前編:サウナの原点。

9月末、一同はサウナを体験すべく
気仙沼に集合しました。
メンバーは、「Coyote」編集部のみなさん、
写真家の池田晶紀さん、
サウナ施設「ウェルビー」を経営する
米田行孝さんと和田さん、
糸井重里と「ほぼ日」乗組員です。

移動式サウナ「サウナトースター」は
いつもは長野県のサウナ施設
「フィンランドヴィレッジ」にあるのですが、
米田さんと和田さんが
気仙沼まで運んで来てくださいました。

池田さんいわく、
サウナの本場フィンランドでは
身体をあたためた後、冷たい湖や海に浸かり、
自然の風を浴びながら休憩するそうで、
それがとっても気持ちいいのだとか。
せっかくなら本場に倣って
海辺でサウナを体験したい!
というわけで、気仙沼市唐桑町の海のそばで
民宿「つなかん」を営む、一代(いちよ)さん※にお願いし、
「つなかん」の漁船が停まる海辺に
サウナトースターを置かせていただくことになりました。

(※菅野一代さん。唐桑町で牡蠣と帆立の養殖業を営んでいます。
 震災後、2013年に民宿「つなかん」をオープン。
 ほぼ日では「牡蠣の一代さん」でおなじみです)

▲一代さん。太陽のように明るい方です。「来てくれて、すっごくうれしい!」糸井と再会を喜びあいます。
▲用意してくださった昼食をいただきながら、気仙沼の近況をうかがいます。
▲「つなかん」の漁船が停まる鮪立(しびたち)湾に、サウナトースターを置かせていただきました。

(みんなでサウナトースターを見ながら)

池田
これが、米田さんに
長野県から引っ張ってきてもらった
サウナトースターです。
ここまでどれくらいかかりました?
米田
11時間です。
ぼくらは普段名古屋にいるんですけど、
このサウナトースターは
長野に置いてあるんで、そこから牽引してきました。
▲移動するときは、車に接続して引っ張ります。
糸井
すごいですね。
下手したら、来年になっちゃいますね。
池田
危なかったです(笑)。
では、あらためて紹介をさせてください。
ウェルビーというサウナ施設を名古屋で経営している
米田さんと、スタッフの和田さんです。
糸井
ああ、ウェルビー、知ってますよ。
テレビで見たのかな。
▲左から糸井、ウェルビーの米田さんと和田さん、写真家の池田さん。落合にある東北ツリーハウス観光協会のツリーハウス「No.005 MERRY」の前で記念撮影!
池田
米田さんは東日本大震災のときに
テント式のサウナを気仙沼に持って来た方です。
米田
はい。
ぼくが理事を務めている日本サウナ・スパ協会に、
気仙沼で被災した方から、
震災後サウナに入れなくなって困っている、
という連絡があったんです。
それで、急いでテントサウナを持って行って、
避難場所に設置して、二年ほど使っていただきました。
でもテントサウナは建てるのに時間がかかるので、
他に何かないかなと考えていたら、
池田さんから移動式サウナというものがあると教えてもらって、
このサウナトースターを作ることになったんです。
熊本地震のときは、サウナトースターを熊本に運んで、
ボランティアさんたちに使ってもらいました。
糸井
このサウナトースターは何を
エネルギーにしているんですか?
米田
薪です。
牽引しているときは煙突を外してるんですけど、
着いたら煙突をつけて焚きます。
▲取り外し可能な煙突。
糸井
なるほど。
入るときは前の日から
ガンガンに焚いておくんですか?
米田
いえいえ、すぐできます。
30分もあれば焚けるんで。
糸井
すごい、ピザより早いですね(笑)。
これ、欲しいという人もいるでしょう?
米田
ええ、いると思います。
でも日本にまだこれ1台しかないんですよ。
外側はあるんですけど、
内側をサウナ用に改造したものはこれだけなんです。
▲車体の外装デザインは池田さんが手がけたそう。
池田
米田さんは、本場のサウナを
もう一度輸入し直す活動をしているんですよ。
糸井
それは、ぼくらが知っているサウナと
どう違うんですか?
米田
日本のサウナって、
煌々と灯りがついていて、室内にテレビがあって、
男性たちが仕事終わりにお酒を飲んだ後、
汗を流してそのまま寝る場所、
というイメージがありますよね。

でも、サウナ発祥の地、フィンランドでは、
湖の周辺や海辺にサウナがあって、
自然を感じながら薄明かりの中で入る、
とても神聖な空間なんです。
日本に本格的にサウナが入ってきたのは
東京オリンピックの後と言われていますが、
高度経済成長とともにサウナが
日本独自のスタイルで進化していったんですね。
うちは60年以上サウナを経営しているんですけど、
数年前にはじめてフィンランドで
サウナを体験したときに、もうびっくりして、
日本のサウナをおじさんのためだけの場所に
してしまっていたことを反省しました。
サウナの原点に戻らないといけないなと思ったんです。
糸井
実際に経営されているサウナも、
そういうふうに変わってきているんですか。
米田
全部ではないですけど、
だんだんそういう風になってきていますね。
糸井
そういえば、
昔、サウナでみうらじゅんが
ぼくと間違って
刺青のある人に話しかけちゃったことがあります。
「あの、こないだねぇ!」なんて(笑)。
一同
(笑)
糸井
サウナって、行こうとする人と、
行かない人がいるのはなんででしょうね。
やっぱり「我慢するもの」というイメージがあるからかな。
池田
そうですね。
実はぼくもサウナが苦手だったんです。
水風呂なんて拷問だと思ってました。
でも、あるとき漫画家で、
サウナ大使でもあるタナカカツキさんに
入り方を教えてもらったんですよ。
冷たい水も、最初だけ我慢したら、
徐々に慣れてくるし、
冷たくないと思える瞬間がくるんです。
糸井
うちの奥さんは、
個人で使うサウナを持っていましたよ。
池田
ああ、理想ですね。
糸井
でも、飽きるって言ってました。
狭いし、一人で入っていても寂しいらしい(笑)。
一同
(笑)
糸井
だいたいの、「いいね」って言われることって
時間が経つと寂しくなることが多いんです。
「海の側に家があるといいな。
 いつも海の音が聴こえてくるし」
って言ってても、
実際に住んでしばらくすると、
「やっぱり海の音は寂しくて怖い」ってなるように(笑)。
ぼくはよく例に出すんだけど、
マイケル・ジャクソンがネバーランドという
遊園地を自宅に作っていたじゃない。
あれも、誰も来なかったら寂しいだけですよね。
結局、ぐるぐる回る遊具があるより、
友達が来てくれる方がうれしい。
そういうサウナができるといいですよね。
米田
はい。
本来、サウナは人を繋げる場なんですよ。
被災地にサウナを持って行ってわかったんですが、
薪を燃やしていると、
みんなが集まってきて、自然と会話が生まれるんです。
糸井
ああ、サウナには焚き火の良さもありますね。

(後編につづきます。
実際にサウナを体験しますよー。)