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勉強サイド

勉強の夏、ゲームの夏。2017

読者のみなさまから寄せられた、
勉強や宿題についての相談に、
「ほぼ日」とかかわりのある
「意外に高学歴な人たち」が答えます。
勉強についての質問がありましたら、
「勉強の相談をする!」ボタンから、
気軽にメールしてくださいね。
勉強の相談をする!

shinya.hirano

つづいて、
場所についての相談。

2017/08/25 22:24
それでは、次のメールです。

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夏休みで受験生なのにやる気が出ません。
学校ではやる気が出るのに、
家ではモチベーションが上がらず、
遊んでしまいます。
「このままでは、大学に受からない」とは思うのに、
そのまま遊んでしまうこともしばしばあります。
どうしたらよいでしょうか。

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家で集中して勉強できない、
という受験生からのご相談です。

「場所によってモチベーションに
差が出てくるということですよね。
これは、すぐに言えることとして、
学校でできるなら
ずっと学校にいるべきですよ。
僕は家で仕事ができなくて、
土日でも仕事をするなら事務所に行って、
決まった机で考えるようにしています。
それはもう仕方がないことで、
この相談者のかたにとっては、
勉強をする上では、
自宅がちょっと相性が悪いものだと
思ってしまってもいいんじゃないかな。
それよりも、集中して勉強ができる
学校があることを喜ぶべきです。」
shinya.hirano

動き回る勉強法

2017/08/25 22:17
動機は、勉強を習慣にする上でも
だいじなことですね。

「あと、これは本筋とは関係ないかもしれないけれど、
この子は机に向かって
3分で部屋を動きまわっちゃうんですよね?
それであれば意外といいのが、
動き回る勉強法もあるんです。
僕も中学時代は、
部屋をぐるぐる歩き回って、
口に出して暗記していたんです。
静かに机に向かっている姿が、
よく勉強しているように見えるんだけれど、
それだけが勉強ではないと思うんですよね。
この子にとっては、もしかしたら、
動く勉強法が向いているのかもしれませんよ。」

本当に部屋をグルグルと歩き回りながら
解説してくださいました。
ありがとうございます。
shinya.hirano

メールの相談にお答えします。

2017/08/25 22:11
そろそろ谷山さん、
読者メールからの相談にも
答えていただけますか。

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小学4年生の息子ですが、
勉強は「しなければいけない」と
いうことはわかっていても
勉強することが本当にキライなので、
机に向かって3分で部屋を動き回って
「今日は勉強たくさんした!」
と言って満足します。
テストもいつも60点くらいなので
もっと復習などの勉強して欲しいと思うのですが、
勉強がキライな子供に
無理に勉強させてもいいのでしょうか?
いまのままでいいのでしょうか。
言い訳ばかりする息子に
「勉強しよう」と言い続けるの本当に辛いです。
(寝るから育つ)

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「うーーん、難しいですよね。
この息子さんと会ってみないと
本当の理由はわからないんですけどね。
たとえば、僕が中1で
ステレオコンポに釣られたように、
馬に人参を与えるように、
何かをぶら下げることでやる可能性もあるんですよ。
最初にもので釣ったからって、
決して悪いことじゃないと思うんです。
うまくいったら、
みんなに認めてもらえて嬉しいっていう
気持ちが得られるんですよ。
交換条件を与えるのも、一つの方法だと思うんです。
立派な動機を持たないと、
立派な結果はついてこないと思われがちだけど、
そうじゃないと僕は思うんですよね。
どうでもいい動機で、すごい結果を残す人も
世の中にはいっぱいいるわけです。
モテたいとかお金を稼ぎたいといった
単純な動機でもいいんじゃないでしょうか。

立派な動機だと、うまくいかなった時に、
世の中のせいにしちゃうんです。
でも、立派じゃなければ、
うまくいかなかったとしても、
それは全部、自分のせいになるわけだから。」
shinya.hirano

記憶力は、想像力の敵ではない。

2017/08/25 21:50
中学校、高校で学んできたなかで、
どの教科が役に立ったと思いますか。

「数学が一番役に立ったかな。
よく、数学なんて実際の社会に出たら
何の役にも立たない、
なんてことを言う人がいるけれど、
それはちょっと浅いと思っているんです。
数学は、原因と結果の相関関係を
最も研ぎすませて教わるわけだから。
数学の解き方はほとんど忘れているけれど、
微分やら積分やらlogやらを解いていた時に
鍛えられていた頭の動きが、
自分がいま、広告やコピーをつくる時に
役に立っているんですよね。」

ああ、数学は答えが明確ですもんね。

「あとは、『暗記には意味がない』って
言われることもあるけれど、
暗記って実は仕事の役に立つんですよね。
僕は地理や歴史が好きだったから、
暗記はそこまで苦にならなかったけれど、
『日本のみかんの生産地第3位は何県?』
みたいなことまで覚えていて、
当時は、何の役に立つんだろうと思っていました。
仕事をするようになって思うのが、
何の役に立たない事でも、
いろんな知識が頭に入っていることはいいことです。
アイデアはだいたい、既存の何かと何かを
組み合わせてできているわけで、
知識と組み合わせる能力があれば
アイデアを生むことができるんです。」

頭の片隅にあったようなことが、
自分を助けてくれるんですね。

「記憶力と想像力が相反することのように
思っている人がいるけれど、それは間違いです。
記憶力というのは、組み合わせ方を身につければ、
無駄に思えた記憶も、宝に変えることができます。
だから、記憶力は想像力の敵ではありません。
自分のことをクリエイターと
言えるかわからないけれど、
あえて分類するなら、記憶力クリエイターですよ。」

おお、今までためてきた知識があることで、
組み合わせて仕事に活きているんですね。
shinya.hirano

原因と結果の関係

2017/08/25 21:30
今日は勉強がテーマではありますが、
仕事と勉強っていうのは、
どこかでつながっていると思うんです。

「仕事において、つくづく思っているのは、
中高あたりの勉強で学んだことが、
じつは一番役に立っているんじゃないか、
ということです。
勉強にはいろんな科目があるけれど、
じつは同じことをやっていると思うんです。
すべての教科に共通して、
世の中の『原因』と『結果』の
関係を学んでいるんじゃないかな。
数学だったら、式を立てたら答えが出る。
歴史だったら、ひどい政治をしたら反乱が起きる。
生物だったら、雄しべと雌しべから命が生まれる。
英語や国語は言語だから
ちょっと違うところもあるけれど、
文法や構文があって、
それらは原因と結果になっている。
科目は違っていても、原因と結果について、
いろんな方向から学んでいるというのが、
ほとんどじゃないかなと思っています。

実際、ほとんどの仕事にしても、
こうしたらこんな結果が出る、
という原因と結果についての
予想や考察によって
成り立っているんじゃないかな。
だから、結局のところ、
それって学校で学んだことが
力になっているじゃないかって思うんです。」
shinya.hirano

仕事=勉強

2017/08/25 21:16
大学では勉強をしなかったとおっしゃいましたが、
社会人になってからは、
勉強しないといけないことが多かったのでは?

「僕はコピー講座とかでもよく言うことだけど、
コピーライターの仕事すべてが
脳トレになっているようなものだから、
仕事をしていることが、勉強ですからね。
勉強って、知識を増やすことと
イコールじゃないんです。
1年でだいたい20社とか30社と仕事しますが、
いただいた資料を読むだけでも、
この業種の人はこんなことを考えていて、
だからこんな商品を出そうとしているんだって、
わかってくるわけですよね。
だから、仕事していることそのものが、
勉強しているようなものです。
僕は、人や企業を動かすような
コアアイデアを考えることそのものが、
勉強になっている、と思います。」
shinya.hirano

ものをつくる人。

2017/08/25 21:10
コピーライターを知る以前から、
ものをつくるとか、考えることに
興味があったんでしょうか。

「うちの姉が京都芸大を出ているんですよ。
明らかに子どもの頃から絵もうまかったから、
親の中にも、
姉は絵とかものをつくっていく人間という
意識があったんだと思うんです。
対する弟は、絵も描けないわけだけれど、
学校の成績だけはよかったから、
公務員とか医者とか弁護士とかに
なってもらいたいという思いがあったみたいで。

でも、自分の心のどこかで思っていたのは、
ものをつくることは
絵のうまい下手じゃなくて、考え方だから。
自分にも何かはできるはずと考えていて。
6才か7才の頃に夢見ていた、
『ウルトラマンとかウルトラQとかを
作る人間になりたい』と思っていたような、
その気持ちがずーっとあったんですよね。」

あっ、ウルトラマンになりたいんじゃなく、
ウルトラマンを作る側だったんですね。
shinya.hirano

コピーライターには、
なれると思った。

2017/08/25 21:00
大学に入ってから働きたいと
思っていたとおっしゃっていましたが、
最初からコピーライターになりたかったんですか。

「コピーライターになるって決めたのは
大学3年生のとき。
ものをつくることには意識があったけれど、
完全に決めきれないことがあって。
僕は大学1年の頃に、
橋本治さんと出会ったんです。
漫画の評論誌に押しかけていって、
お金をもらえるわけじゃないけれど
働かせてもらったりして。
そういう、僕みたいな人間が
集まっている雑誌だったんですよね。」

大学時代にいい人と出会って、
自分のやりたいことに
近いお仕事をされていたんですね。

「大学2年の終わりか3年のはじめに、
その漫画評論誌で知り合った女の子から、
『広告批評』の糸井さんの特集号を薦められて、
『ああ、これはすごいや!』と思ったんです。
その衝撃を経て大学3年生の時に、
『ああ、俺はコピーライターになれる』
という確信を持つようになったんです。
僕はすごく現実的な人間で、
この仕事は『できる!』と思っちゃったんですよね。
糸井さんや仲畑貴志さんにはなれないけれど、
その次のクラスにいる人にはなれると思っていて。
王や長嶋にはなれないけれど、
オールスターに出られるような選手には
なれるんじゃないかって(笑)。
だから、博報堂に入った頃なんて、
ずいぶん生意気なヤツが入ってきたと思われて。」

自信があるのに、すこし謙虚なところが
ちょっとおもしろいですね(笑)
shinya.hirano

そして、東京大学へ。

2017/08/25 20:56
成績に上下のあった中学を経て、
高校に進学もされました。

「甲陽は中高一貫校だったから、
高校も同じだったんだけれど、
高校3年間を総合して見ると、
自分が学年1位だったんじゃないかなあ。
つねに1位にいるわけじゃないけれど、
3位以内には必ずいる、みたいな。
毎日コツコツとやるタイプじゃなくて、
定期テストの2週間前を
ある意味で『我慢の期間』みたいにとらえて。」

その期間に集中してやる、
と決めていたんですね。

「どうしたら点が取れるか狙いを定めて、
最初に計画を立てておくんです。
普段の勉強は置いていかれない程度にやって、
ラジオを聴いたりミステリー小説を読んだり、
テレビも観ていたりしたんだけれど、
その2週間だけは、我慢すると決めていました。
つまり、定期テストの期間は、
家から帰ってきて、お風呂とか寝る時間以外は
とにかく勉強を『やる』と決めたんです。
僕にはサボっていた中1の経験があるから、
前日だけ勉強してもいい点が
取れないのはわかっていましたから。
我慢の期間にやることを予め決めていて、
そこに向けて覚えておくことは、
普段の勉強で覚えておくようにする。
そんなスケジューリングが得意だったんです。
今では仕事と遊びがいっしょになってるけど、
高校までのほうが、ONとOFFが
明らかに分かれていた人間だったかもしれません。」

自分だけの勉強のやりかたを身に着けて、
その後、東京大学に入られたんですね。

「僕はほんとうの意味で、
勉強が好きだったわけじゃなかったから、
大学で東大に入ってからは、
早く仕事がしたくって、
勉強はほとんどしなくなっちゃいました。
試験に向けての要領のつかみ方は
自分でもわかっていたから、
単位は必要最低限だけとって、
良くもなく悪くもなく、という成績。
ちょっと言い方は悪いけれど、
事務的にこなしてしまったような気がします。」
shinya.hirano

上がり下がりの激しい
中高時代

2017/08/25 20:52
そして、甲陽学院中学校に進学するんですよね。

「甲陽に入った時のテストの成績も
良かったらしいんだけど、
中学で1位にならなくてもいいやって
思っちゃったんですよね。
中1で勉強はだいぶサボって、
ラジオの深夜放送にハマってました。
親が寝てからラジオを聴いて、
MBSヤングタウン『ヤンタン』とかね。
それこそ、当時は出てきたばっかりの
笑福亭鶴瓶とか、もう面白くて。
だからテストの成績も、ガクンと下がった。
100点満点のテストで20点とかね、
人生でいちばん勉強ができなかった。」

いきなり、ガクンと下がってしまったんですね。
お話しを伺っていると、
ずっと要領よく点数を
取られてきたのかなと思っていました。
成績が下がったことで、
なにか変化はありましたか。

「だから親からも心配されたし、
入学テストの成績が良かっただけに、
学校の先生も心配してくるんですよ。
『谷山くんの実力はそんなもんじゃない』
みたいなことを言われたりして。
さすがにこれはマズイなと思ってました。
そうしたら、中学2年の時に、
親からのニンジン作戦につられて‥‥。」

谷山少年には、
どんなニンジンが効果的だったんですか。

「ステレオコンポがもらえたんです。
絶対にご褒美をもらうぞって、
一所懸命に勉強したら学年1位になっちゃった。
それまで学年の中でもパッとしない成績だった男が、
いきなり学年1位になったわけだから、
それはもう、思いっきり注目されたわけで。
僕にとってはそれがもう嬉しくって、
その嬉しさを失いたくないというか、
ずっと続けたいと思ったんだろうね。」

ああ、思春期の頃でしょうし、
チヤホヤされるのって嬉しいですよね。

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