REPORT

saquiはクチュール。
鈴木ひろこ

saquiの服を愛する3人の女性たちに、
その魅力について書いていただきました。
まずは、パリ在住の鈴木ひろこさん。
saquiの岸山さんとは、パリでも交流があったんですって!

鈴木ひろこさんのプロフィール

すずき・ひろこ
スタイリスト、ライター、コーディネーター、
ファッションコンサルタント。
パリ在住29年。
スタイリストとして、雑誌や広告、
音楽関係などで経験を積んだ後、渡仏。
現在は、女性誌を中心に
パリをはじめ、ヨーロッパ各国で取材・執筆を行い、
ファッション撮影のキャスティングや
オーガナイズを手がける。
日々、パリの街を歩きながら、
人、モノ、コトなど
さまざまな古き良きものや、
新しい発見をすることが趣味。
著書に『フレンチ・シャビーのインテリア』
『大人スウィートなフレンチ・インテリア』
『パリのナチュラルモダン・スタイル』
『シャンペトル・シャビーの家』(グラフィック社)
などがある。
「weeksdays」では、オンライン対談
「いま、どんな風に過ごしてますか?」に登場、
その1年後のようすをエッセイで寄稿

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saqui(サキ)の服には色香がある。
品のよさと、かっちりし過ぎない適度な抜け感。
それはパリの女性たちが好む、
ベーシックをちょっとだけ崩したラフさに似ている。
だからいつもsaquiを着るとき、
自然にパリの景色が浮かんでくるのだ。
わたしはパリに住んでいるので、
頭に浮かぶのではなく、
saquiの服がこの街にしっくりと馴染む
という意味だけれど。

きっしー、ことデザイナーの岸山沙代子さん
(友人たちの間ではそう呼ばれています)との出会いは、
彼女が女性誌の編集者時代。
最初はお仕事を通じて知りあい、
その数年後にきっしーのパリ留学がきっかけで
グググ~ンと仲良しになった。
なにしろ当時はしょっちゅう、
家ごはんに招いたり、招かれたり。
急なお誘いでも
街が小さいからすぐに駆けつけられちゃうし(笑)、
週末旅にも何度か行ったな‥‥。
以来、気の置けないお付き合いをさせていただいている。

きっしーが渡仏して間もないある日、
カフェで待ち合わせた時のこと。
薄い色合いのピンクのシャツを着て、
繊細なゴールドのネックレス、
そして垂れ下がる小さなピアスをつけた彼女が
店に入ってきた。
ボタンをふたつ開けた胸元の、
こなれた着こなしがとても印象的で、
本人が醸し出すピュアな清潔感と、
柔らかな風合いのシャツからのぞくアクセサリー。
それらすべてがとても洗練されていて、
思わず「素敵ね!」と伝えたのを覚えている。

それからしばらくして、
きっしーがブランドを立ち上げると聞いた時、心が躍った。
どんな服を作るのだろう? 
まっ先に浮かんだのは、
上品でありながら、モダンなエスプリを持つ服たち。
そう、あの日カフェに現れた時の装いのように
シンプルだけれど、少しだけ色気のある服。
想像しながらうきうきした。

わたしのsaquiデビューは、
2シーズン目の2017年秋冬コレクションから。
細かなグレンチェックのウールのパンツを購入した。
まず、触った瞬間の素材の柔らかさにうっとりし、
履いた時のシルエットの美しさにまたまたうっとり。
身長が低いから、パンツ選びは毎回難しく、
パリのブランドではほとんどお気に入りに出会えない。
でも、ワイドなシルエットでくるぶし丈のそのパンツは、
小柄なわたしが履いてもすっきり見えて、
スタイルアップを叶えてくれた。

「特に毎シーズンのテーマは決めずに素材を触って、
そこからインスパイアされて形にしていくの」

以前、きっしーが話してくれたことがある。

彼女のコレクションの多くは、
イタリアの老舗テキスタイルメーカーで、
高級ストールブランドとしても名高い
ファリエロ・サルティの素材を使っているが、
その手触りや、表面のおうとつ感、光沢など、
生地の表情を感じながら一点ずつ服を作っていくのだ。
仏語で「仕立て」を意味するクチュール。
服を作る人たちは”クチュリエ”と呼ばれ、
昔ながらの技法でフランスの文化を継承してきた。
素材の質感を大切に生かし、
女性の身体を美しく包み込むパターンとこだわりの仕上げ。
きっしーはまさにクチュリエであり、
saquiはクチュールだ。

だから、手持ちのワードローブに合わせても決まる。
Tシャツやシンプルなニットでも、
もしくは外国みやげのかごバッグとスタイリングしても
洗練された雰囲気にまとまる。
日常のあらゆるシーンに映えるリアルクローズなのに、
特別感を味わせてくれる。

わたしにとって、
この国の自信に満ちた女性たちのように
胸を張って、背筋を伸ばして歩くために、
saquiはいつも少しだけ背中を押してくれる。
なぜなら、確かなクオリティと不変的な魅力があるから。

エレガンス、シック、シンプル、モダン。
saquiの持つ色気は、
フレンチマダムの魅力と同義語なのだ。

2021-06-20-SUN