おいしい店とのつきあい方。

094 お店の情報とのつきあい方。 その20
料理写真から情報を読み取る。

冬休み。
みなさんいかが過ごされましたでしょうか。

旅館に泊まると朝ご飯がおいしくて、
いつもはしないご飯のお代わりをおねだりしちゃう。
それとお正月って同じ感じで、
いつもはしない過食をしちゃう。
ボクは、せっせとジムに通いはしたけど、
効果は一切あらわれず
もう大変なコトになってしまっております。
ズボンがきつくてしょうがない。

そのほかの時間は、家でぼんやり過ごしながら、
気になるお店をSNSサイトを
訪ねるようなコトをしました。
面白かった。
はやくレストランの営業が本格的にスタートしないか‥‥、
とワクワクしながら、
今年一年かけて、あの店、この店、
いろんな店に行ってみたいと
気持ちがおいしく盛り上がりました。

ただ、そこに投稿されている人の意見はまず読みません。
実際にいった人の感想を読むというコトは、
ミステリー小説で言えば
謎解きの答を最初に聞くようなモノ。
読む楽しみが大きく損なわれる、
あまりやりたくないコトですよネ。
どんなお店なんだろうと、
イマジネーションをふくらませるための
ヒントを貰えればそれで良い。
本で言えば帯。
映画で言えばよくできた予告編。
レストラン関係のSNSや
ウェブサイトの何が
そういうヒントをもっているかというと、
ボクは料理の写真がそれ‥‥、って思ってる。
料理の内容じゃなくて、料理の写り。
そこからお店の「照明の状態」を
うかがい知ることができるのですネ。

飲食店においてどのような照明を使っているのかは、
お客様にどのようにたのしんでもらいたいか
というコトに対するとても強烈なメッセージ。
例えば、お腹いっぱいになるための料理を
気軽にたのしんでもらいたいという、
食堂風のお店は明るい。
蛍光灯を中心に、影が出来ないように
照明計画をほどこしていく。
影がないということは、清潔感が際立つというコト。
飲食店において清潔感は安心の証です。
安心すると食欲が増進される。
食べるスピードも軽快に、テキパキ箸が進んでくれるから
食堂のような店には好都合だったりするのです。

お皿の上の料理の周りに影が出来ない。
料理の隅々がクッキリと、色もキレイに「写」ってくれる。
最近、SNSに投稿される写真のほとんどは
スマホで撮影されているもの。
編集はせず、撮ってそのまま投稿するので
照明の状態で劇的に写真の出来不出来が左右されるのが
現実で、写真を撮っても思ったように撮れないと、
投稿することを躊躇してしまう。
ピンぼけやキレイに写っていない写真ばかりが
投稿されているお店には、
行ってみたいという気持ちも削がれる。
だからお店にとってはビジネスチャンスを逃しちゃう。
SNS時代の店作りで大切なのは、
お客様のテーブルの上で写真を撮って
見栄えするような照明計画が重要なんだ‥‥、と、
食堂風の明るい店作りをすすめる
コンサルタントや設計者が
最近、増えてきていたりする。

確かに厨房の中の照明は蛍光灯が中心です。
テーブルの上にキャンドルが置かれているような
ムードのある店でも、厨房の中の照明は
影がなく、明るい。
調理をしている手元の隅々、
盛り付けをするお皿の端々まで明るくなくては、
料理を正しく作れない。

食材の色。
ソースの色。
調味料の分量に出来上がった料理の色合いを確認するには、
明るいだけじゃなく混じりけのない色、
つまり蛍光灯のような明かりが便利なのです。

食堂のような蛍光灯で明るい店で食事するというコトは、
調理人が見ている料理と同じ状態を見ながら
食事ができるというコトでもある。
それはそれでうれしいんだけれど、
でもレストランという場所は、
料理がキレイに見えることばかりが取り柄じゃない。

たのしい会話がはずむ店。
ひそひそ話が心置きなくたのしめる落ち着いた雰囲気や、
思わず愛の告白をしてしまいたくなるようなムードのお店。

料理の写真には、そういうお店を見つけるヒントが
隠れているから、
投稿されている料理の写真を見るのはたのしいのです。
人の目ってとてもよく出来ている。
目が良く出来ているのか、
頭の中にある画像レタッチソフトが
とても優秀なのかわからないけど、
料理の写真を頭の中で修正しながら
どんなお店なんだろう‥‥、って舌なめずりする。

さて、クッキリきれいに撮れていない写真は
どんなお店で撮られた写真なのか?
また来週といたします。

サカキシンイチロウさん
書き下ろしの書籍が刊行されました

『博多うどんはなぜ関門海峡を越えなかったのか
半径1時間30分のビジネスモデル』

発行年月:2015.12
出版社:ぴあ
サイズ:19cm/205p
ISBN:978-4-8356-2869-1
著者:サカキシンイチロウ
価格:1,296円(税込)
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「世界中のうまいものが東京には集まっているのに、
 どうして博多うどんのお店が東京にはないんだろう?
 いや、あることにはあるけど、少し違うのだ、
 私は博多で食べた、あのままの味が食べたいのだ。」

福岡一のソウルフードでありながら、
なぜか全国的には無名であり、
東京進出もしない博多うどん。
その魅力に取りつかれたサカキシンイチロウさんが、
理由を探るべく福岡に飛び、
「牧のうどん」「ウエスト」「かろのうろん」
「うどん平」「因幡うどん」などを食べ歩き、
なおかつ「牧のうどん」の工場に密着。
博多うどんの素晴らしさ、
東京出店をせずに福岡にとどまる理由、
そして、これまでの1000店以上の新規開店を
手がけてきた知識を総動員して
博多うどん東京進出シミュレーションを敢行!
その結末とは?
グルメ本でもあり、ビジネス本でもある
一冊となりました。

2017-01-12-THU