ほんとに、
さっきの新花巻騒動で乗り遅れていたら、
次は18時18分発だったんですね。

雪でもめている間に、
釜石に到着しました。

うわー、すごい、あの煙。
製鉄してる！

「雪ですよ。
明日から２日間、
雪か、雨です」

雪と雨のなか、歩くの‥‥？
いやだ‥‥

「いやですよ」

たのしいの、今日だけ？
いやだ‥‥

「ぼくだって、いやですよ」

イーハトーヴのお弁当を
おいしく食べおえましたら、
田口くんがとつぜん
「お弁当の輪ゴムください」と言いました。
いいけど。
といってひとつあげたら、
うれしそうに手ぶくろを取り出しました。

「ぼくね、今回、
手ぶくろを持ってきたんですけど、
これじゃあ、防水がきかないんです。
ほら、あしたから雪でしょう。
濡れちゃうから、あわてて
キッチンからビニール手ぶくろを取り出し、
リュックに入れました。
でも、袖口がガバガバじゃないですか。
それをこう、この輪ゴムでね。
ほうら、完璧です」

ちょっと待って。

「なんですか」

苦労して手に入れたごはんの味は、
ひときわおいしい。

ていうか、おこわ、おいしい！
空もきれいだし。

お弁当のそれぞれのおかずが、
物語にちなんでいますのよ。

ブラックホールひじきとあげ煮。

どっどどどどうど豚肉玉ねぎ生姜焼き。

卵焼きが、銀河鉄道だよ。

私たちもこれから、銀河を旅するよ。
なぜならここは、すでに、
銀河系なのだから。

いただきまーす。

「いやぁ〜、これ、
乗り遅れてたら、
次の快速は夕方でしたよ」

なーんて言って、
席に並べた戦利品。

イーハトーヴ五目おこわ弁当、
銀河鉄道帆立おこわ弁当。

16分かけて
あたためてもらったので、
ほかほかですね。

発車のベルが鳴っているのに、
待っているはずの
同行者の姿なし。

そんなとき、人はわりと
冷静めなLINEをするものです。

ここから私が「待合室の券売機」で
切符を買っていた姿は
写真には撮れませんでした。

待合室を見つけて、
券売機は値段表示しかなく、
釜石までの値段を調べてボタンを押し、
２人分は買えず１枚ずつ切符を買い、
Suicaを入れたら残高不足、
リュックの底から財布を取り出しお札を入れ、
じゃらじゃらになったお釣りを
一枚一枚拾い上げ、
久しぶりに手にした小さな切符を
落とさないようにポッケに入れた途端、
発車のベルを耳にした
私の姿は写真に撮れませんでした。

でも、弁当持って全速力でホームに走り、
待ち構えているであろうはずの
同僚の姿が見えず、
いったん車両に入ってまた降りた、
田口くんの姿は撮れました。

たぐちゃん（とお弁当）、
まだかなぁ‥‥。

と、釜石線のホームで
待っていたら、
ふと、さわやかな風が吹きました。

なんだろう、さわやかだな、
さすが賢治と大谷翔平さんのゆかりの地だな。
そう思って振り向いたところに、
「タッチ！ の前に」
という掲示がありました。
ご確認ください。
マル、バツ、とあります。

あかん。理解できない。
もう弁当を持ったたぐが来るんじゃ。
なんだなんだどういうことだ。

えっと私がこれから向かうのは、
恋し浜駅で、
でも直通はなくて、
乗り換えは（iPhoneで調べる）釜石。
釜石方面‥‥は、Suicaが、使えない！！！！

小さめの字で
「待合室の券売機で
きっぷをお求めください」
とあります。

ままままままちあいしつって、どこ！！！

もう弁当持ったたぐと、
電車が来てしまう！