森川さん本人に、「タシテン」の開発秘話を聞きました。

第1回 数字だけで、ゲームをつくってみたかったんです。
森川: ぼくが本業で
「ほぼ日」に登場するのは初めてですね。
料理とか本とかダイエットとか、
そういうのではお邪魔してるけど。
 
──: すみません、
森川さんの本業がゲームを作る人だと、
「ほぼ日」の読者には
認識されていないかもしれません。
ご自身のウエイトの置き具合はどうですか?
森川: もうゲームのほうが圧倒的に大きいです。
寝る時間以外のほとんどを
ゲームをつくることについやしています。
そうそう、ゲームクリエイターですって
紹介されちゃうことに、
昔ほど違和感はなくなりましたね。
──: ということは、昔は違和感があったんですか?
森川: プロフィールの中に書かれる時に、
グラフィックデザイナーとかクリエイターに
してくださいって言っていました。
──: それは何でよくなったんでしょう。
森川:

やっぱりゲームが昔よりおもしろいからですね。
最初の『がんばれ森川君2号』※1とか
あの辺を作った頃は、自分の仕事として
こんなことは長く続かないだろうと思ったので。
飽きたら止めるんじゃないかなって。
で、作り始めたときの自分の意識に、
「ゲーム機は、ゲーム以外の
 もっと違う遊びができるんじゃないか」
っていうのがあって。
その立ち位置でゲームを作りだしちゃったわけ。
当時のほうが、今より世間とかけ離れてたんですね。

※1がんばれ森川くん2号
1997年発売。
森川さんが最初に手がけたゲームソフト。
人工知能を家庭用ゲーム機で再現。
テレビの中に住むペットPiTに
いろいろなことを教えながら、
PiTの成長を楽しむ。

──: じゃあゲーム以外の何かがいろいろ出てくる
現在のDSの状況っていうのは、
森川さんがやりたいことに
逆に近づいてくれたというわけでしょうか。
森川: そうですね、ゲームじゃないものでも、
何の違和感もないでしょう?
──: ガイドブックとかワインとか、
文学全集であるとか。
森川: 電子書籍ですよね。
ゲーム機に対して、
これまでのゲームの枠を超えたコンテンツを
提供することに違和感がなくなっちゃったので、
今は自分もその大きな常識の中に入ってて、
嬉しいなぁと思うんです。
素直に嬉しいです。
──: 端っこにいたい、っていたわけではなくて、
やりたいことがどっちかというと
昔は端っこだったということなんですね。
森川: そう。で、世の中がこっちへ移動してきてくれた。
本当はそれに合わせて売上も伸びてほしいんだけど。
それでも嬉しいです。
最初の構想は、RPGでした。最初の構想は、RPGでした。
──: 今回の「タシテン」ですが、
足し算でゲームができるとは
思わなかったです。
森川: もともとはね、足し算すらなかった。
数字だけでゲーム作りたかったんです。
──: 数字だけで?
森川: 数字しか出てこないゲームを。
──: ええと‥‥。
森川:

1から9までの数字しか出てこないんです。

──: 数字しか出ないで?
森川: で、RPGを作りたかった。
──: ロールプレイングゲームで、
数字しか出てこない?
森川:

うん。キャラクターは当然数字。
RPGの敵との戦闘は、
要するに足し算引き算してるだけなんです。
攻撃を与えて、
相手のヒットポイントを引き算して、
向こうから攻撃をされたときは、
自分のヒットポイントも引き算して、
回復魔法を使うとプラスするという、
足し算引き算してるだけなんです。

──: それはそうですが、
記号論をもういっぺん記号に戻すという‥‥。
森川:

うん、記号に戻す。
表に露骨に出しちゃって。
で、フィールドなんかも、
要するにどこでモンスターが
出てくるなんていうのは、
フィールドに確率が埋め込んである。
裏側は全部数字でできてるわけです。
だからそれを前面に出した、
数字だけのRPGを作れたらなと思って。

──: それが原型のアイディアですか。
森川:

そう。でもそれは無理だった。

──: どう無理だったんですか?
森川:

まずビジュアルが(笑)。

──: ビジュアル(笑)!
森川:

間が持たないんですね。

──: そのアイデアは、
自分のところで終わらせたんですか。
森川:

いや、宮本茂さんには話しました。
数字というのだけで
1から9だけでなんかまとまらないかと。
でも、全然自分の中で
それ以上の話にならなくって。
だから、もともと数学のソフトが作りたかったわけでも、
足し算ソフトが作りたかったわけでもないんですね。

──: 「数字が主役の何か」を
つくりかったわけですね。
森川:

そう。
じゃあ足して10にするという遊びだけで
わりとパズルゲーム的なのを考えて。
ただ、作りだしたときはあそこまで
パズルゲーム的になるとは思わなかった。
とにかく1から9までの数字だけで何かがしたかった。
だから最初の頃作ってたのも、
本当に実際に1から9の数字しか出てこなかったんだけど、
これがね、女性陣の拒否反応が大きくて。

──: なるほど。数字だけで
絵がなかったんですね。
森川:

数字を見るだけでも、嫌みたいなんだよね。
僕なんか乱数表を見るだけでウキウキするのに。
このギャップはちょっとまずいなって思いました。

──: 数字アレルギーという人は、
もう頑なに嫌なものは嫌、ですからね。
森川:

答えがわかる・わからない以前の問題で。
数字が並んでいると嫌なんだと。
じゃあキャラクターをつけようということになって。
そこからはね、もう工夫の工夫、
工夫の積み重ねで、作っていきました。

──: じゃあ基本となる骨組みは残ってるんですね。
森川:

結果的にパズルゲーム集に
見えたかもしれないんですが、
もうちょっとね、
「MYST」※2っぽくなるはずだったんです。
ちょっと不思議な感じの、
もっと静かなゲームにしようと思っていました。
足して10になるとどうにかなるという世界、
ということだけは教えて、
細かなルールは言わなくていいんじゃないかなと思って。
でも、これがね、
いろいろとテストプレイをしてもらっているうちに、
最初にルールが分らないと。
やっぱり、イライラするんですね。

※2「MYST」
1994年発売。
マッキントッシュで発売された
アメリカ産のアドベンチャーゲーム。
不思議な島に迷い込んだ主人公が
島内にしかけられた謎を解明していく。
ものすごい静かで地味なゲームだが、
醸し出す独特の雰囲気からファンも多い。

 
──: じゃあ本編の繋ぎになるところが、
当初のプロジェクトに近いんですね。
森川:

そうなんです。

(つづきます!)

2007-12-26-WED