おいしい店とのつきあい方。

091 お店の情報とのつきあい方。 その17
クリスマスのレストラン。

今週末はもうクリスマス。
2016年も終わりに向かって急ぎ足です。
皆さんはもう、クリスマスを誰とどのように過ごすか、
お決めになっていらっしゃるでしょうか?
ボクは大切な人とユックリ、
おいしいものを食べて過ごそうと思ってる。
ただ、どこでおいしいモノを食べるかは、
まだ決めていません。

クリスマスに得するお店があります。
フランス料理とかイタリア料理。
華やかな場所の華やかなお店は、クリスマスに得するお店。

一方で、クリスマスを哀しく過ごすお店もあります。
日本料理のお店や中国料理のお店。
アジア料理のお店なんかは、
クリスマスらしさを装うことができないから、
お店の中はいつもに比べてより静か。
クリスマスにちょっとさみしい思いをしている、
そんなお店の人に会いにいくのもいいかなぁ‥‥、
とぼんやり思ってウキウキしてます。

何しろ今の東京は、本当に一握りのお店を除いて、
予約で一杯になってしまうようなことが少なくなった。
クリスマスのようなときでも、その状況はおんなじで、
それに比べて昔のクリスマスは大ごとでした。

話題のレストランはクリスマスの何ヶ月も前から
予約を受け付けて、夏が終わる頃には満席‥‥、
なんてことも普通にあった。

クリスマスだから、いつもはしない贅沢をしよう。
その贅沢な気持ちを満たすことができるのが
贅沢なレストランだったというワケで、
だからクリスマスの高級なお店の中は、
てんやわんやだったりしました。
いつも食べているワケじゃないフランス料理をぎこちなく、
たのしむどころか格闘するようなカップルが、
あちらこちらにいる空間。
その緊張が、お店の隅々にまで伝わって
見ているこちらもハラハラするようなことが
起こっていたりした。

お店のスタッフも大変でした。
外食しなれている人はサービスし易いお客様。
自分のお店に何度も来てくれているおなじみさんは、
もっとサービスし易い人たち。
どんなに外食しなれた人でも、はじめて来たお客様とは
ちょっとした緊張関係が生まれるものです。
ましてや、外食なれしない人たちに対しては
サービスのきっかけがなかなかつかめず
サービス自体がギクシャクしたりする。
お店が実力を発揮しきれず、
期待はずれになってしまうリスクを孕んだイベント。
それが当時のクリスマスというイベントでした。

今でもそういうことが起こってしまうことがあります。
ヒントはこうです。

「クリスマスは、クリスマス特別メニューだけの
ご用意となります。」

この際、クリスマス特別メニューという言葉の意味は、
レストラン側が勝手に用意した、
お客様に選択の余地のないメニューである、
と読み解くのが相当でしょう。
クリスマスらしさをアクセントにした、
日常的ではない高級な食材を使った
晴れがましい料理で構成されている‥‥、
という意味でもあって、往々にしていそれは、
そのお店らしさよりも、誰もが贅沢と感じる料理が
次々出てくるというコトでもある。

そのお店の料理や雰囲気が好きなお客様向けでは、
決してない営業をクリスマスにはさせていただきます‥‥、
というメッセージなんだとボクは思うコトにしています。
中には、ディナーは18時スタート、
あるいは20時スタートの二交代制を
とらせていただきます‥‥、なんてコトをいう店もある。
それはすなわち、お客様の都合よりも
お店の都合が優先されるお店ですと
言っているようなモノで、
すなわちそこはレストランではない、
というということになる。

折角のクリスマスです。
外食するなら、レストランに行きましょう。
行きたかったお店に思い切って行くきっかけに
クリスマスを使うことは、できることなら避けましょう。
おなじみのお店。
それが中国料理でも日本料理のお店でもいい。
おひさしぶりでした‥‥、と言われるお店。
あるいは名前を呼んでもらえるお店に行って、
メリークリスマスと挨拶をする。
ポッと気持ちに小さな明かりが灯ります。

今日みたいな日に選んでいただいてありがたい。
そう思う気持ちが、いいサービスをする励みになる。
特別にこんな料理を作ってみたんですけれど‥‥、
っていつもは食べることができない料理を
薦めてくれるコトもあるかもしれません。
そんなときには、ちょっと値の張るワインをたのむ。
飲み残したらお店の人に
メリークリスマスとプレゼントしましょう。
紹興酒や日本酒、焼酎の大きなボトルが
置かれている店ならば、一本、キープしておく。

クリスマスは人と人が小さなシアワセを
互いにプレゼントし合うスペシャルなとき。
クリスマスのレストランは
そういう場所であってほしいなぁ‥‥、と思うのです。

サカキシンイチロウさん
書き下ろしの書籍が刊行されました

『博多うどんはなぜ関門海峡を越えなかったのか
半径1時間30分のビジネスモデル』

発行年月:2015.12
出版社:ぴあ
サイズ:19cm/205p
ISBN:978-4-8356-2869-1
著者:サカキシンイチロウ
価格:1,296円(税込)
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「世界中のうまいものが東京には集まっているのに、
 どうして博多うどんのお店が東京にはないんだろう?
 いや、あることにはあるけど、少し違うのだ、
 私は博多で食べた、あのままの味が食べたいのだ。」

福岡一のソウルフードでありながら、
なぜか全国的には無名であり、
東京進出もしない博多うどん。
その魅力に取りつかれたサカキシンイチロウさんが、
理由を探るべく福岡に飛び、
「牧のうどん」「ウエスト」「かろのうろん」
「うどん平」「因幡うどん」などを食べ歩き、
なおかつ「牧のうどん」の工場に密着。
博多うどんの素晴らしさ、
東京出店をせずに福岡にとどまる理由、
そして、これまでの1000店以上の新規開店を
手がけてきた知識を総動員して
博多うどん東京進出シミュレーションを敢行!
その結末とは?
グルメ本でもあり、ビジネス本でもある
一冊となりました。

2016-12-22-THU