「気軽に飲めて、からだにもよくて、
しかもおいしいジュースを作りたい」
そんな思いから、ほぼ日食品チームの
メンバーを中心に発足した「畑deしぼり」チームは、
春、夏、秋、冬と約1年かけて、
つくば市のベルファームさんの畑を訪れました。
初夏には糸井と「鍬入れ式」も行ったんですよ。
ベルファームさんとの出会いから、
ほぼ日オリジナルジュースができるまでを
ぎゅっとしぼった全3回でお届けします。

第1回 ベルファームさんの畑へ。2021-01-20-WED
第2回 初夏の鍬入れ式。2021-01-21-THU
第3回 収穫のとき。2021-01-22-FRI

第3回
収穫のとき。

それからも、何度も畑を訪れました。

ベルファームのスタッフの方が
毎日、畑でにんじんとハニーケールの写真を撮って
送ってくださったおかげで、
離れている場所からも
ぐんぐん育っていく様子を知ることができました。

たとえば、にんじん「ひとみ五寸」は、
こんなふうに大きくなっていきました。

▲9月14日

▲9月25日

▲10月14日

▲10月23日

▲11月20日(上記までの写真撮影:ベルファーム・粟野謙心さん)

そして、2020年12月。
ほぼ日「畑deしぼり」の最初のラインナップ、
「ハニーケール」の収穫の日がやってきました。

朝9時、ベルファームさんに着くと、
なんと、畑から湯気が出ている‥‥?

▲畑から湯気が。

これはときどきおこる現象で、
土のなかの微生物が活発に活動しているため、
地上の温度と地下の温度の差によって、
蒸気が出る、とのことです。

「さらに3日もすると、蜘蛛の巣が
ばーーっと一面に広がるんですよ。
蜘蛛って農薬があるところにはいないんです。
キラキラと水滴のついた巣で、
それはもう、ダイヤモンドみたいにきれいです」
と、工場長の永島さん。

さて、畑では、
ハニーケールの収穫がはじまっていました。

▲これがハニーケール!

▲やや丸みのある形が特徴。

▲朝露に光って、きれいです。

葉っぱをかじってみると、
独特の苦味が少なく、ずいぶん食べやすい。
キャベツのようなほのかな甘みを感じます。

「ほかのケールに比べると、
ハニーケールのほうが糖度の高い品種なので、
やっぱりあまいですよね。
今年は12月が予想よりも暖かかったんですけど、
もう少し寒くなるともっと糖度が増します。
これでつくる青汁は、
はじめての方には飲みやすいと思います」
と農場長。

収穫作業はどんどん進んでいきます。

「大きいものだと1枚200gくらいになるので、
5枚採ったら1キロです。
1時間にひとりあたり100キロ分を収穫します」

▲外側の葉を、
根元付近からぱきっと折るようにして収穫するそうです。

ハニーケールを育てていて一番大変だったのは、
9、10月の害虫とのたたかいだったとのこと。

▲積まれたケールの束。
このあとすぐ工場へと運ばれます。

一方、にんじんもほとんど育っていて、
収穫まであとわずか、
という状況の畑を見せていただくことに。

まずはひとつめのにんじん、
品種名「京くれない」の畑から。

▲にんじん「京くれない」の畑。

葉っぱの緑が枯れて黄色くなってきたころに
収穫のタイミングを迎えます。
青果として出荷する場合は
もっと早く抜く必要がありますが、
隣接した自社工場で
即座にジュースに加工できるという
特別な環境のもと、
ギリギリまで土のなかで追熟させることで、
あまみを最大限に引き出します。

▲「順調に育ってますので、
もうそろそろ収穫できると思います。
どうぞ、抜いてもらっていいですよ」と農場長。

▲茎の部分を軽く引っ張るだけで、
すっぽりと抜けました。気持ちいい!

「力を入れなくても抜けるでしょう。
これは、土がやわらかいからなんです。
にんじんが下にまっすぐ素直にのびているから、
これだけ力を入れずに抜けるんです。
うちの畑の特徴です」

「下に、下に、と、にんじんが伸びていくときに
土が硬かったり石があったりすると
曲がってしまうんです」

まっすぐ生えているのは、
空気が含まれたふかふかなベッドのような土だから。
こうして実際に抜いてみると、
そのすごさが実感できました。

次に、もうひとつのにんじん、
品種名「ひとみ五寸」の畑へと進みます。

▲にんじん「ひとみ五寸」の畑。奥に見えるのは
ベルファームさんの本社兼工場。

▲スポッスポッと、どんどん抜いていく農場長。

ひとみ五寸は実がやわらかく
割れやすいのが特徴で、そのため
市場にほとんど出回っていない品種です。

「収穫時期を誤ると、育ちすぎて、
抜くときに割れやすくなるので、
十分に育った上で、割れないギリギリのサイズで
収穫できるように、
蒔く時期をかなり調整しています」

ここで、「あれ?」と
素朴な疑問が浮かびました。
ジュースにするとき、最終的には粉砕するのに、
収穫時ににんじんが割れることで
なにか問題はあるのでしょうか。

「割れると、そこから土や汚れが
入りやすいんです。
それはジュースにする上で雑味になりますから、
工場での選定時に、割れた部分は
きれいな部分も含めて大きくカットします。
そうすると無駄が出るし、にんじんのおいしい部分も
切り捨てられてしまうんです」

にんじんを育てていくうえで、
苦労した点をうかがうと、

「今年はやっぱり夏の草取りが大変でした。
除草剤を使用しない太陽熱処理という方法で
対応したんですけど、
曇りの日が多くて、
太陽熱でも発芽後の草が枯れず、
ものすごく大変だったんです。
はたから見ると、まるで草を育てている風景にしか
見えなかったと思います」

手塩にかけて育てた野菜が無事に育ち、
収穫の日を迎える。
それは、どんなお気持ちですか?
すると、予想外の言葉が返ってきました。

「収穫にはあまり興味がないんです」

収穫に興味がない?

「やっぱり育てることが好きなんです。
もちろん仕事ですから収穫はしますし、
生活にもつながる大事なことなんですけど、
ここまで育てたから、
あとは好きにどうぞ、という気持ちが大きいです」

育てることが好き。
それは、真夏の炎天下も、
真冬の雪の日も、すべての野菜と
日々真摯に向き合ってきた農場長ならではの、
心に響く言葉でした。

収穫した野菜は、すぐに工場へと運ばれます。
先に書きましたが、
農場と工場が隣接しているのも
ベルファームさんの大きな特徴です。

▲ぐんぐん育ったハニーケールや
にんじんを見てうれしく、
足取り軽く工場に向かう我々。

▲さきほど収穫したハニーケールが山積みに。
ここからは工場のみなさんが
ジュースに仕上げてくださいます。

工場内で、できあがったハニーケールを
試飲させていただきました。
この一年、何度もこちらを訪れ、
しぼりたてのジュースを飲んできましたが、
今回は、はじめて収穫した
ほぼ日オリジナルジュースの試飲です。

みんなちょっとドキドキしています。
絶対に大丈夫だと信じていますが、
万が一、これが思った通りの味でなかったら‥‥。

▲「いただきます!」

▲「あ‥‥飲みやすい!」

飲みやすく、口当たりもさわやかです。
もちろん青汁なので、
「あまい!」とまではいきませんが、
苦味やエグ味が少ないという
ハニーケールならではの特徴を、
しっかりと感じとれました。

▲「これ、やっぱりちがいますね‥‥!」
ハニーケールという品種を提案してくださった
工場長の永島さんも喜んでくださいました。

▲ついに、ジュースになりました‥‥!
パッケージのイラストは大塚いちおさんに
描いていただきました。

続いて「にんじん」の収穫は
年明け1月に行われました。
緊急事態宣言下で
直接うかがうことは叶いませんでしたが、
ジュースに加工したにんじんを、
すぐに東京まで送ってくださったので、
ジュースのできあがりを一番たのしみにしている
糸井重里といっしょに試飲しました。

▲3種類がついに揃う。
左から「ハニーケール」「京くれない」「ひとみ五寸」。

▲畑の栄養をまるごとしぼって、こうなりました!

ベルファームのみなさんと話し合いを重ね、
育てていただいたにんじんとハニーケール。
こうして無事にジュースが完成し、
心からうれしいです。
ベルファームのみなさん、
本当にありがとうございました。

(おわります)

2021-01-22-FRI