楽しまないともったいないから。春風亭昇太さん×糸井重里 対談
第8回
奇跡のような時代だから。
糸井
お話をうかがっていると、
やっぱり、かなりお忙しいですね。
昇太
はい。
やりたいことだらけなんです。
糸井
いわゆる「高等遊民」というのは、
あなたのことじゃないですか?
夏目漱石のところに集まって、
しょうもない話をしてる人々みたいな。
昇太
あっはっはっは。
糸井
笑点の司会をなさってるときも、
まるで居間にいるかのように
その時間を楽しんでますよね。
昇太
そうですね。
きっと、それは歴史が
好きだったというのも大きいです。
繰り返しになっちゃいますけど、
歴史を振り返ったら、
こんなにいい時代はないんです。
だって、ずーっと戦争や内戦で
大変だったんですから。
いまは、奇跡的にいい時代なので。
糸井
自分の家にいて、蛇口をひねったら
お湯が出てお風呂に入れる。
その環境にいる人が
「うちは貧乏だ」って言える時代ですからね。
昇太
すごいですよね。
水汲みに行かないのに
「俺、貧しい」とか言っちゃう。
糸井
落語を聞いてると、
特にそういうことを思いますね。
「水屋」という仕事が落語に出てくるけど、
元手がなくて商売できるのは、
水を運んで売る仕事なんですよ。
だから貧乏な人は水屋をやったわけです。
それと、子どもが川でしじみを採って売る
「しじみ売り」もありましたね。
昇太
はい。それがつい最近のことなんです。
いろんな人ががんばって、
こういう時代になったんですよね。
いまはいまで新しく大変なこともあります。
だけど、相対的に見て、
こんなにいい時代はない。
糸井
昇太さんは落語家だから、
そのことに、ますます
気がつくんじゃないでしょうか。
昇太
たしかに落語をやってると、そうですね。
常に江戸時代に戻ってるので。
糸井
そうそうそうそう。
江戸時代までいかなくても、
大正時代でも、気づきますよね。
昭和だって、
汲み取り式のトイレが
ついこの間までありましたからね。
ぼく、こういう話だと、
いくらでもネタありますよ。
なにかが変わるのを全部見てた世代ですから。
昇太
ぼくも、時代が変わっていくのを
少しでも見ることができたのは、
良かったと思ってます。
いまは、かなり出来上がった状態だから、
変化が少ないですね。
糸井
いまビックリするのって、
コンピューター周りばっかりだもん。
そりゃコンピューター周りには
相変わらずビックリさせられてますけど。
暮らしそのものの変化を味わえたのって、
楽しいことでしたよね。
昇太
そう思います。
糸井
いや、ちゃんとした話になりましたね。
昇太の話ですよ、これ(笑)。
昇太
あっはっはっは。

(つづきます)
2016-09-12-MON