楽しまないともったいないから。春風亭昇太さん×糸井重里 対談
第6回
缶詰もグループサウンズも好き。
糸井
昇太さんって
「いま、これをやってるんですよ」
という時間を足していくと、
ご飯を食べる間もないくらいでしょう?
昇太
そうですねぇ。
本当にあれこれやってますね。
で、ご飯も好きなんです。
糸井
(笑)ご飯も好き。
昇太
はい。食べることが好きです。
とくに、昔から缶詰が大好きなんです。
缶詰って、あんなにもおいしいのに、
食品のなかで低い扱いになっているのが、
ぼくは腹立たしいんですよ。
糸井
あの、ぼく、いい鯖缶を持ってますよ。
分かる人がいたらあげようと思って。
昇太
あら。分かる男ですよ、ぼく。
糸井
じゃ、差し上げますね。
ぼくが持っているのはヴィンテージの缶詰で、
詰めてから売るまでに1年かかるものなんです。
昇太
なるほど。
その間に缶の中で熟成するんですね。
糸井
そうです。そうです。
昇太
そもそも日本は、缶詰の技術が
ものすごく高くて、おいしいんです。
糸井
なんか、お城のことをしゃべるときと、
同じ顔してますね(笑)。
昇太
またちょっと熱くなってきました(笑)。
缶詰の工場って、
だいたい港のそばにあるので、
海から揚がったばかりの新鮮な素材を
缶詰にしてるんですよ。
多分、そこらの魚屋さんに
売っている魚よりも
いい魚を使って缶詰にしてるし、
おいしいんです。
糸井
缶詰、たしかにうまいですよね。
昇太
あとは、ホテイの焼き鳥缶あるでしょう?
あれを小さいフライパンに移して温めて、
そこに溶き卵をシャーッと入れて‥‥。
糸井
親子丼。
昇太
そう、親子丼が30秒とかからずにできるんですよ。
それをご飯の上に乗っけるだけ。
あんなに安くておいしくて、
しかも絶対失敗しない。
味ができあがってて、
そこに卵を合わせるだけなんですから。
糸井
そらそうだ。
あと、赤貝とか煮イカとかもうまいですよね。
味がしみててねぇ。
昇太
ええ、ええ。
どうやら、缶詰にできないものって、
ないんですって。
災害用のパンの缶詰とかも、
意外とうまいんですよ。
糸井
ぼく、食べたことないんですけど、
存在は知ってます。
昇太
なんで、こんなにすばらしい缶詰が
食品の中で低く扱われているのかが
分からない。
糸井
そうなんですよねぇ。
なにかに追い抜かれていくときが
あったんでしょうね。
だって、ぼくらが子どものときには、
缶詰を食べるのはお父さんがメインで、
子どもはちょっとだけでしたよ。
牛肉大和煮とか、
あと、クジラもありましたね。
昇太
ありました。クジラもうまいですね。
糸井
なんか、戦後の話になっちゃった(笑)。
昇太さんさ、
「昇太好き勝手」というイベントを
やったらどうです?
自分が好きだと思ったものはいい、
おもしろいと思ったものはおもしろい、
という趣旨で、
いまみたいな話を2時間ぐらい
しゃべりまくるって、どう?
昇太
「俺、好き、フェスタ」みたいな。
‥‥いいかもしれない。
糸井
一番しゃべりたいテーマは、
やっぱりお城ですか?
昇太
そうですね、お城ですね。
あとは、グループサウンズです。
糸井
♪ヒャラララララ、ジャーン、ホワーン。
昇太
ぼく、グループサウンズの
バンドもやってるんですよ。
糸井
へえ。
どういう曲やってるんですか?
昇太
昔の曲もやるし、
オリジナルの曲もやってます。
前に演劇仲間と飲んでいたら、
その場に六角精児くんがいたんですよ。
あの人、髪型がおかっぱなんで、
酔っ払って
「六角くんはグループサウンズの
 格好したら似合うよね」
と言ったんです。
そしたら、その場にいた仲間が
ものすごく盛り上がっちゃって。
みんな楽器ができる人たちだったから、
その流れでバンドを作っちゃったんです。
糸井
へええ。すごい。
昇太
ぼく、子どものころは、
グループサウンズの良さが
わからなかったんです。
髪の長い男たちが、
お互いを「トッポ」とか「ピー」とか
呼び合ってて、
田舎じゃそんな人見たこともないし、
「なんだこの人たち」と思ってたんです。
でも、ある程度の年齢になって聴いてみたら、
いい曲が多いなと気づいたんです。
糸井
一流の人が作ってますからね。
すぎやまこういちさんとか。
昇太
そうそう。なかにし礼さんとかね。
名だたる人たちが作ってますよね。
いい曲が多くって、いまは大好きです。
糸井
じゃあ、メンバーと集まって
曲の練習をしたりしてるんだ。
ちょっと見たいな。
たとえば、どんな曲をやってるんですか?
昇太
「たどりついたらいつも雨ふり」とか。
糸井
あー、モップスだ。
それはみうらじゅんの持ち歌ですね。
昇太
そうなんですか(笑)。
吉田拓郎さんが作った歌なんですよね。
あとは、ダイナマイツの「恋はもうたくさん」。
あれもかっこいいんです。
糸井
どっちも後期ですね。
昇太
あっはっはっは。詳しい!
糸井
全部知ってますよ、ぼく。
だって、グループサウンズが
よくご飯を食べに来る店で
バイトしてたこともありますから。
昇太
あー、それ羨ましいです。
グループサウンズが流行った時代って、
2年ちょっとなんですよね。
たった2年なんだけど、
音楽シーンの中でいうと、
強烈な光を放っていたと思うんです。

(つづきます)
2016-09-09-FRI