第4回
つまらないのは嫌だ。

会議室でたっぷりと
SWITCH編集部のみなさんの
お話をうかがった我々は、
編集部みなさんの「机」がある部屋、
編集室のフロアに向かいました。

そこには、販売、営業、そして
SWITCHの誌面デザインを担当する方々の
机もありました。

ついたてがないフロアに
SWITCHを動かすいろんな人たちが
入り混じっている‥‥。
ほぼ日に似ているな、と思いました。

私たちは、みなさんにごあいさつしながら、
部屋のコーナーに陣取る
デザイナーの船引さんと藤木さんに
お話をうかがううことにしました。

▲船引さん、藤木さん。

雑誌のエディトリアルデザインは、
自社デザイナーがやる場合もあれば、
外部のデザイン事務所やグループ会社に
発注することもあります。
SWITCHは、自社のデザイナーが行います。
一方ほぼ日は、コンテンツに関しては原則的に
自社デザイナーが画面を組みますので、
「編集とデザインの連携のしかたや関係」が、
この点では同じです。

▲興味津々のほぼ日デザイン部。

──
船引さんと藤木さんが、
SWITCHのデザインを
なさっていると聞きました。
ここにうかがう前、糸井から、
このおふたりがほんとうにえらいんだよ、と
教わりまして。
船引
いえいえいえいえ。
──
猪野さんたちが
うちのグッズチームの取材に来てくださったときに、
写真と活字で組まれた
「ページのダミー」ができていたのに
びっくりしたんです。
「ああ、こういうページになるんだ」
ということが、私たちにもわかりやすかった。
連携の速さが、すごいですね。

▲取材時に見せてもらった「ページのダミー」

船引
イメージ先行させて作ることはよくあります。
あのページについては編集の猪野が主導で、
「こういうものにしたい」という
具体的なアイデアが先にありました。

▲猪野さんのページラフ。

──
たとえば今回、
糸井とほぼ日の特集をやるというお話が、
おそらく編集からあったと思うんです。
SWITCHのデザインは、スピード感はあっても、
「パッと言われてパッと出した」
という印象がないんです。
特集をデザインする際、
どこまで内容を理解して取り組まれるのでしょうか。
このスピードだと、資料を読み込んでいる時間が
あまりない気がするんですが。
船引
それはたぶん、
何回もやってるからだと思います。
──
何回も。
船引
最初は私たちも
「編集はいったいなに言ってるんだろう?」
という感じなんです(笑)。
でも、何回かページのイメージを作って
やりとりしていくと、
「たぶんこういうことが言いたいんだろうな」
ということがわかります。
まぁ、ラフをちゃんと書いてくれたら
いいんですけれども、
毎回こんなにちゃんと書いてくれないから。
──
ページ数くらいしかわからない
ラフもある感じですが‥‥。
船引
でも、だいたいのところを
書いてくれるだけでありがたいんですよ。
──
1冊のデザインを、
だいたいどれくらいのスパンで作るんですか?
船引
毎月1冊なんで、
1か月で作ります。
でもまぁ、作業はいろいろとかぶってくるので、
校了期間中に次の号のラフを
作らなきゃいけないことも多いです。
前の号と次の号の作業の重なりはありますが、
やっぱり月刊誌なので1か月単位です。
──
でも、ギリギリに取材、
なんてこともたぶん‥‥。
船引
メッチャありますね。
月末の取材なんていうのは最低だと思いますね(笑)。
──
よく続きますね、気力と体力が。
船引
そうですよね。
あ‥‥私がですか?
──
はい。
船引
慣れてきました(笑)。
──
SWITCHの場合、デザイナーは企画の
どの段階から入っていくんですか?
船引
号によって違いますし、
編集担当によっても違います。
新井はどちらかというと、すべて決めてきて、
撮影も終わっている、というパターンが
わりと多いかな。
でも、最初から打ち合わせに参加することもあるので、
ほんとうに毎回違います。
──
どっちが好きとか、ありますか?
船引
どっちもあるから、
飽きないんじゃないでしょうか。
自分が参加して作ることに
おもしろみを感じることもあるし、
素材を見て「おもしろいものが来た!」と
うれしくなることもあります。
すべて企画段階から入ることになったら、
体力が続かないという気もする(笑)。
両方あるから続けていける、という感じです。
──
さまざまな特集があって、
どの号もすごく毛色が違う人が出てきますが、
雑誌としてのデザイン的な一貫性は
あるのでしょうか。
船引
けっこうバラついています。
たとえば今回の糸井さんの号と
前回のSuchmosの号では、
読む人がぜんぜんちがうだろうし。
「読む人はどのあたりの人たちだろう?」と
想像しながらデザインをするので、
逆に、同じにはせず、毎回変えます。
──
読者層は毎回変わるんですね。
誰の特集をするかによって
デザインの感じを変えていくんだなぁ‥‥。
船引
デザインも、文字組みも、書体も、ぜんぶ変えます。
自分で「こりゃ大変かな」って
思いながら‥‥結局やっちゃってます。
特集によってほんとうに読者の幅が広くなるので、
「なんの雑誌だ?」というくらい、
いろいろ変えてます。
──
特集する人をつかんで、
編集の表現したいことをつかんで、
読者層をつかむ‥‥。
デザインしながらの勉強が毎回たいへんですね。
藤木
アーティストさんだと、まずは楽曲を聴いたりします。
特集や対談は、
船引が主軸になって作っていて、
「こういう素材を集めてほしい」と頼まれますので、
私はそれをネットで検索していくうちに
くわしくなっていきます(笑)。
──
今回の特集のデザインがどうなるのか
とてもたのしみです。
自分たちが毎日ディスプレイで見ている
ほぼ日のイメージがずっと頭にあるから、
SWITCHさんが
どうとらえてくださったのかを見たい。
船引
ほぼ日を好きな人が
買ってくださるんだろうなという想像もできるから、
ほぼ日のテイストももちろん出したいし、でも、
「SWITCHだから」という見え方も
したいと思っています。
でも‥‥今回の特集は私がSWITCHに入って
最多の原稿の量なんです。
──
あぁ、たしかにすごい量ですよね。
船引
私は雑誌をビジュアルメインで
「見る」ほうが好きなんです。
今回の原稿は相当量ありますけれども、
読んだら読んだでやっぱりおもしろい。
どうやったらみなさんが読んでくれるのかな、
というところで、今回はすごく悩んでいます。
だから、資料があったほうが
おもしろく感じるだろうな、というページには
どんどん資料を用意して、
入れていこうと思っています。
──
資料ですか?
船引
たとえばそこに、マンガをいっぱい集めています。

▲誌面に入る資料を集めている。

──
ああ、マンガ対談の!
船引
文字だけでぐいぐい読ませるのは
無理だろうと思うので、
あそこのページはこの資料を入れていきます。
私はつい、画をメインに考えてしまいますが、
私のただの「見た目」で
原稿を削ってしまうことはよくないです。
だから、特集の中で、
「ここにこういうものが入ったらいいんじゃないか」
ということを編集に話したりします。
──
それが後で自分の首を絞めることになろうとも‥‥。
船引
そうですね。
それで、結局は自分が大変になるんですけど(笑)、
「なんかつまんないなぁ」と思って
デザインするのは、やっぱり嫌です。
口で言っても伝わらないことがあるので、
ラフイメージを実際に作って提案することもあります。
編集のみんなに「乗って」もらうために、
ラフを作るんです。
──
編集への提案もいっぱいあって、
コミュニケーションがすばらしいですね。
編集部のみなさんはどこに座ってるんですか?
船引
編集の人の席はすぐそこです。
そこが猪野で、その横が菅原で、
こっちがわに板子と槇野がいます。
──
ほんとうに近いですね。
船引
そうなんです。
編集部とわかれて
3階にいる時期があったんですが、
それじゃやりづらいから2階に降りました。
そうすると、ぜんぶがつつ抜けです。
──
近いから、しょっちゅうしゃべれますね。
船引
あんまりしゃべりたくないときとかも(笑)。
──
隣ではない、微妙な距離感で(笑)。
SWITCHをデザインしていて、
新井編集長が重視していらっしゃることを
ひとつ挙げるとしたら、なんでしょうか。
船引
新井が言うのは、「強さ」です。
──
強さ?
船引
好みとして、ですが、
新井は弱いのは嫌いだと思います。
特に、写真の強さは重要です。
──
ああ、なるほど。
「SWITCHっぽい」というイメージがあるけど
それはなんだろうな、と
ずっと思っていたんです。
たしかに強さはキーワードですね。

▲SWITCHデザイン部のみなさんとほぼ日デザイン部。

 
(つづきます)
2017-02-16 (THU)