パリからやってきたMAISON N.H PARIS
(メゾンエヌアッシュパリ)の、
ふしぎなかたちをしたバッグ。
実用品なの? それともアクセサリー? 
これ、荷物の少ない伊藤まさこさんにとっては
「いつものバッグ」なんですけれど、
荷物の多い人はどう思うんだろう‥‥。
そこで、編集者でありライターでもある
(伊藤さんから見たらふだんの荷物が多めで、
しかも、すてきなバッグを使っている)
一田憲子さんのところに持って行きました。
一田さん、このバッグ、どう思いますか?
「weeksdays」初登場となる一田さんですけれど、
伊藤さんとは長いお付き合い。
ふたりの気の置けないトーク、どうぞおたのしみください。

一田憲子さんのプロフィール

一田憲子 いちだ・のりこ

会社員を経て編集プロダクションに転職、
フリーライターとして女性誌、
単行本の執筆などを手がける。
2006年、企画から編集、執筆までを手がける
雑誌『暮らしのおへそ』を、
2011年に『大人になったら、着たい服』
主婦と生活社で立ち上げ、ともに、現在も刊行中。
そのほか「天然生活」「暮らしのまんなか」
「クレア」「LEE」などで執筆。
東京をベースに、全国を飛び回り取材を行なう日々。

著書に『人生後半、上手にくだる』
(小学館クリエイティブ)

『大人になってやめたこと』(扶桑社BOOKS文庫)
『暮らしの道具の選び方 明日を変えるならスポンジから』
(マイナビ文庫)

『大人の片づけ できることだけやればいい』
(マガジンハウス)

『暮らしを変える書く力』(KADOKAWA)
など多数。

01
レシーブ、トス、アタック!

伊藤
先日、コロナに罹られたと聞きました。
たいへんでしたね。
一田
そうなんですよ。いよいよ罹ってしまって。
伊藤
わたしも3月に罹ったんですが、
どういうとこから? って思いますよね。
お仕事のこともたいへんでしたでしょう。
一田
ちょうど『暮らしのおへそ』の取材が佳境で、
たくさん予定が入っていたんです。
伊藤
家に篭らなくてはいけない1週間と、
出かけなくちゃいけない時期が
重なっていたんですね。
それはたいへん‥‥! 
一田
そうなんです、まさしくその1週間! 
それでリスケをしたり、
出張をスタッフに代わってもらったり。
ほんとうは私が行くべき
福岡や熊本の取材も行ってもらいました。
でも便利な時代ですよね、
リモートでつなげば、現場の様子もわかるし、
指示をすることもできますから。
伊藤
わたしのときは、撮影スタジオと自宅を
リモートでつないで、
現場から「ほぼ日」のみんなが
手持ちのiPhoneで映像を送ってくれるのを、
逐一「もうちょっと右」みたいに
スタイリングの指示をしていたんです。
長く映像を見つめていたら
最後に酔った感じになっちゃいました。
一田
わかります! 
基本的には絵コンテを渡しているから、
大丈夫なんですけれど、見ていると、
「そこやっぱりもうちょっと撮って」とか、
アイデアがね。
伊藤
ほんとうは、そういう取材や撮影って、
画面越しでは伝わらない何かがあるんですよね。
一田
確かに。もどかしいですよね。
伊藤
リモートで現場の空気感までは伝えるのが難しい‥‥。
伊藤
床の間に、家具が、あつらえたかのように
ピッタリですね。
これは医療用の戸棚ですよね。
一田
たぶん、いちばん最初は
普通の水屋箪笥だったと思うんです。
それを、2つを1つにくっつけて、白く塗って、
病院で使っていたんだと思います。
伊藤
なるほど。
一田
それにしても、まーちゃん(伊藤さんのこと)、すごい。
こういう取材をして、
撮影もしてコンテンツをつくって、
毎週、商品を提案しているわけでしょう? 
お忙しいというお噂、聞いてますよ。
伊藤
それは一田さんも同じですよ! 
わたしは、立ち上げの時のたいへんさに比べたら、
てんやわんやの時期はもう過ぎた感がありますよ。
ちょっと事件が起きても、
チームでなんとか乗り切っています。
‥‥って、一田さん、さすが! 
わたしが質問されちゃう。
きょうはわたしが取材に来たんですよ(笑)。
一田
(笑)いいじゃない? 
伊藤
(仕切り直して)今日、なぜ伺ったのかと言いますと、
一田さんが、「weeksdays」で販売した
AMIACALVA(アミアカルヴァ)のリュック
お使いだと知ったところからなんです。
一田
そう! あれ大好きです。
3つ、持ってます。
伊藤
えっ、3つ?
一田
白を2つ買って、黒が欲しくなって、
それは「weeksdays」にはないので、
別のところから買ったんです。
伊藤
わぁ、よかった。
一田
白がまた欲しいので、
また企画してくださいね。
白はやっぱり定期的に買い替えないと。
AMIACALVAの加藤一寛さんが、
白いカバンはスニーカーと同じで、
数年使って汚れていたら買い替える感覚で、
とおっしゃっていたでしょう。
伊藤
はい、汚すのをこわがらず。
気を張らずに使ってください、
というような気持ちで
価格を設定なさっていると
おっしゃっていましたね。
一田さんがリュックだなんて、
ちょっと意外な気がしましたけれど、
そうですよね、取材にも行かれるし。
そもそも荷物は多いほうですか? 
それとも、いつも、ちっちゃいほうですか? 
一田
(きっぱり)多いほうだと思います。
伊藤
パソコンも持ち歩いたりなさいますか? 
一田
パソコンまでは持たないです。
必要なときは
コロコロ(キャスターつきスーツケース)で移動します。
でも最近はiPadを持ち歩いているんですよ。
伊藤
ふむふむ。
一田
コロナになってから荷物が増えました。
ウェットティッシュや消毒シート、
スプレーにマスクの替え、でしょ? 
そしていつもの取材ノート、
ICレコーダー、見本誌を入れると、
今までのカバンに入らなくなっちゃった(笑)。
伊藤
なるほど。
一田
まーちゃんのまわりも、
編集者のお友達とか、
カバンの大きい人が多くないですか。
伊藤
そうですね、大きいですね! 
普通にカバンを持って、
さらにサブバッグ持って、みたいな。
一田
そうなんですよ。編集者って。
──
さらに出版社の紙袋を持っていたりしますよね。
一田
そう! まーちゃんみたいに
お財布と口紅だけっていうわけにはいかないの(笑)。
もちろん、それに憧れるんですけど。
伊藤
仕事柄、わたしも取材をするんですが、
最近はiPhoneの「ボイスメモ」で録音です。
メモ帳は持たなくなりました。
一田
それを、自分で、文字に起こすの?
伊藤
取材中に印象深いこと、
ぜひ原稿に書いておきたいことは、
覚えているんです。
だからそれを急いで書く。
たいてい、それで原稿ができあがります。
もちろん細かいことで
「あれはなんとおっしゃったかな‥‥」
と曖昧な部分は聞き直しますよ。
一田
そっか。覚えているんですね。
そして、すぐに書く?
伊藤
はい、忘れないうちに。
でも一田さんも、お仕事、
すさまじいスピードなんですよね。
一田
そうかな? 
そういえば、金沢の本。
『あした、金沢へ行く』
を一緒につくったときは、
2人のメールのやり取りが、
レシーブ、トス、アタック! みたいな
スピード感でしたよね(笑)。
伊藤
けっこう時間がなかったから、
わたしがワーって書いたものまで
一田さんに、まとめてもらったんです。
──
辻和美さん、竹俣勇壱さん、
利岡祥子さん、岩本歩弓さんの
在住のみなさんに案内していただいた金沢を
伊藤さんの目線でまとめた本ですよね。
一田
そうなんです。取材から帰った何日後かに、
どんどん、ブワーって、
大量の原稿が送られてくるんです。
それを私がまとめて、またワーって戻して。
伊藤
急がないと、忘れちゃうから!
一田
もう、2人で猛スピードで原稿のやり取りをして、
入稿に漕ぎ着けました。
なにしろ書くのも早いし、
ほんとうによく見ているし、
記憶力がすごいと感心します。
伊藤
それは、全然興味のないものは
まったく目に入らないからですよ。
そういうものは、まったく覚えてない。
人もそうで、好きだなって思った人は覚えられるのに、
長く仕事をしてきたなかで、たまに、
「ちょっとこの人には、近寄らないようにしとこ」
みたいな方も、いるんですよ。
愚痴が多かったり、噂話ばかりしていたり。
一田
いますよねぇ。
伊藤
そういう人については、記憶しないんです。
一田
おもしろい! わかります。
そういう人に偶然再会して声をかけられて、
「‥‥どなただったかな」ということもあります。
──
一田さんも伊藤さんも、
二度目、三度目にお目にかかるかたでも
「どこどこ社の誰それです」って
自分から名乗られるんじゃないですか。
一田
そうですね! 確かに。
「わかってますよ」と言われてもいいから、
言っちゃったほうがいいと思います。
伊藤
そうかもしれないですね。
そういえば有名な俳優さんもそうなんですよ。
フルネームで「あっ! 何々誰それです、
お久しぶりです」みたいにおっしゃる。
もちろんわかりますよ! ってこちらは思うけれど。
──
芸能の世界は、大御所のみなさんも多いので、
私たちが有名と思っている人気スターでも、
大御所の前では名乗るんじゃないですか。
そういう気風というか。
メディアの仕事で言うと、著名な方でも、
編集やライターの下積みの経験がある人は、
名乗ってくださるように思います。
一田
そうかも。自分が困った経験があるからですよね。
相手が自分をわからなかったら困るだろうなと。
伊藤
それでね、一田さん、メールのお返事もすごく速くて。
一田
お互い早起きだからよ。
伊藤
そう、朝やりとりしてると、
5分後ぐらいに返信があります。
一田
私も同じよ? 朝、メールをあけたら、
いちばんにまーちゃんがいるんだもの。
──
おつきあいが長いんですね、お2人は。
伊藤
最初にお会いしたの。十何年前ですよね。
一田
それこそ『暮らしのおへそ』の取材ですよ。
18年ぐらい前です。
この家に引っ越してきた頃ですから。
──
あの、またカバンの話から遠ざかっています。
一田
そうだ!
伊藤
ほんとう!!
(つづきます)
2022-12-18-SUN