1980年、パリのレ・アール地区にうまれた
ショップをルーツにもつブランド、Harriss。
店主のマダム・Harrissの審美眼にかなったアイテムを
日本で展開し、本国のショップなき現在も、
ブランドの精神を引き継いで製作をしているのが、
東京のアパレル、金万(かねまん)です。
当初はフレンチ・トラッドのメンズウェアからスタート、
それを当時の女性たちが
「かっこいい!」と着るようになり、
Harrissは日本で独自に、
レディスに力を入れたブランドとして成長していきます。
日本サイドで、長くものづくりにかかわってきた
金万のデザイナー・今入幸江さんと、
営業担当の多田薫さんにお話をうかがいました。

そうそう、このお話には「前段」があるんです。
金万の社長である金子誠光さんのインタビュー。
以下のリンク先でくわしく紹介していますので、
どうぞ、ごらんくださいね。

●パリ発、世界経由、神宮前着。

今入さんのプロフィール

今入幸江 いまいり・ゆきえ

株式会社金万の企画生産部レディース課係長。
文化服装学院ファッション工科
アパレルデザイン科卒。
マンションメーカーを経て、金万に入社。
Harrissは、レディースライン立ち上げから
デザイナーとして携わる。
「子供の頃から絵を描くことや洋服作りが好きで、
小学生で自作のニットや帽子などを愛用する
物作り少女でした」

多田さんのプロフィール

多田薫 ただ・かおる

株式会社金万の営業・店舗部東京営業課所属。
東京出身、青山学院大学卒。
アパレルメーカー営業職を経て金万に入社、
Harriss他レディス全般の営業を担当している。
「旅が好きですが、最近なかなか行けないので、
週末は東京の街歩きを楽しんでいます」

全1回
金万 今入幸江さん、多田薫さんにききました。

──
今入さんは、Harrissのデザインを
担当なさっているんですよね。
今入
そうなんです。金万に入って28年になりますが、
ずっとデザイン畑です。
いまはHarrissのチームに3人いるデザイナーの、
まとめ役のような立場ですね。
ただ、金万の場合、
チームにパタンナーが不在で、
外部の人にお願いしてます。
これはこの規模のアパレルとしては、
珍しいことかもしれません。
これがなにを意味するかというと、
デザイナーとパタンナーが隣同士、
密なやりとりをして服をつくる、
というわけにいかないんですね。
つまり、わたしも、デザインに特化するわけにはいかず、
「外のかたとのやりとり」が増えます。
だからわたしは、デザイナー専任というよりも、
企画に近い立場で、外のパタンナーの方や、
通常はパタンナーが行なう、
たとえば縫製工場とのやりとりも行っています。
このやり方には、いいところがあって、
それは服作りを最初から最後まで
一貫して見られることなんですよ。
──
今入さんは、Harrissを、初期の頃から?
今入
そうですね。
日本に来た時にメンズから始まったHarrissですが、
レディースもやりましょう、となったとき、
私が担当することになったんです。
──
次のシーズンはこうしよう、というようなことは、
どうやって決めているんですか。
いわゆる、デザイナーがトップにいて、
クリエイションを続けているタイプのブランドとは、
ちがうように思えるんです。
今入
はい、誰かのクリエイションを尊重するというよりも、
チームでのミーティングありき、ですね。
デザインに入る前に、営業の多田と、
今シーズンどうだったか、
そういう話をしますよ。
──
多田さんはそこではどういう役割を?
多田
私は営業なので、取引先やユーザーの皆さんが
どういう動きだったか、反応はどうか、
そういったことを吸い上げて、企画に伝えます。
──
なるほど、こういう色が好評だったとか、
こういう形が好まれたとか、
どういうことを期待されているとか、
そういうことを知ったうえで、
じゃ、次の展開はこうしましょう、という‥‥。
今入
そうですね。
それからもちろん、リサーチも。
とくに、街を見ます。
ただ、このところ、自分で外に
ダイレクトに行くことが難しいですよね。
ですからこのシーズンは、
ネットのなかでいろんなところに出かけました。
それから、トレンドの予測も知っておいたほうがいい。
過去の予測が、いろんな国で、
どんなふうに展開をしているのかも見ます。
私の場合は日本の情報よりも、
海外のものが多いかもしれません。
ストリートの写真も見るんですよ。
──
意外! Harrissとストリートって。
今入
(笑)そうですよね。でも、いろんなところを見ます。
それを知ったうえで、Harrissはどうあるべきか、
かたちをつくっていくんです。
──
メンズの動向も見るんですか。
今入
いまはレディースを中心にやっているので、
以前ほどはメンズの動向を見ませんね。
Harrissの商品の主流がフレンチ・トラッドだった頃は、
古い資料をふくめ、ずいぶん勉強をしましたけれど。
──
そして、じっさいにデザイン画をつくるんですね。
今入
はい。でも、いわゆる、
モデルが着用しているようなスタイル画ではなく、
洋服だけを、小っちゃい線画で描きます。
なぜかというと、そっちのほうが
チームのみんなに響くから。
ハイファッションではないので、
八頭身のモデルが着用しているようなスタイル画は、
なんだかピンと来ない感じになっちゃうんですね。
だから、たとえばシャツの絵を描き、
パンツの絵を描いて、組み合わせてみたり。
そうそう、顔と胴体と脚が別々になっていて、
めくって組み合わせる着せ替えの
絵本がありましたよね。
あんな感じですよ(笑)。
チームのみんなもそうです。
ただ、みんなはパソコンで描きますが、
私はいまもアナログ。手描きです。
──
そうやってアイテムを決めていくミーティングは、
営業チームとデザインチームが合同で?
今入
デザインチームはデザインチームで話し、
営業チームの意見は別に聞いて、
わたしがふたつのアイデアをドッキングさせ、
お客さんにフィットすることを模索しながら、
かたちに導いていく、という感じですね。
多田
営業の意見が、デザインを決めてしまう、
ということは避けたいんです。
たとえば「来季は膝は出さないのがトレンド」と、
営業が言ったら、デザイナーの創造性を邪魔してしまう。
ある程度、情報を絞って今入に伝え、
さらに今入から、みんなに伝えてもらうんですます。
──
Harrissには、いろんなタイプの服がありますね。
定番的に、カジュアルに使える服もあれば、
ちょっとトレンド的な、
おしゃれの部分が強い印象のものも。
今入
じつは、Harrissのなかに、
いくつかのカテゴリーがあるんです。
ちょっとカジュアルで、デイリーなもの。
ちょっとメンズライクなもの。
定番的なもの。
そしてメインとなる、
ちょっときれいめのもの。
なぜそういうカテゴリーをつくったかというと、
メインのきれいめだけで合わせると、
「いったい、どこに行くの?」と言われそうな、
よそゆきすぎる装いになることがあるんです。
だから、カジュアルのものを合わせていただくことで、
全体のトーンとして、デイリーに着られるものになる。
そういうラインナップを目指しています。
多田
カジュアルなラインは、ネームも変え、
ちょっとシンプルなロゴにしているんですよ。
ブランド名は同じですが、手に取るとわかります。
──
気づきませんでした!
今入
今回の、リバーシブルなブルゾンは、
ネームが表に出ていないんです。
だからわかりづらいんですが、
そんなふうに分けているんですよ。
──
なるほど、こちらはブロック体のロゴ、
いつものHarrissは筆記体ですね。
今入
ブロック体のHarrissは、
定番的なもの、メンズ的なもの、
ワークやミリタリーなど、
そういうキーワードで、
オリジナルのHarrissと一緒に着られるよう、
あわせてつくっているラインですね。
オリジナルのHarrissだけだと、
ちょっときれいめすぎる、
っていうお客さんもいらっしゃる。
古くからあるブランドなので、
長いお客様も多く、
そういう皆さんにも、着回しができるようにと
考えているんです。
多田
なかには、ブロック体のHarrissのファン、
というお客様もいらっしゃいますよね。
ベーシックなものがお好きという。
今入
そうなんです。
──
さらに、HARRISS GRACEがあるんですね。
今入
HARRISS GRACEは、もうちょっとトレンド的で、
楽しむためのお洋服というラインです。
──
それでは、今回の、
リバーシブルブルゾンについて聞かせてください。
これは、あたらしいデザインですよね。
多田
はい、今季の新型です。
──
展示会で、伊藤さんの目が、パッと留まって。
「これ、いいな」って。
今入
あの時、一緒に歩いていた私もそう思ったんです。
いきなり「あっ、これ!」って。
伊藤さんって、スポーティな装いの印象が薄いんですが、
これは、スポーティなのにエレガントで、
なるほどって思ったんです。
たぶん、襟がついていたら、違ったんだと思います。
今入
おっしゃった通り、襟を付けると、
スポーツのフィールドブルゾンの印象になりますね。
この襟が、ちょっと丸っこいんだけれど、
ちょっとVも意識しているんです。
角度が絶妙で、これは着用するとわかる。
抜けて着てもかわいいし、
きっちり着てもかわいい。
Vが深いとまた違うんですが、
Vだけれど優しい感じが出て、
着た時に背中にも丸みをおびて、
ちゃんと豪華にもなる印象がある。
そういうところに惹かれたのかなと思いました。
──
しかも、エイジレス。
スポーティすぎると、年齢高めのかたは、
ちょっと着づらくなりますが、そうはならない。
今入
私ぐらいの年齢でも、着られます!(笑)
──
しかもユニセックスのサイズ展開ですね。
今入
男の人も着られます。
多田
こういう中綿ブルゾンの需要って、
すごくあると感じているんです。
暖冬の影響で着る時期が長くなっていることもあり、
薄手の防寒着が重宝する。
ちょうどいいものが作れたなと思っています。
──
リバーシブルにしたのはなぜですか。
今入
それはもうね、私たちも、
1つで2つの用途っていうのがすごく好きなんです。
多田
そうそう、好きなんですよ。
Harrissのお客様も同じです。
今入
Harrissには、リバーシブルだけじゃなくて、
前・後ろに着られるとか、ありますよ。
着方が2つあるって、やっぱりうれしい。
今入
ちょっと表情が違うでしょう?
キルティングがわかる着方と、
さらっとした着方と。
しかも防寒にも着られる。
ちょっと袖も長めにつくってるので、
あえて折って着てもらうと、
また表情が変わりますし。
──
だから、あえてボタンを袖に付けず。
今入
着やすいでしょう?
身頃もスナップで、リバーシブルにできます。
──
リバーシブルテクニックがすごいですよね。
ポケットが両方使える!
ということは、内ポケットとしても使えるから、
便利ですよね。
手ぶらで出かけられますよ。
今入
身軽な感じですよね。
──
中綿はポリエステルで、
薄めに感じますけれど、
いま、寒いところは車移動ですし、
都市部も、交通機関はあたたかですし、
そもそも暖冬ですから、
ちょうどいいような気がします。真冬でも。
今入
たとえばニットを着たいじゃないですか、冬になると。
なのに、厚手すぎるものを着ると、汗をかくほど暖い。
このブルゾンは、サイズ感がたっぷりしているので、
ニットと合わせても着られ、
暖さもちょうどよくなりますよ。
多田
首周りは、ストールやマフラーで
調節していただければすっきりと。
──
風も通しにくい。
今入
高密度の素材で、風も通しづらいですし、
弱撥水ですから、小雨ぐらいは気にせず
着ていただきたいです。
──
Harriss的にはどんなコーディネートを勧めますか。
多田
ちょっと女性らしく着るんだったら、
ワンピースにふわって羽織ったり。
もうちょっと動きやすく、だったら、
パンツもいいと思います。
そのときは、ブルゾンがふかっとして
シルエットの雰囲気があるので、
すっきり目のパンツがいいかも。
意外かもしれませんが、きれいめでもいけるので、
足元にパンプスでも合いますよ。
で、中にニットとか。
タートルが見えるのも素敵ですよね。
今入
すっきり系のデニムを履いてもいいですよね。
──
じゃ、持っている服が使えますね。
多田
使えますよ。
たっぷりしてるから、
長い丈のものを裾から出して着ても、
バランスが取りやすいです。
今入
すごくベーシックだし、
サイズ感も大きいので、
ずっと着ていただけると思います。
──
伊藤さんセレクトの3つのカラーがあるのも
とてもいいですね。
どの色を選んでも、ストールやインナーで
また印象が変わるので、
いろいろ楽しめそうです。
今入
手洗い可能で、お家で洗えますから、
この秋冬から、たくさん着ていただけたらと思います。
多田
白は汚れが、と気になるかたにも安心ですよ。
春先になった時に、
ダークなコートはもう着たくないけど、
気分は春で、でも寒いのは嫌、
というときにも、ぴったりです。
──
そうですね! 今入さん、多田さん、
どうもありがとうございました。
(おわります)
2020-10-25-SUN