今回、「weeksdays」で
帽子とサロペットのモデルを
引き受けてくださった菊池亜希子さん。
その撮影終了後におこなった
伊藤まさこさんとの対談をおとどけします。
テーマは、ファッション、そして大人になること。
ひとまわり世代のちがうふたりですが、
おしゃれに対する姿勢には、
すごく似ているところがあるみたいですよ。

菊池亜希子さんのプロフィール

菊池亜希子 きくち・あきこ

女優/モデル。
1982年岐阜県生まれ。
モデルでデビュー後、女優として
映画、ドラマ、舞台、CMで躍する一方、
文筆家としても活躍。
編集長を務めた
『菊池亜希子ムック マッシュ』(小学館)は
2012年から16年にかけて年2回、
10号を刊行し、累計56万部を売り上げた。
著書に『へそまがり』(宝島社)
『おなかのおと』(文藝春秋・Kindle)
『好きよ、喫茶店』(マガジンハウス)
『続・好きよ、喫茶店』(マガジンハウス)などがある。

●Instagram

その3
わたしのヲタ活。

伊藤
‥‥そうだ、「weeksdays」のチームに
あっこちゃんの大ファンがいるんですよ。ね。
──
はい。私は、高校2年生ぐらいのとき、
本屋で『マッシュ』(菊池さんが編集長をした雑誌)の
創刊号を見つけたんです。
そこで初めて菊池亜希子さんのことを知りました。
「しりとりコーデ」にびっくりして。
菊池
しりとり。うん、そうなんです。
──
コーデしたなかから1つだけアイテムをのこして、
次のコーデにいかすんです。
そうやってぜんぶを着回したらゴール。
その着こなしが素敵で、
それこそオーバーオールを合わせたり、
メンズライクもいけるし、
ちょっとガーリーなものもうまくご自身に合わせて。
とても真似できないと思いながら、
でも、ひたすら読み込んでいました。
伊藤
なかなかそっくりは真似できないよね。
──
できないです。
でも、すごく参考にしてました。
『マッシュ』は、
洋服を着ること自体がワクワクすることで、
こんなに楽しいんだ、と教えてくれた雑誌です。
菊池
へえー! 嬉しい! 
伊藤
いい話。
菊池
ありがとうございます。
高校生のときに『マッシュ』を読んだっていう人たちが、
立派に大人になられて、こうして各所で活躍されてて、
ほんと感慨深いです。
伊藤
本といえば、今は、
アイドルの写真集を作ってるんでしょ?
菊池
そう。作ってるんです。
蒼井優ちゃんとふたりで。
伊藤
そうなんだ。
なんていうアイドルなの?
菊池
「アンジュルム」っていうアイドルグループなんですが、
そもそも出る予定のなかった本なんですよ。
メンバーの笠原桃奈さんが卒業するって知って、
マネージャーさんに
「写真集は出る予定あるんですか」って訊いたら、
「ない」って言うから、私と優ちゃんで
「あり得ないよね、あの子が卒業するのに
写真集が出ないなんて!」と、
企画書を出したんです。
2人で直談判。
伊藤
ファンだったのね。
菊池
そうです。大ファン。
伊藤
そんな2人に言われたら、企画も通る。
菊池
といっても、
「予算をこれ以内で収められるのであれば‥‥
内容はお任せします」という感じでした。
それで「やらせてください!」って言って。
だからぜんぶ、やっているんです。
伊藤
ぜんぶ。
菊池
ぜんぶです。どんなふうに撮るか企画を立て、
アートディレクターを大島依提亜さん、
写真を高橋ヨーコさん、
ヘアメイクを茅根裕己さんにお願いして。
伊藤
洋服のスタイリングは?
菊池
スタイリストさんにお願いする予算はなかったから、
私と優ちゃんの私服をかき集めて
スタイリングを組みました。
伊藤
スタジオで?
菊池
いえ、ロケなんです。
主に鎌倉、葉山、逗子で撮影しました。
撮影をしたら、写真選びをして、
編集して、入稿して、校正して、
そして校了・発売がもうすぐです(*)。
苦手だけど、お金のやりくりも
頭ひねって考えています。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(*)菊池亜希子さん、蒼井優さんがダブル編集長をつとめる「アンジュルム」の笠原桃奈さんのフォトブック『Dear sister』は、オデッセー出版より、笠原さんが卒業した11月15日に発売されました。
ちなみに菊池さん、蒼井さんは2019年に『アンジュルムック』(集英社)という本の編集も担当しています。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
伊藤
すごい。
そういうあっこちゃんの活動は、
マネージャーさんとしては
どういうふうな位置づけなんですか。
──
完全に治外法権です。会社の中で。
伊藤
そうなんだ!
菊池
ほんとに。
私と優ちゃんがヲタ活で
大暴れしてるようなものです。
伊藤
大暴れ! もしかして‥‥ノーギャラ?
菊池
製作費の中にギャラも含まれているので、
やりたいことをやればやるほど、
ギャラは減っていく方式です(笑)。
でも、彼女の魅力が伝わるいい本が作りたい
という気持ちが第一だったので、
それは全く問題なかったです。
伊藤
本当に好きなものを形にするって、
わかる人にはちゃんとわかりますよ。
伝わってほしい人のところには、
本当のことが伝わると思う。
それが一番ですよ、
本当にやりたいことをやるに尽きる。
あっこちゃんは
いろいろな仕事をなさっていると思うけれど、
その仕事の選び方はどうですか? 
やりたい、やりたくないで決める?
菊池
そうです。
伊藤
じゃあマネージャーさん的には、
「これ断るの?」みたいなこともある? 
──
いえ、客観的な判断をしていると思います。
もちろん自分が好きということはあるでしょうけれど。
伊藤
そもそも「これは違う」という仕事は来なさそう。
菊池
それはそうですね。納得! みたいなところで
声をかけてくださいますね。
──
菊池のことが好きだという方が、
仕事の依頼をしてくださることが多いので、
すごく恵まれているのかもしれません。
相思相愛で仕事をしているイメージがありますね。
伊藤
なるほど。いいですね。
モデルの仕事と女優の仕事って、
自分のなかで住み分けはあるんですか。
私たちから見るとまったく違う種類の仕事のように
思えてしまうんですけれど。
菊池
いや、そんなに深いことを考えているわけではないです。
でも昔よりも、だんだんその住み分けは
なくなってきてるような気はします。
完全に裏方の仕事と、
お芝居の仕事とではラインがあるけれど、
表に出るときは、モデルとしてでも、
役者としてでも、そんなに意識は変わりません。
ディレクションをする人がいて、
その人に呼ばれて出るときに、
何で呼んでもらったのか、
こっちかな、こっちかなみたいに
なんとなく察知するみたいなところはあるんですが、
それが器用にでき過ぎる自分は、
最近、嫌だなと思っていて。
伊藤
それは、どうして?
菊池
予定調和になるのがもともと嫌いだし、
必要なものを手のうちに全て持っていて、
その中から「はい、これね」って出せちゃう、
監督の意図をさっと理解してすぐにできる、というのは、
すごくプロフェッショナルだなと思うけれど。
逆に言うと「それしかない」ってことになるのかも、と。
伊藤
経験が重なると、できるようになっちゃうんでしょうね。
菊池
それじゃちょっと面白くないかも、って。
予測できない方がきっと面白いな、
と自分は思います。
伊藤
そっか。例えば取材を受けるのでも、
その編集部の考えとして、
「ここに落とし込みましょう」という意図が
見えてしまうと、話していて面白くない。
それと同じかもしれない。
菊池
うん、ある、ある!
伊藤
あれ、嫌だよね。
菊池
そう。ゴールはここですよね、ってなっちゃうと、
方向転換したくなっちゃう。
あまのじゃくだから。
伊藤
わたしだと「ていねいな暮らしをしている人」
というまとめで、くくられることが多かった。
数年前まで、そういう依頼が多くて。
「全然そんなことありませんけど」
って言ってました。
菊池
「サッポロ一番、食べますけど?」みたいな。
伊藤
そうそう! すると、ガックリされたりもして‥‥。
いろんな話の引き出しから、
そこが面白い、って広げていくのが面白いのに。
そうじゃないと、結局全部同じになっちゃう。
菊池
フォーマットを作った方が、ラクなのかな。
でも人間味に欠けますよね。
予定調和を嫌うのもたぶん同じ気持ちです。
(つづきます)
2021-11-23-TUE