新居さんの椅子

子どもの頃の椅子の記憶は3つあって、
ひとつは、
座面と背もたれが赤い、子ども椅子。
(今でも実家の屋根裏部屋に)

ふたつめは、
小学一年生の時に買ってもらった、
ダイニングチェア。
(大人の仲間入りができたようで、
すごくうれしかったなぁ)

最後のひとつは、
テレビを観たり漫画を読む時に最高! な、
一人がけのチェア。
(父から拝借してました。)

その椅子が「ニーチェア」と
呼ばれていることを知ったのは、
ずいぶん経ってからのこと。

デザインしたのは、
新居 猛。

生涯にわたって、
組み立て式の折り畳み椅子を作った新居さんですが、
そこには、
「出来るだけ・7則」という、
心がけがあったとか。

「出来るだけ少ない部材で」

「出来るだけ簡易な構造で」

「出来るだけ丈夫に」

「出来るだけ少ない梱包材で」

「出来るだけ少ない輸送費で」

「出来るだけ安い価格で」

「出来るだけよい座り心地で」

なんと、この椅子に、
そんな想いがたくされていたとは!

この椅子との出会いから、
40年あまり。
長く愛される秘訣って、
やっぱりあるのだなぁ……というのは、
使ってみるとよく分かる。
座り心地だけでなく、
折り畳まれた様子も美しいんですよ。

伊藤まさこ

2024-01-26-FRI