パリからやってきたMAISON N.H PARIS
(メゾンエヌアッシュパリ)の、
ふしぎなかたちをしたバッグ。
実用品なの? それともアクセサリー? 
これ、荷物の少ない伊藤まさこさんにとっては
「いつものバッグ」なんですけれど、
荷物の多い人はどう思うんだろう‥‥。
そこで、編集者でありライターでもある
(伊藤さんから見たらふだんの荷物が多めで、
しかも、すてきなバッグを使っている)
一田憲子さんのところに持って行きました。
一田さん、このバッグ、どう思いますか?
「weeksdays」初登場となる一田さんですけれど、
伊藤さんとは長いお付き合い。
ふたりの気の置けないトーク、どうぞおたのしみください。

一田憲子さんのプロフィール

一田憲子 いちだ・のりこ

会社員を経て編集プロダクションに転職、
フリーライターとして女性誌、
単行本の執筆などを手がける。
2006年、企画から編集、執筆までを手がける
雑誌『暮らしのおへそ』を、
2011年に『大人になったら、着たい服』
主婦と生活社で立ち上げ、ともに、現在も刊行中。
そのほか「天然生活」「暮らしのまんなか」
「クレア」「LEE」などで執筆。
東京をベースに、全国を飛び回り取材を行なう日々。

著書に『人生後半、上手にくだる』
(小学館クリエイティブ)

『大人になってやめたこと』(扶桑社BOOKS文庫)
『暮らしの道具の選び方 明日を変えるならスポンジから』
(マイナビ文庫)

『大人の片づけ できることだけやればいい』
(マガジンハウス)

『暮らしを変える書く力』(KADOKAWA)
など多数。

03
40歳の壁、60歳からの冒険

──
さきほどおふたりから
「大人」というキーワードが出ましたね。
社会人になったら大人だ、
っていう意味での「大人」とはちがい、
おふたりのおっしゃる大人って、
もう1段階上の「成熟」みたいな部分が
あるように思います。
一田さんの『大人になったら、着たい服』もそうですし。
その感覚が近いですよね、おふたりは。
伊藤
そうなんです。
そもそも『大人になったら、着たい服』っていうのは、
一田さん、どうしてつくろうと思ったんですか?
一田
40になったときに突然、いままで着ていた服が
全く似合わなくなっちゃったんですよ。
よくあるじゃないですか、40の壁って。
伊藤
よく言いますよね。
一田
しかも、40歳の頃って、
それまでひたすら駆け続けてきたところから、
ちょっと立ち止まる年齢でもある。
そして、フッと振り返る。
これから年をとっていくのかな、さみしいな、みたいな。
そのときに、すごいオシャレで、
キラキラした先輩がいることに気づいたんです。
じゃあ、40歳から何を着たらいいのかってことと、
その先の人生の後半を
どうキラキラ生きていくかを聞く本にしようと、
立ち上げたんですよ。
伊藤
なるほど。じゃあそのときは40歳の一田さんが
憧れの先輩たちを取材していたけれど、
いまはその一田さんが、かつての先輩の年齢に‥‥。
一田
そう! 
伊藤
じゃあ、かつては取材をした
「ちょっと上の人たち」の年齢層を探すと、
いまは年下になる。
でもそういう人を取材することは
だんだん少なくなりましたか? 
一田
少なくなりました。
最初立ち上げたときは40歳以上を取材していたんですが、
いま50歳以上になって、
しかも60、70代がけっこう増えているんです。
伊藤
ほら、一田さんにご紹介した、志賀朋子さん
「weeksdays」では
トレンチコートを着てくださって。
一田
そう、志賀さん! 
ご紹介いただきありがとうございました。
めちゃくちゃカッコいいですよね。
伊藤
性格もカッコいいんです。
一田
そう。セレブなんだろうけれど、
生活感もちゃんとあるかたですよね。
伊藤
あまりに素敵だったから
「一田さん、このかた取材したほうがいいですよ!」って、
勝手におすすめしたの。
一田
写真を拝見して「絶対取材する!」って(笑)。
伊藤
「この人とこの人、つながったらいいだろうな」
って思うと、バンバンおすすめします。
一田
だからご自分の人脈も広がっていくんですよね、きっとね。
伊藤
それが財産ですよって尊敬するかたから言われました。
一田
いいことですよ。
誰かに誰かを紹介するって、
自分が抱え込まないからできる循環ですよ。
伊藤
確かに! 紹介した人同士が
わたし抜きのところで仲良くなってるのもうれしいし。
「私が紹介したのに」という人もいますけれど、
あれはどうしてだろうって思うんですよね。
一田
いる(笑)。私、若い頃はそう思ってたかも。
いま、自分で、そう思うんです。
伊藤
そうなんですか。
一田
「私が取材した人なのに、あの雑誌でも!」みたいに
チラッと思ってた時期もあったんですよ。
いまは「どうぞどうぞ」と思えるようになりました。
伊藤
そっか、そんなふうに思う時期、
わたしもあったのかなあ。
言ってもらうとうれしいですよね、
「紹介していただいたあのかたと、
こんど、こんなお仕事をするんです」とか。
一田
それ、絶対、大事ですよ。
それがないのが多すぎるの。
それを言ってさえくれれば、ということが。
伊藤
わかります。わたしも伝えるようにしています。
一田さん、今回出版なさった
『大人になったら、着たい服』では、
あたらしい発見はありましたか? 
一田
年上の人たち、それこそさきほどの志賀さんも、
「コム デ ギャルソンを買うようになったのは
60歳を過ぎてから」とか、
みなさん年をとってから
新しいことを始めているんだなぁということが、
すごく刺激になりました。
伊藤
なるほど。
一田
「年をとったからこそ、
いままで着たことのない服を着るのよ」みたいな。
伊藤
先日「saqui」の岸山沙代子さんが、パリに行って、
初めてシャネルできちんと会話をして
買い物ができたって喜んでいたんです。
それこそ成熟ですよね、彼女もいま40代、
学生でフランスに住んでるときはお金もなかったし、
いまやっとできました、って。
岸山さんって面白いんですよ、
「私はホントにフランスに行って良かったんだろうか」
なんて、帰ってきてから言ったりしていたんです。
クヨクヨするの。
一田
あ! 私もクヨクヨ体質だから、よくわかります。
伊藤
え? 一田さん、クヨクヨ体質?!
一田
クヨクヨ体質ですよ。
だからまーちゃんのクヨクヨとは真逆の性格を
いつも羨ましいと思ってます。
学ぶところが多い! 
だってこの「weeksdays」を立ち上げるときの潔さ。
ほかの連載の仕事を整理なさって、これ1本でって、
思い切った舵のきり方だったじゃないですか。
失敗したらどうしよう、っていうことが、ない。
私だったら、「これで食べられなくなったらどうしよう」
みたいになりますよ。
伊藤
そういえばそうですね。
あんまり心配をしていないというか、
自分が大人になっていったら、
そのぶん、欲しい物がついてきて、
ずっと仕事が続いてくれたらいいなと
思っているんです。
一田
そういうところがすごい。
私だったらホラ、枯れていっちゃって、
何にもなくなっちゃったらどうしよう? 
とか思うんですよ。
伊藤
いくらでもありますよ! 
軽いお鍋とか、杖とか、老人ホームとか。
一田
確かに。
伊藤
楽しくやりたいじゃないですか。
みんな平等に年をとっていくのに、
なぜわたしが入りたい老人ホームがないのかなと
疑問に思っているんです。
一田
ホントそうですね。
伊藤
軽井沢の須長檀さんたち
「老人ホームをつくりたい」とおっしゃっていて、
一田
軽井沢なら、できそうですよね。
お医者さまの稲葉俊郎先生とか、
すすんだ考えをお持ちのかたがいらっしゃいますし。
伊藤
軽井沢病院の稲葉先生ですね。
「Karuizawa hospital without roof」
という活動をされていて、
須長さんたちは「konst」という立場で
お手伝いをなさっているんだそうです。
町ぐるみでいろいろなことをなさっているから、
ホントにできるんじゃないかなぁって期待しているんです。
年を重ねた人たちばかりじゃなくて、
いろんなモノづくりの人が
ひとつの場所にいるっていうのを
目指しているそうですよ。
(つづきます)
2022-12-20-TUE