「書く」って、なんだろう?
鉛筆と紙があればできる
とてもシンプルな行為でありながら、
誰かに思いを伝えたり、考えをまとめたり、
いま起きていることを未来へ残したり…
「書く」には、いろんな力がありそうです。
ほぼ日手帳2019では、
「書く」という行為にあらためて注目して、
書くことのたのしさや不思議さを
考えたり、おもしろがったりしてみようと思います。
この特集では、仕事やプライベートで
書く・描くことをしている十人のみなさんに
愛用の「書く道具」を見せてもらいながら
話を聞いたインタビューをお届けします。
十人十色の「書く」を、おたのしみください。

書くってなんだ?

vol.4
飯島奈美

「ひとつのノートに書き溜めているおかげで、
過去に紹介した献立を簡単に見返せます。」

フードスタイリスト、飯島奈美さんのノートには、
ラジオ番組の原稿として読まれた
秋の味覚を中心にした献立が書かれています。
おいしそうな料理が並ぶ食卓の光景が
頭に浮かんできそうな手書きの文字でした。

プロフィール飯島奈美(いいじまなみ)

東京生まれ。フードスタイリスト。
TVCM、広告を中心に、映画などでも活動中。
主な仕事に、映画「かもめ食堂」「南極料理人」
「舟を編む」「海街ダイアリー」や
NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」、
ドラマ「深夜食堂」「カルテット」など。
主な著書に
「LIFE なんでもない日、おめでとう!のごはん。」
「ワインがおいしいフレンチごはん」など。
オリジナル商品に「紀州の、うめ酢」
うめ酢を使った料理冊子「難のがれレシピ」。

ーー
飯島さんの手書き文字がきれいだよって、
ほぼ日の社内で教えてもらったんです。
普段お使いのノートに
飯島さんがどんなことを書いているのか、
見せていただけないでしょうか。
飯島
このノートにラジオでお話する内容を書いています。
今、「渋谷のラジオ」で5分番組を担当していて
1回の放送につき8品の献立を紹介しているんです。
一度に8日分を収録しているので、
全部で64品をまとめて書いています。
ーー
わっ、見開きに献立がぎっしり!
どれもおいしそうだし、文字もきれいですね。
このノートに書かれている献立は、
パソコンに打ち直したりせずに
そのままラジオ原稿になっているのでしょうか。
飯島
このノートを持っていって、そのまま読んでいます。
スタジオに行って特に打ち合わせもなく、
スタッフのかたが「はいっ!」と言ったら、
5分間で8品の献立を読むだけなんです(笑)。
私の番組(『飯島奈美の夕ごはん』)では、
「いま気になる料理、作ってみたい料理を紹介します。
 毎日の献立のヒントにしてください」
といったテーマで話しているんですが、
ひとりで5分話すのって意外と長いんですよね。
ーー
ひとりで5分間しゃべるのって、
短そうに思えるけれど、
原稿を読むにしても長いですよね。
しかも、8日分まとめての収録ですし。
飯島
レシピを読むぐらいならいいかなと思って
引き受けましたけど、これがなかなか大変で。
5分間の時間稼ぎという意味もあって、
その日の献立を読み上げたあとに、
季節に合った俳句を紹介しているんです。
秋だったら「鯖寿司」の入った俳句とか、
季語から俳句を逆引きで探せる本
使って探して紹介しています。
あっ、今開いているページにもちょうどよく、
「新蕎麦」「新豆腐」「新米」とか
秋らしい季語の俳句が載っていますね。
ーー
おいしそうな季語ばかりが載った本があるんですね。
飯島さんがラジオで紹介する献立は、
ノートに清書する前に
頭の中でまとめているのでしょうか。
飯島
あらかじめ考えていたことを書くこともあれば、
毎日のお惣菜について書かれた本を読んだりして、
「さつま揚げ、いいね」って
ヒントにすることもあります。
基本は思いついた順に書いていくんですけど、
似ているメニューが続かないように、
8日間でバラバラになるよう書き分けはしてますね。
ラジオで話す内容は全部このノートと決めて
書き溜めているおかげで、
過去にラジオで紹介した内容を簡単に見返せるんです。
このノートに書いた献立も、せっかく考えたものなので、
いつか何かに利用できたらいいんですけどね。
ーー
献立を一品ずつ読んでいくと、
季節に合った料理とその説明が
丁寧に紹介されていて、
読み物としても嬉しいです。
ラジオの原稿としてノートに書く前には、
どこかにメモをしているのでしょうか。
飯島
ふと思いついたメニューをメモしたり、
街を歩いていて居酒屋さんのメニューが
表の看板に出ていたりすると、
スマートフォンに残しておいて、
先のメニューの参考にすることはありますね。
私がラジオで紹介している献立は
季節の食材を使った料理をベースにしてますけど、
最近って、季節とは関係なく
スーパーに行けばなんでも売っていますよね。
なので、季節に縛られすぎずに
スーパーで売っているような食材を使うんです。
秋の食材だけで構成していたら、
ナスとかキノコのお料理ばかりになっちゃう(笑)。
ーー
8品全部が似たような食材だと、
見た目もあまりよくないですもんね。
ところで飯島さんがお使いのボールペン、
ゼブラ柄で珍しいですよね。
飯島
このペン、銀座の五十音という文房具屋さんで買った
オリジナルデザインのボールペンなんです。
ぺんてるの「エナージェル」というペンとコラボして
軸の柄が変わっているんですって。
五十音は2畳ぐらいの小さなお店ですが、
オリジナル商品もけっこう置いてあって、
イベントも開催していたりして、よく行くんです。
ーー
ボールペンの軸が変わるだけでも
「私だけのもの」という感覚が強くなりますね。
ペンケースも万年筆の形でかわいいし、
飯島さんは文房具がお好きなんですね!
飯島
そうそう、このペンケースも
五十音で買ったものなんです。
私、文房具を選ぶのが大好きで、
東急ハンズとか文房具屋さんに行くと調子に乗って、
いろいろ買い過ぎちゃうことがよくあるんです。
ついたくさん買ってしまうのが、
ぺんてるから出ている色付きの筆ペンですね。
何本かまとめて買っておいて
海外のお土産にしたりもするんですよ。
いろんな色があるんで、喜んでもらえます。
ーー
飯島さんが筆ペンを
使う機会もよくあるのでしょうか。
飯島
筆ペン、けっこう好きなんですよ。
私が主宰している句会があるので、
そこで選んだ句に印をつけたりしますね。
あとは年賀状で使ったりしますが、
ひとりで書く練習をしたりして。
あっ、ほぼ日のボールペンも
書きやすくてよく使っているんですけど、
ここで出すとわざとらしい?(笑)
ーー
あっ、飯島さんとほぼ日の関わりは
みなさんもご存知なので
お気遣いいただかなくて大丈夫ですよ(笑)。
ありがとうございました!

(次回はヨシタケシンスケさんが登場します)

photos:eric

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