伊藤まさこさんが、
気持ちのいいパジャマをみつけました。
ブランド名はpageaérée(パージュアエレ)。
パリ在住のフォトグラファーである
篠あゆみさんが、
みずからの入院の経験をもとにつくった
「うんと快適な」パジャマと部屋着のブランドです。
パリと東京をむすんで、
このパジャマができるまでのことを中心に、
たくさんお話をうかがいました。

篠あゆみさんのプロフィール

篠あゆみ しの・あゆみ

多摩美術大学卒業後、スタイリストに。
1999年の渡仏をきっかけにフォトグラファーに転身。
2年半にわたった自身の闘病経験を生かして、
2021年春、着心地のよさを追求したパジャマのブランド
「pageaérée(パージュアエレ)」を発表。

●pageaéréeのウェブサイト

02
こういうパジャマを待っていた

伊藤
実際pageaéréeを立ち上げて、
着始めたかたの感想っていうのは、
みなさん、どんな感じでした?
Tシャツで寝ていた自分に戻れない、
っておっしゃってくださるかたがいらっしゃいました。
あと、ご病気のかたからも、
こういうのを待ってました、っていう感想を
SNSを通じてくださったかたがいらっしゃいましたね。
リピートしてくださるかたもいらっしゃるんです。
パジャマって、そんなに買い替えないんじゃないかな、
と思っていたんですが、わりと多くのみなさんが
「もう一枚欲しいと思ってたんです」と。
伊藤
実際、わたしも母にプレゼントしたいなと思いますし、
もし自分や友達が入院するときは、
すごくうれしい贈り物っていうか、
何にも代え難いものになるにちがいないと
着ていて分かりましたよ。
ありがとうございます。
それから、授乳ができるようになっているので、
産む前も、妊娠中も、
生まれた後に授乳するのにも、
すごく助かりましたっていう意見も。
伊藤
たしかにそうですね。
いろんな感想がとどきますよ。
pageaéréeではガウンも作ったんですが、
このパジャマに着替えて、
そのガウンを羽織ったとき、
一日の終わりにすごく贅沢で
極上な時間を過ごしてると思える、って。
伊藤
そうなんです! よくわかります。
pageaéréeのガウンは、長袖と、
チョッキみたいなタイプを持っているんですが、
寒いけど暑い、暑いけど寒いみたいな日に、
すごいちょうど良くて、助かりました。
6月ぐらいまで着ていましたよ。
ほんとですか!
伊藤
あれもいつか「weeksdays」で
扱わせていただけたら嬉しいです。
はい、ぜひ(笑)! 
そういえば、いいガウン、ないんですよね。
伊藤
ないですね。
どうしてだろう? 
入院中も便利ですよね。
そうなんです。
闘病中は、いいガウンがなかったので、
病院ではロングカーディガンを着てました。
でも軽くて気持ちのいい
ぱっと羽織るものがあったらいいなって、
入院してるときもずっと思っていたのが、
ガウンづくりにつながったんですよ。
伊藤
そういえばファッションのスタイリストさんで、
タレントさんや女優さんを担当なさっているかたが、
着替え前にメイクをするとき、
ちょっと羽織ってほしいようなガウンに
いいものがぜんぜんないと言ってました。
でも篠さんのはいいですよね。
はい、ぴったりですよ(笑)!
伊藤
すごいやさしくされてる感じがして、
うれしいんです。
ありがとうございます。
日本でガウンを探してデパートに行くと、
いまだに、パイプをくゆらすみたいなのが(笑)。
あれ、すごく重いんですよ。
石原裕次郎さんが着てらっしゃったみたいな。
伊藤
ブランデーを片手にね。
ところで、パリの人は
どういう寝姿なんですか、
パリの人は、
パジャマはやっぱり日本と同じで、
着てるかたと、ぜんぜん着てないかたがいます。
裸で寝るっていうかたも多いんですよ。
何も着ない。
伊藤
へぇー。
ガウンはどうですか?
ガウンはよく「キモノ」といって、
日本の古いものを羽織る人も見かけます。
でもいわゆるガウンは、パリでも意外にないんです。
昔の映画に出てきそうな、
髪の毛を巻いてる女優さんが着るような‥‥。
伊藤
ブリジット・バルドーみたいな?
そういうイメージのものをいまだに売ってたり、
すごく極端ですね。
中間がないっていうか。
男性ものでも
シャツスタイルでちょっと長いものとかを
売ってますけど、どれだけのかたが、
それを本当に着てるのかどうか、
ちょっと分からないですね‥‥。
伊藤
わりとごわごわとしたタオル地の、
ホテル仕様のガウンにも憧れるんですけど、
どうやって乾かせばいいかわからないし、
そもそも重いし。
首まわりがモコモコですよね。
そういえば、バスローブも、
次の夏は作りたいなと思ってるんです。
伊藤
ぜひぜひ! 
話をパジャマに戻しますが、
今回、「weeksdays」では
ワンピース型とユニセックスのいわゆるパジャマ型、
2つのパターンを取り扱うことになりましたね。
それぞれ、いいところがありますね。
どちらも、パジャマ1枚で歩いていても
きれいに見えるっていうことを大事にしています。
ワンピース型はとくにシルエットのうつくしさ。
そして、胸の開きがあるので授乳もできます。
もともと私の病気って、
2種類の癌だったんですけど、
最初の乳癌のときの経験で、
脱がなくても治療ができるような
長さにしているんです。
そしてユニセックスのパジャマに関しては、
ご家族でお揃いで着たいっていう要望を
いただいていたのがつくるきっかけです。
pageaéréeではサイズが
S、M、L、XLとありますが、
「weeksdays」では女性向けということで
パジャマ型はSとMの2サイズ、
ワンピース型はMとLの2サイズを
選んでいただきました。
伊藤
なるほど。
上下のパジャマは、
上の丈が長いほうがいいみたいな
シチュエーションが入院中にはある、
っていうお話もありましたね。
たとえば出産のときには、
ズボンを脱がなくちゃいけないような
シチュエーションもあって、
普通のパジャマだとちょっと、って。
そうですね。
なのでユニセックスのパジャマは
上着の丈を若干長めにしてあって、
お尻が隠れるようになっています。
あとはポケットが特徴かもしれませんね。
私、洋服でもポケットがないとイヤなので、
パジャマでも絶対ポケットをつけたかった。
なにも入れないにしても。
伊藤
こういう服のポケットって
普段そんなにありがたみが
あるわけじゃないんだけれど、
ないタイプを着たときに、
「あ、ない!」って思うんですよね。
そう。
あれ? ないの? って
ちょっと指を引っ掛けたりしたいんですよ。
伊藤
重要なものなんだなって、
ないと初めて気が付きます。
ユニセックスの方は、女性向けのサイズですが、
着たかたがいいと思ったら、
「あ、じゃあこれを夫にも」みたいな感じで
じわじわ拡がってくれるといいですよね。
そうなんです。
伊藤
素材に関しては?
これは三重県でつくっている
オーガニックの和晒(わざらし)の
二重ガーゼです。
伊藤
それはどうやって探したんですか?
これは、
パジャマをやりたいなと思ったとき、
お会いするかたみんなに
実はこんなことを考えていて、
みたいなことを話していたんですよ。
そのなかで、
スタイリスト時代に
お仕事をさせていただいてたかたの旦那さんがいらして、
アパレルの会社をなさっていたんです。
そのかたとご飯を食べたとき、わたしのアイデアを聞いて、
うちで応援するからやってみれば、
とおっしゃってくださり、
ご一緒させていただくことになりました。
この生地は、その会社で
ずっとオリジナルで作っている生地なんですよ。
伊藤
そんなご縁が!
そのかたは、10年以上前から
オーガニックコットンと、
再生できる生地を開発しているほどの
第一人者なんです。
ガーゼの生地ってほかにもあるんですけれど、
あの柔らかさのものは、
なかなか市販では見つけられなかった。
じつは2年以上の試行錯誤があって、
最後にあの生地と出会えて、
それまで暗礁に乗り上げてたことが、
すっと解消したんです。
(つづきます)
2022-08-23-TUE