第5回
新井さんの船。

SWITCH編集部をあとにして、
階段をのぼり、
我々は3階に向かいました。

3階には、年3回発行の雑誌、
CoyoteとMONKEYの編集部があります。
Coyote編集の足立さんと
デザイナーの宮古さんの机があるフロアです。

──
Coyoteは新井編集長と足立さんが
おふたりで編集をなさってるんですよね。
ここで1回だけ言いますけど‥‥
足立さんってすごい人なんです。
アウトプットがものすごく多いのに
めちゃくちゃ元気です。
足立
いや、みなさんも、こんな感じですよね?
──
足立さん、休んでるんですか?
足立
休んでますよ。
週末はサウナに行ってます。

▲シャイでぜんぜんこっちを見てくれない足立さん。

──
足立さんはいつも
お仕事の手が止まりませんね。
足立
ぜひとも宮古の話を訊いてください。
宮古はこのあいだの会議でいなかったから‥‥。
──
デザイナーの宮古さん。
CoyoteとMONKEYを2冊、おひとりで
デザインされているという‥‥。

▲宮古さん。

宮古
はい。
──
おひとりで。
宮古
ええ。
──
‥‥風邪ひいてられないですね。
宮古
はい、ちょっとひいてしまいましたが、
ほんとうはひいてられないです(笑)。
──
Coyoteに関わって、
いまで何年くらいですか?
宮古
ほぼ10年です。

▲Coyoteはこの3人の手から生まれます。

新井
宮古の師匠は緒方修一さんでね、
実はCoyoteは
緒方くんといっしょに創刊したんですよ。
緒方くんって、
文字組みがものすごくきれいなんです。
書籍の装丁家としてもほんとうにすばらしく、
デザインが美しい。
ぼくは彼のデザインにとても惚れているんですが、
やっぱり、例のごとく、バチバチと、やりあいまして。
──
で‥‥‥‥いまはここに、
宮古さんがいらっしゃる、
ということなんですね。
新井
そうそう、すごく端折りましたけど(笑)、
緒方くんの薫陶を受けていた宮古に話をして、
CoyoteとMONKEYを
担当してもらうことにしました。
CoyoteもMONKEYも
文字組みの美しさがとても重要です。
特にMONKEYは、作品世界を
そのままきちっと出したいという思いがあるから。
──
このまえ私が、MONKEYの編集会議に
おじゃましたときは
宮古さんはいらっしゃらなかったんですけれども。

▲MONKEY編集会議。

新井
残念ながら風邪だったんです。
──
あのときみなさんに
「今日は宮古節が聞けなくて残念ですね」
と言われたんです。
新井
そうですね、宮古はあの会議で、
デザイナーとして、
掲載作品に合う世界観のビジュアルを
いつも提案するんですよ。
宮古
CoyoteとMONKEY、こうして両方やってるので、
それぞれの雑誌にとって何がいいのか、
こういうビジュアルにしたいな、
という考えがつねにあります。
ですから「この作品を掲載したい」と、
写真や絵、いろんなものを
会議でどんどん提案していきます。
新井
それいいね、違うね、というやりとりを、
編集とデザインが
こうして近くにいるとできます。
編集同士でも、近くにいれば
しょっちゅう話し合えますよね。
文学のこととか、
足立はいろいろぼくに教えてくれるんですよ。
MONKEYで、かなり頼りにしています。
──
能力のあるみなさんが、信頼できる関係を結んで
月ごとにいろんなことに挑んでいらっしゃる、
ということがわかってきました‥‥そういえば、
下のカフェの
Rainy Dayの小田さんも
もともとは新井さんが通っていたカフェに
お勤めだったんですよね。

Rainy Dayでは定期的にイベントも行われています。
この日は大坊珈琲店の「COFFEE HOUR」で大盛況。

新井
日頃から、彼女のつくるもの、接客、
とてもすばらしいと思っていたので、
「こういうカフェを開くから、やらない?」
って、スカウトしました。
当時はブックカフェなんて日本になかったから、
ニューヨークまで行って勉強してくれました。
──
カメラマンの方もそうですし、
新井さんは「この人だ」と思われたら
さっと声をおかけになりますね。
編集部の方々がおっしゃっていた
「個人プレー」の話のように、
能力のある人を発掘し、ちからを引き出す、
ということを新井さんは経営者として
なさっているのですね。

▲Coyote編集部とほぼ日編集部。

▲CoyoteとMONKEY編集室の隣の部屋には経理の方がいらっしゃいました。
「この会社でいちばん重要な人」と新井さんはおっしゃっていました。

新井さんは最後に、私たちを
屋上に案内してくださいました。
そこからは、東京タワーが見えました。
「東京っぽい!」と誰かが感激して叫んでいました。
SWITCHのみなさんは、ここでロケをしたり、
ごはんを食べることもあるのだそうです。

新井さんが言っていた、
「泥舟」の意味が、ようやく
腑に落ちてきた気がしました。

チームプレーは
個人プレーの組み合わせである。
みんなで大きな船に乗っているつもりになっていても、
それぞれの人たちが狩りに行くときは
定員1名の泥舟に乗ります。

孤独だし、迷うし、海は荒いし、
誰も教えても助けてもくれません。
でも、その泥舟に乗っている者だけが味わう
アドベンチャーがあります。
そしてその空気をそのまま、読者は
胸に吸い込むことができます。

泥舟は、息絶えることなく、
みんなの待っている大きな船に戻って
1冊の号をつくりあげる。
SWITCHはそういう船でした。

SWITCHに特集してもらった
「ほぼ糸井重里」号は
2月20日(月)から本屋さんに並びます。
それに先立ち、2月18日(土)からは、
TOBICHI2で特典つき先行販売会
「あふれたこと展」が行われます。

ぜひ、ぜひぜひ、お手に取ってみてください。

「ほぼ日編集部SWITCHに行く」は
これでおしまいです。
ありがとうございました。
私たちもがんばります。

▲ほぼ日の田口が取材後に描いたSWITCH全体構造図メモ。

 
(おしまい)
2017-02-17 (FRI)