── これまで、この「つかいかた」企画では
元気いっぱいな6歳の女の子・
佐野青ちゃんちのホワイトボードカレンダーと、
駒場東大前の明るいハワイアンカフェ、
フジカフェさんのホワイトボードカレンダーを
取材させていただきました。

(フジカフェさんを取材させていただいた様子は
 後日、公開いたします)

清水 すみません、こんなゴチャゴチャしたところで。

── いえいえ、多忙なデザイン事務所という
ある意味「質実剛健!」だけが求めらる場所で
ぼくらのホワイトボードカレンダーが
どう使われているのか、
本当に役に立っているのか、知りたかったので。

清水 そういう意味では、とても重宝してますよ。
もう3年くらい使ってますから。

── ありがとうございます。

あの、ホワイトボードカレンダーって
「書いては消せる」のがいちばんの特徴なので
ほぼ日でも、このカレンダーを囲んで
チームがミーティングしてたりするんです。

清水 ええ。

── その結果、けっこうヨレヨレになるくらい
「タフ」に使われるというか、
どのチームのカレンダーも
かなり「使い込まれた感」が出るんですが。

清水 はい。

── プリグラフィックスさんのケースは
ある意味で、けっこう「想定外」でした。

清水 そうですか。

── この使い方は、他にはなかった。

清水 はあ。

── だって「改造」してらっしゃる。

清水 ええ、まあ、改造というか。

── 「拡張」してらっしゃる。



清水 そうですね。

── 「ホワイトボード」の部分を。

清水 はい、おなじような材質の紙を下に引いて、
その上にほぼ日のカレンダーを貼ってます。

── ようするに「書いては消せる」スペースが
もっとほしい‥‥と?

清水 書き込んだ予定を消すことができるのって、
すごく便利ですよね。

ふつうの家庭とか職場なら
この大きさでも十分だと思うんですが
うちは、6人くらいスタッフがいるうえに、
それぞれが、
それぞれの締切を抱えているんです。

── なるほど。

清水 会社全体のスケジュールだけじゃなく、
そういうものまでぜんぶ書き込んでしまうと
もう、グチャグチャになっちゃうので。

── それで「拡張」を。

でも、これだけ面積が大きいと
黒板みたいな使いかたも、できそうですね。



清水 そう、まさにそんな感じに使ってます。

── ちなみに
デザイン会社の書き込む「予定」というのは
どういうものがあるんですか?
清水 まず、すべての「軸」になってくるのが
メインでやっている雑誌の「校了日」ですね。

月刊誌を1冊、任されているのですが
全員が関わっているので、
その雑誌の「校了日」を軸にして
他の仕事のスケジュールを調整したりします。

── それを、ホワイトボードカレンダーの上で?

清水 はい。

── ちなみに、プリグラフィックスさんでは
全員でやる雑誌のお仕事もあれば、
おひとりで、単行本のデザインなんかも
やってらっしゃるということですが
そのへんの「仕事の割り振り」って‥‥。

清水 単発の仕事は、それぞれに来るんですよ。

── あ、デザイナーさん個人に。

清水 だいたい、そうです。

もちろん、まだ入って間もない人の場合は
アシスタント的な感じなので
どうしても、
僕らの仕事を手伝ってもらうところから
はじめるのですが、
慣れてきて、
だんだん任せられるようになってくると、
編集者のかたも
信頼してくれて‥‥というふうに。

── チームプレイと個人技の、
両方の仕事のスタイルがあるんですね。



清水 なので、
そういう「個人技」も書き込んでいると
わけわからなくなるので‥‥。

── 「拡張」に踏み切った、と。

清水 はい(笑)。

── あ‥‥引っ越しが、お近い?
清水 ええ、年内中に別のところへ越します。

── じゃあ、ことしは仕事を納めたあとに
引越しという、もうひと仕事が?
清水 いやぁ、どうでしょうね。

── え、引っ越したあとに、仕事とか‥‥!?

清水 うーん、引っ越ししながら
仕事になるんじゃないかなあ‥‥なんて(笑)。

── 激しいです(笑)。

ちなみに清水さんって、
はじめからエディトリアル・デザイナーに
なりたかったんですか?
清水 結果的には‥‥そうなるんですかね。

── そういう勉強をしてたんですか?

清水 いや、全然、そんなことないんです。
僕、最初から「フリー」なんですよ。

── 最初から? すごい。

清水 大学の友だちに、何人か編集者がいたんです。

で、大学を卒業しても
就職しないでプラプラしてた僕に
「なんか、デザインでもしてみたら?」って、
仕事をくれたんですよ。

── できるもんなんですか、それで。

清水 本当に「いちばんはじめ」のときは、
知ってる人に「一夜漬け」みたいな感じで
教えてもらったんです。

で、次の日に入稿しなきゃけないような
雑誌のモノクロページのデザインを‥‥。

── 組んだんですか?

清水 はい。

── すごい。

清水 いやあ、できもしないのに
「やります」って言っちゃったんですよ。

で、一夜漬けで要領を教えてもらって、
無理矢理つくりました。

そしたら、まぁ、オッケーが出たんです。



── ‥‥向いてたんでしょうね、きっと。

清水 うーん、どうなんでしょう。
たしかに雑誌を見るのは好きでしたけど。

でも、それから、
ぽつぽつ仕事をいただくようになって。

── 職業になっていった‥‥と。

清水 パソコンのMacが出はじめたころには
当時の自分としては
たいへんなローンを組んで買いました。

で、「俺、Mac使えますよ」と。

── 編集者さんに。

清水 そう。当時って、Macを持ってるだけで
めずらしがられて、
画像合成の仕事が来たりとかしたんです。

── 当時のMacというのは
まだリンゴがカラフルな時代のやつですか。

清水 そうそうそう、ベージュ色のね。

── いまや「ほぼ日」の書籍制作には欠かせない
プリグラフィックスさんにも
そのような「はじまりの物語」が‥‥。

清水 まだMacも持っていない時期なんて
もっと、いろいろやりましたよ。

3日徹夜でエッチ本のデザインとか。

── ‥‥お、おお。

清水 あのときは、たいへんでした。

まず「仕事あるから、編集部に来てよ」
って言われたんです。
で、行ったが最後3日間、家に帰れず。

── はー‥‥。

清水 「これもあるから、こっちもあるから」
と、もう次から次へと、どんどん来て。

── はー‥‥。

清水 まだまだ贅沢も言えない身分でしたから
「これも」「わかりました」
「こっちも」「了解です」‥‥みたいな。

── パソコン以前ですから、
いわゆる「版下」ってやつですよね。

清水 そうです。線を引いたり、指定書いたり。



── その‥‥そういう本をつくるときって、
やっぱり、その、
そのような「類書」を「参考」に‥‥?

清水 ですね。妙に「アップ」が多いなとか、
そういうことを学びました。

── なるほど(笑)。

清水 思い返しても、つらい思い出です。

── そういう叩き上げ的な経験もありつつ、
じょじょに、
もうはたらく人が6人もいる
デザイン会社になっていかれた‥‥んですね。

清水 まあ、そうですねえ。

── 最近では「ほぼ日」の書籍も
たくさん、デザインしていただいていて。

本当にお世話になっております。

清水 いえいえ、こちらこそ。

でも‥‥途中から
まったくカレンダーと関係ない話に
なってますけど。

── おもしろかったので、ぜんぜん大丈夫です。

この「つかいかた」企画では
この展開は、割と「いつものこと」なので。

清水 そうですか。

── えー、プリグラフィックスさんでは
「書いては消せる」が便利なので
「ホワイトボード」の部分を改造して拡張して、
ご使用されている、と‥‥。

清水 はい(笑)。

── ‥‥いうことが、とてもおもしろかったので。
本日は、ありがとうございました。

清水 ありがとうございました。

<おわります>

2013-12-03-TUE