなー」と
言っていたそうです。
最後までひとりでなんとかしようとして、
いつでも楽しいことを考えようとして。
このあいだ部屋の掃除をしていたら、
病室でやっていた「数独」にSさんが
大きい花丸をつけてくれた紙がでてきました。
Sさんのことを想うとき、
じぶんの死が怖くなったとき、
いつも彼女が「私もできたから大丈夫」って
言ってくれる気がします。
癌になったことで、なんどもなんども
死のことを考えました。
友達も自分もいつ死ぬかわからない。
体が不調だらけだ。
生きているだけでうれしい。
生きてればどんなでもいいの?
でもどんな人でも同じなんだ。
コロナ禍であらためて私はそう思います。
みんな等しくいつ死ぬかわからない。
「あたりまえ」は簡単にうらがえる。
どんなふうにさよならできたらうれしいか、
考えても答えは出ないから、
そして思いどおりにもならないから、
一生迷いながら揺れていたいと思います。
いまを一生懸命に味わっていようと思います。
きっと先に亡くなった人たちみんなが
「大丈夫だよ」って応援して
見守ってくれているはず。
(V子)