Hobonichi Striped-T Institute

content:

ボーダーのピッチが決まったら、
こんどは素材を決めていきます。


井伊さん、生地の感じとか、着ごこちとか、
肌ざわりとかについて、何か思うところはありますか?


座談会で尾崎さんに
 見せてもらったボーダーシャツはどれも、
 何度も洗って肌になじんだ風合いになっていて、
 あの感じ、いいなと思いました。」


なるほど、「こなれた感」とでもいうんでしょうか。


「そうですね。そういう感じが、
 はじめからあるとうれしいと思うんです。
 『オーシバル』や『セントジェームス』などの
 老舗のボーダーシャツのような、
 しっかりした感じはありつつ、
 もうすこしやわらかい素材にしたいです。」


たしかに、はじめから肌になじむ感じって、いいですよね。
でも、どういう素材をえらべばいいんでしょう?


ここはプロに相談するのが早いということで、
尾崎さんにお借りしたボーダーシャツを手に、
いつも「ほぼ日」の着るものづくりでお世話になっている、
名古屋紡績さんにおじゃましました。



「このボーダーシャツの厚さや、
 やわらかさの感じがイメージに近いんです。」
という井伊さんのリクエストに、
名古屋紡績の担当者、奥田さんが、
考え考え、こう答えてくれました。


「なるほど‥‥。
 まず、お持ちいただいたTシャツは
 けっこう洗っていらっしゃるので、
 生地自体がやせてきていて、
 それでこの厚さ、やわらかさになっています。
 長い時間が経ってこの感じになるようにするよりも、
 今回は糸の太さを調節したり『製品洗い』をかけることで
 近づけるのがいいんじゃないでしょうか」


「製品洗い」とは、ボーダーシャツが縫い上がったあとに
製品をまるごと洗うこと。
この工程をはさむことで、
新品ならではのバリッとした雰囲気がやわらいで、
すこしやわらかい風合いになります。
「製品洗い」、工程に加えましょう。


糸の太さは「番手」といい、
数字が大きくなるほど、糸は細くなります。
また、1本の糸でつくる「単糸(たんし)」、
2本の単糸を撚りあわせた「双糸(そうし)」など、
糸のつかいかたによっても、太さは変わります。
(たとえば10番単糸と20番双糸はおなじ太さです)
一般に、単糸はざっくり、
双糸はなめらかな肌ざわりになります。


18番単糸、16番単糸、20番双糸など、
さまざまな番手の編み地サンプルを、
ひとつひとつ、手で確認していきます。



そんなふうにして検討した結果、
たどり着いたのは、「16番単糸」。


井伊さん、素材えらびをやってみて、いかがでしたか?


「編み地や糸のちがいなんて、
 そんなに意識したことなかったんですけれど、
 16番単糸の編み地を洗ったものが、
 イメージと近いような気がしました。
 実際に触ってみてわかったのですが、
 編み目をわりとはっきり感じるものと
 そうでないものがありますよね。
 できれば、編み目は感じずに、
 サラッと着れるような生地がいいです。」


なるほど、そのへんは、プロにおまかせしましょう。
奥田さん、どうぞ、よろしくお願いします!


素材が決まったので、糸の手配をしつつ、
染色した糸のテスト結果を待ちます。
生地を編むうえで決めなければならないことは
ひとまずここで一段落。


次は、実際にどんなデザインにするのか、
決めていきます!


井伊 百合子(いい・ゆりこ)

スタイリスト。
東京生まれ。
2004年文化服装学院アパレルデザイン科
メンズデザインコース卒業。
在学中よりスタイリスト ソニア パーク氏に師事。
2008年独立。
現在、「GINZA」や「装苑」などの雑誌や広告等、
幅広い媒体で活躍する人気スタイリスト。
「実際に使える」ことが、しっかりと考えられている、
ナチュラルで上品なスタイリングを得意としている。

閉じる