おいしい店とのつきあい方。

093 お店の情報とのつきあい方。 その19
お菓子に似た料理の世界。

年が明けてもう5日。
この年末年始のカレンダーは、飲食店泣かせでした。
クリスマスやお正月と言ったイベントの日が、
週末と微妙に重なりビジネスチャンスが少なかった。
しかも冬休みがいつからはじまって終わるのか、
にわかに予想が付きづらい不思議な曜日送りで、
売上予想がむつかしい。

飲食店の人たちは、毎年、カレンダーを見て
今年はどういう一年なんだろう‥‥、と
曜日配りを気にします。
特に気にするのはゴールデンウィークやシルバーウィーク。
お盆前後の夏休み。
大型連休があって、長い休暇が取りやすい年は
厳しい年かなぁ‥‥、って心配します。

休みが長いということは、
長期の旅行や大きなレジャーをするいいチャンス。
だから日常的な外食にお金が回らぬ年かもしれない。
場合によっては、その連休に向けて数ヶ月間、
節約ムードが続くかも‥‥、ってドキドキします。

一方、連休が飛び石だらけの年。
これはチャンスか‥‥、って気持ちがあがる。
休みだけれど遠出が出来ない。
だから身近なたのしみ。
外食にお金を使おう‥‥、
という人が増えるかもしれないからと期待する。

カレンダーの曜日配りに一喜一憂してしまうほど、
飲食店はお客様の気持ちを気にする商売。
人気が支える商売なんです。
ちなみに今年のカレンダー。
ゴールデンウィークといい、お盆休みといい
大型レジャーにピッタリの、
つまり飲食店にとっては
少々、なやましいようなカレンダー。
レジャーの合間にいつものレストランが、
寂しがっていないかと思い出してあげなくちゃなぁ‥‥、
と思ったりする。

あらためまして、あけましておめでとうございます。
昨年末に途切れた話題の続きに話をもどしましょう。

西洋料理においてお菓子作りという仕事だけが、
他の料理人の仕事と区別されていて、
パティシエという特別の地位が用意されている。
そんな話を昨年しました。
そして、中国料理にも、それに良く似た世界がある。
‥‥、とそこで年をまたいでいました。

さぁ、その世界。
点心という分野なのです。
焼売や餃子、春巻といった
日本でも一般的な中国料理のサイドディッシュ。
どれもが、中華鍋と包丁、まな板、
ガスコンロがありさえすれば出来る他の中国料理と違って、
様々な道具を駆使して作り出される、芸術的な小さな料理。
「点心師」という特別の役割が
中国調理の世界には用意されていて、
では中国料理の名手なら、
多彩な点心を作ることができるかというと、
決してそんなことはない独特の世界がある。

飲茶の専門店のように、点心師だけで
厨房をつとめることができる業態(デザートサロン)も
あるけれど、大抵は一般的な調理人と
チームを作って作業をする。
だから点心師はレストランにおける
パティシエと同じ位置づけなのです。
ケーキも点心もテイクアウトに適しているという、
料理自体の特徴までもがよく似ています。

しかもどちらも女性が多い世界でもある。
力仕事というよりも、手先の器用さと、
同じ作業を売り返す忍耐力が求められる世界であって、
決められたコトを守り続ける几帳面さが必要とされます。
温度と時間、そして分量を決められた通りに守ることで、
おいしい商品ができていく。
つまり「科学に一番近い料理」が、お菓子と点心。
そこにひらめきと冒険心をちょっと加えた芸術。
女性に向いている仕事といわれる背景は、
そんなところにあるのかもしれません。
なんてステキな世界だろうってウットリします。

ところで日本の料理世界の中にあって、
女性らしさが活かせる分野って案外少なく、
未だに日本料理の厨房の中は男の世界。
男が作って女性がふるまう。
それが未だに当たり前と思われている。
和菓子の世界も男の世界。
家庭料理のお店であったり、
うどん屋さんとかおでん屋さん、
大衆料理やローカルフーズの店は
女性の職場だったりするのが不思議。
なんでそんなコトが起こってしまうのか。
機会があればいつかお話いたしましょう。

そう言えば、中国のお正月といえば
餃子をみんなでくるんで食べるそう。
一年の福をくるんでお腹におさめて新春寿ぐその風習。
七草粥もいいけれど、
今年は七草餃子を作ってみようか‥‥、
なんて思ったりしています。

サカキシンイチロウさん
書き下ろしの書籍が刊行されました

『博多うどんはなぜ関門海峡を越えなかったのか
半径1時間30分のビジネスモデル』

発行年月:2015.12
出版社:ぴあ
サイズ:19cm/205p
ISBN:978-4-8356-2869-1
著者:サカキシンイチロウ
価格:1,296円(税込)
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「世界中のうまいものが東京には集まっているのに、
 どうして博多うどんのお店が東京にはないんだろう?
 いや、あることにはあるけど、少し違うのだ、
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福岡一のソウルフードでありながら、
なぜか全国的には無名であり、
東京進出もしない博多うどん。
その魅力に取りつかれたサカキシンイチロウさんが、
理由を探るべく福岡に飛び、
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「うどん平」「因幡うどん」などを食べ歩き、
なおかつ「牧のうどん」の工場に密着。
博多うどんの素晴らしさ、
東京出店をせずに福岡にとどまる理由、
そして、これまでの1000店以上の新規開店を
手がけてきた知識を総動員して
博多うどん東京進出シミュレーションを敢行!
その結末とは?
グルメ本でもあり、ビジネス本でもある
一冊となりました。

2017-01-05-THU