「書く」って、なんだろう?
紙とペンがあればできる
シンプルな行為でありながら、
無数の可能性を秘めている。
「ほぼ日手帳マガジン」で
去年、多くのかたに読まれた
人気コンテンツがかえってきました。
日常的に「書く」ことと
深い関わりをお持ちのみなさん、
「書く」ってどんな行為ですか?

書くってなんだ?

ながしまひろみさん(2)
SEASON2 vol.1
ながしまひろみ

「描く」ことで、
どんどん元気になっていった。

シーズン2は、マンガ家でイラストレーターの
ながしまひろみさんのお話からはじまります。
「ほぼ日手帳2020」の説明書、
いくつもの書籍の装画、連載『鬼の子』、
モスバーガーのキャンペーンでのポスター作成など、
幅広くご活躍中のながしまさん。
絵の仕事を本格的にはじめたきっかけは、
「ほぼ日の塾」の自由課題として
オリジナルのマンガを描いたこと。
そのマンガはのちに「ほぼ日」の連載となり、
さらに単行本にもなりました。
ながしまさんにとっての
「書くってなんだ?」を聞きました。

プロフィールながしまひろみHiromi Nagashima

マンガやイラスト、絵本などを描く。
デザインの仕事をしながらマンガを描きはじめ、
2019年6月からフリーランスとして活動。

絵を仕事にするようになったきっかけは、
「ほぼ日の塾」の自由課題としてマンガを描いたこと。
現在、cakesでマンガ「鬼の子」を連載中。
著書に『やさしく、つよく、おもしろく。』(ほぼ日)、
2020年に発売したばかりの初めての絵本
『そらいろのてがみ』(岩崎書店)がある。

ホームページ
twitter@nagashitake
note@nagashitake

もくじ

「描く」ことのちから。

ーー
マンガって、何もないところから
新しいものを生み出す行為だと思うんですけど、
ながしまさんのマンガは
どんなふうに生まれているんでしょう?
ながしま
「ほぼ日の塾」で
『やさしく、つよく、おもしろく。』を描いたときは、
その少し前につらいことがあったんです。
だからほんとに
「乗り越えるために描いていた」感じでした。
でも、かなりズドーーンみたいな感じ
だったんですけど、描くうちに自分が
どんどん元気になっていったんです。
ーー
すごい。描くことのちからだ。
ながしま
そうですね。
ーー
つらかった出来事と描いたマンガの中身は
リンクしてるんですか?
ながしま
リンクしてます。
でも自分にこどもはいないし、
ウソも混じってるし、という感じ。
ーー
他の作品の場合が生まれるときも同じ感覚?
ながしま
連載の『鬼の子』の場合は、100%自分というより、
もっと読んでくれる人のことを考えてますね。
自分の気持ちも入るんですけど、それよりも
「こうしたら、みんなが面白いと
思ってくれるんじゃないかな」
とか工夫をしながら、担当さんと作ってる感じです。
ーー
描いていて、
「読んでる人に伝わったな」みたいな
手応えはありますか?
ながしま
言い方が難しいですけど
「これ、自分も感じたことがあるかも」という思いを
うまいことマンガに入れ込めると、
良いことが多い気がします。
これは、別のマンガ編集者さんに聞いたんですけど、
ほかのマンガ家さんもそうらしいです。
ーー
自分の感情をうまく入れ込めると、
いい作品になりやすい?
ながしま
ええ。たとえば、主人公が
「オレはもう絶対負けねえぞ!」と言ってる
少年マンガがあるんですけど、
それは作家さん自身が、仕事で崖っぷちのときに
「再起をかけてもう1回がんばるぞ!」と
書いたものらしいんです。
そういう、自分の感情とリンクしてることを
書いたほうが、絶対に伝わる。
わたしもそれを聞いてから「ほんとにそうだ」と思って、
自分が描くときにも
そういう部分を大事にするようにしています。
ーー
そういうものですか。面白いです。
ながしま
あと、昨日片付けてたら、
昔描いたマンガが出てきたんです。
ーー
たまごちゃん。
(パラパラとめくって)おもしろい。
おもしろいんですけど
‥‥かなり激しめのサブカル系(笑)。
ながしま
ヤバいですよね。
でも会社で、すごく評判が良かったんです。
ーー
なにかのプロモーション用のマンガですか?
ながしま
いえ、前にいた会社で
「みんなでグループ展を開こう」みたいなことが
あったんです。
それで描いてみたら、意外と描けたんです。
若かったので中身は激しいんですけど、
絵柄は自分のなかではあまり変わってない。
セリフとかは恥ずかしくて、
もう見せられないですけど(笑)。
ーー
(中を見ながら)どんどん読んじゃう。
ながしま
けっこう評判がよくて、すごく嬉しかったんです。
オチがハートフルなので、
「よかった、泣いたよー」とかみんな言ってくれて。
会社のコピー機でたくさん刷って配りました。
ーー
じゃあ「ほぼ日の塾」でマンガを
描くことにしたのも、この経験があったから?
ながしま
それはありますね。
このときに楽しかったのを覚えてたんです。
ーー
マンガはその前から描いていたんですか?
ながしま
全然描いてないんです。その前も、その後も。
ずっと描いてなかったのに、
「ほぼ日の塾」でいきなり描きました。
糸井さんの「やさしく、つよく、おもしろく。」という
ことば自体が好きだったので
「これで何か描けないかな」と思いついて。
ーー
急に描いたら、すごくいいものができて。
さらに連載まではじまって。
ながしま
それもたまたまです。
「ほぼ日の塾」が終わったあとで、
個人的に続きを描きたくなって
「著作権とかどうなるんだろう?」と問い合わせたら、
ほぼ日のかたから「連載しませんか」と
言っていただいたんです。
だから「ええ? ‥‥ラッキー!」みたいな感じ(笑)。
ーー
わ、そういう感じですか(笑)。
魅力的な作品は、勝手に状況が転がっていくんですね。
ながしまさんの今後も予定ってありますか?
ながしま
直近では、短編のマンガを
いろいろ描いてみたいと思ってて、
それを「コミティア」という同人誌即売会で
出そうとしています。
あと、2月に絵本が出ます。
『そらいろのてがみ』というんですけど。
ーー
なんと絵本まで。
またいろいろと広がっていきそうですね。
ながしま
そうですね。だといいんですけど。
ーー
これからもたのしみにしてます。
今日はありがとうございました。
ながしま
こちらこそありがとうございました。

(おしまいです)

第2シーズン

第1シーズン

photos:eric