ほぼ日酒店 YOI
HOBONICHI
PUCHI PUCHI WA-SAN-BONはこんなワイン。
[2]遅桜
大山圭太郎さんインタビュー
「これは、幸せなワインです」
「ほぼ日」とドメーヌ・ヒデをつなげてくださったのが、
西麻布の日本ワインショップ「遅桜」(おそざくら)の
ソムリエ・大山圭太郎さん。
できあがったばかりの
「PUCHI PUCHI WA-SAN-BON」を持って伺い、
その印象をおききしました。
先に言っちゃうと、「うーんと褒められました」! 
そのようす、どうぞごらんください。

●開けて、飲んでみました。

(開栓して、グラスにそそいで、匂いをかぎ)
ああ、おお! うん、なるほど。
(口に含み、呑み込んで)
‥‥なるほどね、すごいですね、これは。

ひとことで言うならば
「幸せなワイン」だなと感じます。
楽しいなかに大人らしさもあって、
エチケットの絵の弾んでる感じがぴったりですね。
多分、ひとりでかたむけるというよりは、
誰かと一緒にいるとき語れるワインですよね。
特別な日とか、大切な日、
それは自分にとってでもいいし、
友達や恋人や家族にとっての大切な日でもいいけれど、
そういう日に似合うワインだと思います。

──では、すこし具体的に、
ソムリエ的な解説をしましょうか。

飲んだ時ほんの少し感じる
和三盆や黒糖の甘味が特徴的です。
赤ワインの色は、赤紫やルビーレッドという
表現が多いんですけれども、
このワインは、それよりも深い、
やや濁りのある赤ですね。

この独特な香り、ちょっと甘いにおいは、
和三盆と黒糖から来るものですね。
酵母自体の香りが強いので、
それほど強く砂糖の香りが主張をすることはありませんが、
かすかに残るのを、皆さん、楽しめると思います。
そして、ヒデさんのワイナリーらしい、
自然で育てられたブドウ由来の香りが
きちんと入っていますよね。
野性味を帯びた香り、
野生の中で生きてきたベリー感が、
独立した、しっかりとした大人の印象で立っている。
その上で、ブルゴーニュやボルドー同様、
なめし皮、レザーの香りが入っています。
果物系では、ザクロの香り、
あと少し奥の方に、パイナップルと山査子の香りがします。
あとはチーズ、タバコの香り。
すごくリッチでいいですよね。
枯れ葉とか、セイロンティーの香りも入りますね。

そういう香りは、グラスに鼻を近づけたときよりも、
口に入れた瞬間にプラスワンされるものですね。
鼻を近づけた時点で多分、体はアロマを求める。
でも、嗅ぐよりも口の中に入れないと分からない。
そういう作りがヒデさんらしいですよ。
こういうワインって、
苦みが出がちになるんですけども、
それがなく、すごく丁寧に作られている印象です。
少し飲んだ後に口の中が乾いてザラザラする
タンニンの印象もしっかり残しつつ、
飲み込んだ後のアフターフレーバーが残る時間も
バランスがいいですね。

●泡をたのしむ。

注いでいる時に出る、ピンク色の泡! 
グラスに注いだ時に立ち上る泡の層って、
スパークリングワインを注いだ時の楽しみで、
シャンパンを注ぐと白い泡が出ます。
でもこんなふうにピンク色の泡が出ることって、
なかなかないんです。
ロゼのスパークリングワインでも白っぽいですから。

そもそも、赤いスパークリングワインというのは
世界でも珍しいんですよ。
元々、ヨーロッパはワインの製法に厳しい国、
地域が多いですから、
赤のスパークリングワインを作るところは
限られていたんです。
そんななか、赤のスパークリングワインで
流行をうんだのがオーストラリアです。
2010年くらいに世界の消費者の注目を浴び、
そこからフランスも少し法律を変えて、
ロワールをはじめ、赤のスパークリングを
オッケーにする法律ができたんですよ。
あとは、またタイプがちょっと違うんですが、
イタリアのエミリア=ロマーニャ州で作られる
ランブルスコも有名です。
ドイツでもゼクトっていうスパークリングワインがあり、
それも法律でいろいろ決められていて、
ぶどうの品種や製法にこまかな規定があります。

そんななかで、日本には「ワイン法」がなく、
酒税法のなかでつくられていますから、
逆に、自由なんですよ。
将来、日本で「ワイン法」ができた時には
いろいろ規制が敷かれるかもしれないけれど、
今は日本の醸造家の人たちが自由に
自分の作りたいワインを表現できる時代です。
そんななかで、ドメーヌ・ヒデがつくった
この赤のスパークリングワインって、
ほんとうに面白い存在だと感じます。

●こんなふうに注いで。

シャンパーニュだったら、泡立ちが細かく、
発泡性も強いので、ボトルから離して注いでも、
飲む時まで泡立ちがそんなに消えません。
口の中に感じるアタックも強いんですね。
そんなふうに遠めから注ぐのは、
表現としてもグラマラスですけども、
このワインに関しては、遠くから注いでしまうと、
飲むときの泡が少なくなってしまいます。
ピンクの泡がきれいだという気持ちとうらはらですが、
口の中に入れた時の感動を優先するには、
僕のおすすめはグラスの中にボトルの口が入るくらい
近づけて、そっと注ぐこと。
そうすると飲む時に泡立ちが楽しめますよ。
見た目の美しさに浮気しないで、
このボトルの中にある生きたワインを、
そのまま口の中に入れたい、
なるたけ空気に触れさせないで、
開けた瞬間に飲んで欲しい、
口の中にすぐ入れて欲しいです。

●すぐ開ける? それともとっておく?

12月に発売して、すぐに購入されたかたは、
この年末年始に飲もう、と思われるでしょうね。
出来立てのフレッシュさが素晴らしく、
たしかにホリデーシーズンに飲むのに
ぴったりの華やかさのあるワインですけれど、
いっぽうで「すぐには開けず、寝かせてみよう」と考える、
ワイン通のかたもいらっしゃると思うんです。

たしかにこのワインは寝かせることで変化が期待できる、
そんなロマンがあります。
もともとドメーヌ・ヒデのワインは
そういうところがありますし、
この味わいから察するに、そうだな、
2……せめて1年半くらい、
2023年の夏までは寝かせてみるのも
いいんじゃないかなって思います。
その時は、今見ている色よりも濃い、
もっと夕日のような色に
変わってるんじゃないかなと思います。
できれば、ですが、2本買われて、
1本はすぐに開け、
1本はとっておく。
そうすると「ワインが育つ」ことを経験できて、
すごく楽しいんじゃないかなって思います。

●どんなグラスで楽しもう?

ぜひ楽しんでもらいたいのはフルートグラスです。
最近は、遊びで、
スパークリングワインを
ブルゴーニュグラスで飲みましょうと、
生産者も言ったりしています。
それももちろんいいんですけれど、
フルートグラスも、すごくリッチですよ。
いいグラスで注ぐとまた。
同じフルートグラスでも、
ちょっと太った印象のもののほうが
僕はいいと思いますけれど。

おうちで飲まれるとき、そういうグラスがない、
ということもあるでしょうから、
そんなときは、ちょっと背の高いグラスでどうぞ。
いくつかグラスがあったら、入れてみて、
香りの違いを楽しんでみるのもおすすめです。
「こっちのほうが深く、重く感じる!」など、
意外な発見があるかもしれません。(談)

東京・西麻布の日本ワインの専門ショップ
「遅桜」でも、このワインを36本限定で販売します。
くわしくはショップにお問い合わせください。
●遅桜 http://osozakura.jp/

最近、ちょっと回復をしてきましたが、
ワイン業界はすごく厳しい状況です。
コロナ禍の影響は大きく、
これからどうなるかもまだ分からないんですけれども、
山梨、長野、北海道、いろんなところでワインを作ってる
日本中のワイナリーが、
事業的にはすごく厳しい、
厳しいを通り越して「やばい」という状況にあります。
それはワインだけじゃなく、
日本酒やビール業界もそうだと思いますし、
海外のお酒も同じだと思います。
お酒をつくる人だけじゃなく、運ぶ人、輸入する人も、
すごく厳しい状態ではある。

ただ、その人たちは厳しいながらに品質を落とさないで
素敵なワイン、素敵なお酒を造るように、
皆さん、頑張っています。
僕たちも同じで、いいお酒といいお食事、
その質を落とさないようにしなきゃ駄目だと、
日々、がんばっています。

だから、こういう素敵なワインを飲んだ時の
幸福感っていうのは、
「何倍」どころか「何乗」にもなる。
そんなふうに楽しんでもらえたらと思います。

うちのお店「遅桜」も
徐々にお客さまが戻ってきてくれました。
日本を応援するっていう気持ちでね、
日本ワインを楽しんでもらえたら
生産者のよろこびもひとしおだと思います。

「PUCHI PUCHI WA-SAN-BON」は、
遅桜でも販売をおこないます。
2階でお食事とワインを楽しんでいただけますから、
事前にご予約いただければ、
このワインと、
合う料理を準備しておきますよ。
どうぞ、よろしくおねがいします。

(遅桜・大山圭太郎さん談)

2021-12-14 TUE
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