「畑deしぼり」を作ってくださっている
ベルファームさんのジュースは、
フレッシュで、透き通っていて、
おいしいのが特徴です。
どうしてこんなにきれいな色なんだろう。
すーっと飲めるのは、なんでだろう。
そしてなぜ、ペットボトルや瓶ではなく、
「冷凍パック」なんだろう。
いろんな疑問を、社長の鈴木さんと、
工場長の永島さんにうかがってきました。

第1回 安心できる「飲む野菜」を届けたい。
2021-03-30-TUE
第2回 しぼる機械も手作りなんです。
2021-03-31-WED
第3回 100歳になっても元気で働ける場所。
2021-04-01-THU

第1回
安心できる「飲む野菜」を
届けたい。

ーー
今日はよろしくおねがいします。
そもそも、ベルファームさんが
ジュース作りをはじめたきっかけは
何だったんでしょう。
写真
▲社長の鈴木さん、右が工場長の永島さんです。
(前回のインタビューで社長としてご紹介した
鈴木靜夫社長が会長に、奥様の鈴木専務が社長に就任されました)
鈴木
現会長は、もともと東京で働くサラリーマンだったんです。
あるとき、大阪で「甲田式健康法」を唱える
甲田光雄先生とご縁があって会うことになりまして。
会長は病気で体調が良くなかった時期だったので、
先生に、玄米と青汁と豆腐で生活をしてみなさいと言われ、
甲田先生が運営されている病院で
丸1ヶ月入院したんです。
ーー
入院を。
鈴木
はい。甲田先生の指導を受けたことで、
体調がずいぶん良くなって、
退院する日に、先生から
「君が青汁を普及してくれないか」と頼まれたそうなんです。
「からだにいいものを普及することで、
困っている人を助けなさい」と言われたと。
先生との約束を守りたい、ということで、
故郷の茨城に帰って、青汁作りをはじめることにしたんです。
ーー
先生との約束を守るために。
鈴木
はい。それが自分の使命だと。
でも、青汁の原料であるケールを用意したくても、
当時はなかなか栽培してくれる人がいなかったんです。
だったら自分たちで地下足袋履いて、
畑でケールを育てようじゃないか、と。
それで私も一緒にやることになりました。
私は地下足袋は嫌だったので、長靴で(笑)。
写真
永島
その前に、農家の方に委託して
作ってもらっていた時期もありましたよね。
鈴木
あ、そうそう。ありました。
永島
「農薬や化成肥料は使わないで育ててください」
というお願いをして作ってもらったんです。
でもあるとき会長が見に行ったら、
畑に白い粉を撒いていたそうなんです。
「これはなんですか」と聞いたら、
「化成肥料だ」と。
――
ああ。
永島
「そういうものは使わないで、とお願いをして、
了承を得ていたはずでしょう」と言うと、
「いや、これ撒かないと大きくなんねぇんだよ」
と言われたそうなんです。
それで結局、
「自分の目で確認できる畑を作らなくてはだめだ」と。
もし人にお願いするとしても、自分が見に行ける距離であること、
を重要視するようになったんです。
写真
鈴木
そうですね。そこから、「一貫生産」ということを
考えるようになりました。
自分の手で農薬不使用の野菜を作って、
自社工場で無添加のジュースを製造し、販売する。
そこから30年経って、少しずつ形になってきました。
――
一貫生産することで、
自分の目ですべての工程を確かめられますもんね。
永島
はい、でもそれだけではなく、
会長が最も大事にしたのは「鮮度」なんです。
魚でも何でも、鮮度のいいものはおいしいですよね。
それと一緒で、野菜って、
収穫する直前までは光合成によって
葉っぱに栄養素を蓄えているんですけど、
収穫した時点から、栄養素を
野菜自身が使って維持しなきゃいけないので、
どんどん栄養素が減っていくんです。
できるだけ栄養を損なわないためには、
短時間でジュースにする必要がある。
だからこそ、すぐそばで野菜を育てなくてはならない、
という思いがありました。
――
ああ、だから工場の隣に畑を作られて。
写真
▲ベルファームさんの工場の隣には畑があります。
永島
会長が考えるブランドは、
自分が安心して自分自身が飲めるもの。
お客さまに提供する前に、自分が本当にそれを好きか、
自信を持って出せるものか、
というところを大事にしているんです。
――
自分が本当に飲みたいものか。
永島
いまでも記憶に残っているんですが、
ある日、製造した青汁を全部捨てたときがありまして。
――
えっ、青汁を全部捨てた?
永島
作り終えたあと、会長が飲んで、
「こんなものは飲めない」と言い出して。
「いや、このぐらいだったら大丈夫じゃないですか」
と言っても、会長は、
「全部捨てろ」と。
――
なにが違ったんですか?
永島
味です。
会長が飲んで、これでは納得できないと。
そういうことが二度ありました。
鈴木
当時は、300リットルのタンクに
ジュースが溜まってからパック詰めをしていたんです。
やっとできあがって、
パックに詰める前に試飲をした、まさにそのとき、会長が
「ダメだー!!!」と言って、コックをカタンと開けたんです。
緑色の青汁が、ジャーッと流れていきました。
写真
――
ええ~~。
鈴木
みんな青くなって、
「あああっ‥‥!」って(笑)。
――
手塩にかけて育てた野菜を搾った、
大事な大事なジュースが。
鈴木
そう。何時間もかけて作った300リットルものジュースです。
ショックでしたし、私もそのときは
「なんでこういうことをするんだ」って思いました。
――
材料がもったいないということよりも、
自分が思う味が出せなかったらダメ、
ということなんですね。
鈴木
はい、求める味が出せなかったみたいで。
ホントに頑固なんです。
畑でもなんでも、自分の思ってるものができないと、
「まとめて捨てろ!」って。
永島
しかもそれがね、よりによって、
ジュースが足りないときだったんですよ。
写真
一同
(笑)
永島
ジュースを待ってくださってるお客さまに
早く届けないといけない責任もあります。
会長もそこは当然、わかっているんです。
でも、やっぱり自分が飲んで、
本当にいいと思ったものだけを届けたいんだと。
もし、納得できないものだったら、
お客さまに、ごめんなさいと伝える。
それがブランドを守ることであり、自分たちの責任だと。
その言葉は、私の中で非常に深く根付いています。
作る側って、意外と全て知っているんです。
でも、もうこれくらいでいいや、
これくらいしょうがない、と思ったところから、
全ては崩れていくんだということを、
今になって改めて実感します。
――
ああ‥‥すばらしいです。
鈴木
でも、泣きましたよ(笑)。
時間をかけて、一生懸命作って、
ジュースが足りないときだったから、
全部私がお詫びの電話をしなくちゃいけなくて。
――
そういう積み重ねの末に、今があるんですね。
ベルファームさんのジュースの、
もうひとつの大きな特徴が、
濃縮還元ではなく「ストレート」ですよね。
鈴木
はい、最初からストレートで、
余計なものは何も入れないつもりで作りはじめました。
写真
――
いま、世に出ている野菜ジュースを見ると、
濃縮還元という表示がよく見られますが、
その違いって何でしょう。
永島
根本には、考え方の違いがあります。
濃縮還元というのは、
原料となる野菜を搾ったあと、
水分を除いて濃縮した原料を保管しておいて、
必要なときに水分を加えて元の濃度に戻すことです。
これ、生産者にとってメリットが大きいんです。
濃縮還元しておけば、
旬の時期に一気に収穫したものを、
5分の1ないし10分の1くらいまで液体を濃縮して
置いておけます。
液体を濃縮できるから、保管庫の広いスペースも不要です。
必要に応じて5倍、10倍に薄めてジュースを作れるんですね。
――
なるほど。
永島
一方で、私たちのジュースは、
あくまでも自然に合わせて作っているので、
作り置きができません。
その都度作ってお客さまに提供していくものなので、
どちらかというと、製造する側としては
ベストな方法ではないんです。
でも、濃縮還元だと、作るときに熱を加えますし、
水も混ぜなくてはいけません。
充填するときにもまた加熱します。
何度も加熱すると、どんどん自然から遠ざかってしまいます。
自分たちのジュースも当然、最低限の加熱はしていますが、
それでもできるだけ加工したくないし、
自然の状態でお客さまにお届けしたいんです。
これはサプリメントでもなんでもない、
あくまでも「飲める野菜」なんだと思っています。
写真

(つづきます)
2021-03-30-TUE