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森川さん本人に、「タシテン」の開発秘話を聞きました。

第2回 時間がかかったけれど、めぐりあったもの。
──: 任天堂さんとの取り組みは、初めてでしたっけ。
森川:

任天堂さんには、
ずっと目をかけてもらっていたんです。
新しいハードが出たら見においで、
みたいなことで。

──: 「いつか、何かやりませんか」ぐらいの‥‥。
森川:

そうそう。ずっとそういう感じです。
もう岩田さんにしても
宮本さんにしても、
糸井さんの縁で、知り合いになって、
もう十年以上経つんですね。
「ほぼ日」の前から、ですから。
だからつきあいはもうずいぶん長いんだけど、
任天堂から発売されるゲームを作るのは
今回が初めてなんです。

──: 今までなかったのが不思議ですね。
森川: 任天堂さんのゲームキューブまでの時代は、
まだまだオーソドックスで
王道なゲームが多かったので。
それがわかってたから、
積極的に自分からアピールしていくことは
なかったんです。
それが、DSが出る前ぐらいから、
“なんか同じところを見てる感じ”がして、
話してると楽しくて。
その辺から急に積極的に、
任天堂さんでゲームをつくりたいと思いました。
2年ぐらい前かな。
 
──: これはちょっと無理だね、
みたいなことの歴史もあるんですか?
森川:

実はゲームボーイアドバンスのときが最初。
アドバンスはね、携帯機がまだ作りたかったんで、
それはちょっとだけ試みた。
でも、本腰を入れたのはやっぱりDSですね。

──: その頃から、自分がやりたいことと
任天堂さんの考えが近づいてきたと。
森川: うん、DSの性能がどうのこうのよりも、
DSというのは、
今までのゲーム機とは違うんですよ、
という話が、開発がはじまったころから明確でした。
で、ちゃんとしたゲームというか、
本道は任天堂が自分たちで作ると。
それ以外のところで何か一緒にできないかな、
というような話になったので、
それだったらおもしろそうだと思って。
‥‥まあいっぱい企画のボツはありましたけれど。
──: 作るに至らなかったゲームのアイディアは、
いっぱいあったんですね。
森川: でもそれは、
ゲームの世界では当たり前です。
死屍累々たるものがある。
──: ゲームの墓場が。
森川: うん。今、まさに本の企画にしませんか?
といって言われるぐらいに、ネタが残っています。
ニンテンドウのタシテンドウ。
森川: 「タシテン」が今の形になる前、
企画の途中で考えていたのは、
東海道五十三次みたいに
延々と旅をするというものでした。
道を極める感じの。
ちょうど終わりが京都で
任天堂さんも京都だしって。
──: 目標のための道があるわけですね。
森川: うん。
「タシテンドウ(道)」を極めるために
ニンテンドウに旅立つの。
宮本さんが喜ぶんだ、そういう駄洒落を。
あの人、意外な駄洒落を言うんですよ。
──: (笑)。
「タシテンドウ」の行く末は?
森川:

テストプレイをやっててもらっててね、
延々足し算をしていくと、
みんな頭が疲れちゃうんです。
山に登っていくにしても、
京都へ行くにしても、
ちょっと箸休めがないと辛いって。

──: 楽しくても疲れちゃうんですね。
森川: それはダメだなと思って、
ちょっとなんか息抜きをするようなところ、
クッションを入れなきゃいけないなと思って。
そうやっていまのような形になりました。
──: 任天堂の宮本さんも参加しての
テストプレイをされたんですよね。
森川:

そんなことしたのは初めてでした。
ゲームを作る時に、
人の話や意見を聞くなんてことは
本当に初めてで。
自分の中に
すごくプレッシャーがあったんだと思う。

──: それは、よかったんでしょうか、
悪かったんでしょうか。
森川:

うーん。よかった。
せっかく宮本さんが近くにいる状態で
作れることになったので、
ゲームの王道というか、
常識というのを身につけようと思いました。
謙虚に。
今までそんなこと一度も思ったことないのにね。

──: 近くで、というのは?
東京と京都は物理的には遠いですけれど。
森川:

ずっとプロジェクトに
入ってもらっているわけでもないんだけど、
節目節目にチェックしてもらうということですね。

──: 必ずチェックしてくれる人として、
宮本さんがいてくれることになったんですね。
森川:

宮本さんはひとつのゲームに関してというより
任天堂プロジェクトの全体をチェックする
ポジションにいらっしゃるわけですけれどね。
いろいろ意見をいただいて、
任天堂というもののブランドを謙虚に甘受しようと。
だから、
「Muu Muu」(森川さんのゲーム製作会社)特有の
“毒”を好んでくれてた人たちには、
ちょっとなんか物足りない感じがしたかもしれない。

──: ああ。なるほど。
森川:

“何か変なこと”を期待してくれてた人には、
もしかすると今回は期待を裏切ったかもしれない。
でも、まあこの先ずっとこうかと言われると、
その自信もないんですけれど、
今回は敢えて自分で自覚しながらそう作ったんです。
ほら、あんまりお行儀のいいことばっかりしてもな、
というのもあるでしょう?

──: 不良魂ですか(笑)。
森川:

でも任天堂さんの庭でお行儀悪くする方法、
探しているんだけれど、
どうしていいかがまだ分らないんです。

──: それはでもおもしろそうなテーマですね。
森川:

人ごとだと思って
軽く言うね(笑)

 
──: そういうことを求めて
森川さんに依頼したかもしれないですよ?
森川:

うん。
まだ本当に実際の仕事になってからの
おつきあいがすごい短いので、
作法が分っていないところです。
だから、まだちょっとおとなしい。

──: でも、十分、変といえば、変は変です。
森川さんの個性はすごく強いと思いました、
「タシテン」をやってみて。
(つづきます!)

2007-12-28-MON