下北沢にあるリネンのお店、
fog linen workの関根由美子さんが立ち上げた
「miiThaaii(ミーターイー)」は、
インドのファブリックを使い、
さまざまなアイテムを作るブランド。
今回登場するのは、
とくべつに「weeksdays」仕様にしてもらった、
「miiThaaii」でも人気のコットントップスです。
このトップス、
平置きと着たときの形がかなり変わる、
ちょっとおもしろい形。
そのシルエットの理由や、
関根さんがmiiThaaiiをスタートしたきっかけや、
おどろきだらけのインドでの制作のようすなど、
伊藤まさこさんが聞きました。
写真=有賀傑(商品・モデル)/畑唯菜(取材)
関根由美子
ふだん使いをテーマに、リトアニア産の麻素材で。
シンプルなデザインのキッチンリネンやベッドリネン、
ウエアなど、日々の暮らしに寄り添う布製品と
雑貨を展開する、下北沢「fog linen work」のオーナー。
すべてのアイテムがオリジナル、
関根さんはそのデザインと企画を行なっている。
また、南インドの人たちの日常着
「ルンギ」の生地を使って
いろいろな商品を作るべく、あたらしいブランド
「miiThaaii」(ミーターイー)を立ち上げ、
自らが現地への仕入れに赴いている。
下北沢のショップでは
fog linen workとmiiThaaiiのオリジナル製品のほか、
インドのワイヤーバスケットや雑貨類、
世界各国のアクセサリーやインテリア雑貨を販売。
「weeksdays」では2022年に「ワンピースとかごバッグ① 「かわいい」をつなげる」に登場
■fog linen workのwebsite
■miiThaaiiのwebsite
■fog linen workのInstagram
■miiThaaiiのInstagram
01miiThaii のはじまり
- 伊藤
- 関根さん、
今日はよろしくお願いいたします。
今回扱わせていただくのは
miiThaaiiのトップスですけれど、
miiThaaiiは、
はじめられてどのくらい経ちますか。
- 関根
- 2016年に立ち上げて、
細々ですけれど、もう9年になります。
- 伊藤
- わぁ、もうそんなに。
もともと、fog linen workというブランドを
長く運営されていたと思うんですけど、
どうして2つめのブランドを
立ち上げようと思われたんでしょう。
- 関根
- ちょうど、fog をスタートしてから
17年くらいのときだったんですけど、
毎年オリジナルで作っていた柄や企画に、
なんとなく行き詰まりを感じていました。
それで、頭の中だけで考えるのではなくて、
外へ出かけていって、
いろんなパターンの生地をたくさん見たいと思って、
インドに行くことにしたんです。
そこで、ルンギ(インドなどの暑い地域で
男性が日常的につけるチェック柄の腰布)という
インド綿の布に出会って、
買いつけを始めたのがきっかけになりました。
fog はリネン製品のブランドと決めていたので、
別ブランドとして「miiThaaii」をスタートさせようと。
- 伊藤
- そのきっかけになったルンギは、
関根さんの中では目新しかったんでしょうか。
- 関根
- そうですね。
インドの市場では、
歩いているおじさんたちが
よく腰に巻いているものなんですけど、
それを最初に見たとき、
「あのチェック柄の布、すごく気になる!」
と思ったんです。
市場でも色んな種類のルンギが売られていたので、
実際にいくつか買って使ってみたら、
生地感もすごくよくて。
それで早速、現地の縫製工場で作れるようにしようと
準備を進めていったんですけど、
日本とは文化が違いますから、
頼んだものと違うサンプルができ上がってきたり、
現地へ出向いてちゃんと説明しようと思っても
「英語は話せません」と言われて、
話も通じなかったりしました。
インドは英語が準公用語のはずなんですけど。
- 伊藤
- ええーっ。
いろいろと問題が起きたんですね。
- 関根
- その工場では、それまで白いナプキンしか
縫ったことがなかったみたいで、
「スカートはこう縫って、
バッグはここを折ってこう縫ってください」
という指示書を書いて、日本から送りました。
でき上がる頃を見計らって
サンプルを確認するつもりで現地へ行ったんですけど、
フタを開けてみたら、全然できてなかったんですね。
あらー、と思って。
- 伊藤
- それは大変。
どう対応されたんですか。
- 関根
- そのとき、
でき上がっているはずの商品を撮影するつもりで、
カメラマンの友人に、
スウェーデンから来てもらっていたんです。
ですから、
彼女に無駄足をさせるわけにはいかないし、
何がなんでも作ってもらわなくちゃ!
と思って、朝から晩まで工場にこもって、
簡単なものを作ってもらいました。
- 伊藤
- 関根さん、すごいですね。
- 関根
- それでなんとかでき上がったものを持って
インドの町中に出かけて行って、
知らない人をつかまえて
「ちょっとモデルになってね」と
お願いして撮影させてもらったんです。
すると、それを見ていたまわりの人たちも
「私も、私も!」って集まってきてくれて。
- 伊藤
- いい方たちですね!
- 関根
- そうやって、その場はなんとか
切り抜けられたんですけど、
同じように続けるのは難しいかなと思ったんです。
北インドのほうで
ブラス(真鍮)製品やバスケットなどの
生産を依頼しているサプライヤーさんに、
「こんなことがあって、もう大変だったんです」
ってこぼしたら、
「母が縫製できるから、うちの家でやりますよ」
って言ってくださって。
えー! みたいな。
- 伊藤
- すごい。
話してみるものですね。
- 関根
- あっという間にミシンを買ってくれて、
いまだにバッグとか小物は作ってもらっているんですけど、
服となるとやっぱり難しかったんですよね。
思ったようにはいかないので、
「miiThaaii はのんびりムードで、
できる範囲でやっていこうかな」なんて思っていたんです。
そうしたらしばらくして、
ニューヨークの展示会で私がブースで立っているときに、
素敵なインドのおじさまがやって来て、
「ジャイプールで縫製工場をやってるんだけど、
機会があったら一度来ませんか」
と言われて。
ジャイプールはインド北部のラジャスタン州の州都で、
マハラジャが統治していた世界遺産の町なんです。
- 伊藤
- 次から次へと出会いがあるものですね。
- 関根
- しかも私、もともとその翌月に
ジャイプールに観光で行く予定にしていたので、
すごい偶然だなとびっくりしました。
それで実際に行ってみたら、
すごく近代的な工場だったんです。
そこはたまたま、
ブルックリンで洋服を作っている私の友人も
縫製を頼んでいると聞いたので、
それなら安心だと思って、
お願いすることに決めました。
fogと差別化するために、
洋服のデザインは友人の國安佳子さんにお願いして、
それでやっと、今お店に並んでいるようなものが
作れるようになったんです。
- 伊藤
- そんな紆余曲折があったんですね。
じゃあ、今は少し安心できるようになりましたか。
- 関根
- 私もそう思っていたんですけど、
たまにお願いしたものと違う色が納品されたりするので、
油断大敵です。
納期も、かなり余裕をもって依頼したりして、
お客さまにご迷惑がかからないように調整しています。
- 伊藤
- わたしたちの見えないところで
そんなご苦労をされながら、
それでもこちらの希望にあわせて
購入させてくれる関根さんって、
ほんとうにすごいなと思います。
仕事もいつも早くて。
- 関根
- それはインドの人たちにも言われました。
「由美子はメールするとすぐ返事をくれるから助かる」
って。
自分たちもそうしたいけど、
国民性だからできないんですって(笑)。
- 伊藤
- ふふふ。
日本にいるわたしたちもそう思うんだから、
インドの人たちにとっては
なおさらでしょうね。