Hobonichi Striped-T Institute

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轟木さんがつくる「スマートボーダー」は、
「見ためがっしり、着たら気持ちいい」。
この一見すれば相反するような
理想的な素材を見つけることこそ、
「スマートボーダー」の一番の課題といえます。


こちらも、「E project」と同じく、
名古屋紡績さんにまず相談することにしました。
「見ためがっしり、着たら気持ちがいい」に、
どうやったらできますか?


「それはまた、
 難しいことをおっしゃいますね(笑)。」
担当者の奥田さん、思わず苦笑しています。


やっぱり、むずかしいですよね‥‥。
でも、なんとか実現したいんです!


「まず、『見ためがっしり』のキモは、
 『ヒキソロエ』でしょうね」


ヒキソロエ?


「そう、2本の糸を撚らずに平行に並べて、
 1本の糸として編むんです」


あっ、「引き揃え」かあ!
「引き揃え」すると、何がいいんでしょうか?


「糸を引き揃えることによって、
 倍の太さで編まれることになって、
 まず生地がぶ厚くなるんです。
 さらにそれを生地洗いすると、
 編み地がぎゅっと詰まって、がっしり仕上がるんです」



なるほど、そんな方法があるんですね!


ちょうどいい生地の厚みとがっしり感の
バランスを探った結果、
轟木さんがえらんだ糸の太さは
偶然にも、井伊さんと同じ「16番」。
つまり、「16番引き揃え」でいくことになりました。


「ただ、この生地はどっちかというと、
 ざっくりした肌ざわりなので、
 轟木さんのおっしゃる『気持ちいい』とは、
 ちがう素材感だという気がしますね」
と、奥田さん。


そうか、やっぱり両立はむずかしいのかな‥‥。
あ、轟木さん、なにかアイデアが?


「はい、考えてきたことがありまして。
 表地と裏地を変えるのは、どうでしょうか?
 例えば、愛用しているインナーウェアで
 表地がオーガニックコットンで裏地がシルクのものがあって、
 肌触りがとても良いのです。
 そんなボーダーシャツがあったら幸せだなあ」


なるほど、それはたしかによさそうです。
でも、シルクだと、
かなりいいお値段になってしまいそうなことが、
ちょっと懸念されます‥‥。


「それに、その生地をちゃんと開発するには、
 かなり時間が必要になると思います。」
と、奥田さんもやや渋い表情。



「残念、、
 では!『ウラキモウ』はどうでしょうか?」


ウラキモウ?


「そうそう、生地の裏側をうんと起毛して、着心地よく。
『ほぼ日』さんのTシャツでも起毛もの作っていらっしゃいましたよね?」


ああ、「裏起毛」ですね!
はい、それならやれそうな気がします。
奥田さん、どうですか?


「まったく問題ありません。
 裏起毛っていうのは、要するに生地を引っ掻くので、
 生地を傷めるという弱点があるんですが、
 引き揃えでがっちり編まれた生地なら、
 かなり起毛させても、だいじょうぶだと思います」


いいですね。
轟木さん、どうでしょう、やってみましょうか。


「ぜひ、それを試させてください!
 見かけタフ、袖を通した時に優しいが実現しそうで
 うれしいです。」


わたしたちもうれしいです!
「スマートボーダー」、一番の難関を乗り越えて、
ひとまず大きく一歩前進しました。


次は、デザインについて
轟木さんの構想を詳しくうかがいます!


轟木 節子(とどろき・せつこ)

スタイリスト。
1972年、熊本生まれ。
ファッション誌、カルチャー誌、広告などで幅広く活躍。
シンプルな中にスパイスの効いた、
独自の空気感が漂うスタイリングが人気。
ナチュラル志向なライフスタイルも注目されている。
モデル・女優の今宿麻美さんのフォトエッセイ
『HEART BALANCE』(双葉社刊)で
フォトグラファーとしてもデビュー。
日々のスタイリングのヒントがつまった
『毎日のナチュラルおしゃれ
着こなし手帖』
が発売中。

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