「weeksdays」のロングセラーである
SAQUIのフォーマルウェアに、
夏物のワンピースが仲間入りします。
イタリア生れのあの上質な
Faliero Sarti(ファリエロ サルティ)の生地を使った、
ケープで肘がかくれるノースリーブ。
この美しいデザインが生まれたきっかけは?
シンプルさの中に、うんと上等な印象があるひみつは?
伊藤まさこさんが、SAQUIデザイナーの
岸山沙代子さんに聞きました。
岸山沙代子さんのプロフィール
岸山沙代子
大学の家政学部で被服を学んだのち、
手芸・服飾系の出版社へ。
働きながら「東京立体裁断研究所」に通い、
立体裁断を学ぶ。
別の出版社に転職後、伊藤まさこさんの担当に。
編集者歴10年を経た頃、
デザイナーになる夢をかなえるべく、渡仏、
パターンの学校へ通う。
パリでの3年を経て帰国、自宅をアトリエにして
「SAYOKO KISHIYAMA (サヨコキシヤマ)」名義で
自身のデザインによる服づくりをはじめる。
2016年「saqui」をスタート。
そこから年に2回のコレクションを発表しつづけ、
2024年秋冬シーズンにはパリコレクションに参加、
ブランド名を大文字の「SAQUI」に変更した。
■saqui website
■Instagram
■[interview]saqui 岸山沙代子さんのこと。
■weeksdays これまでのSAQUIのコンテンツ
01暑いときでも素敵に見えるフォーマルを
- 伊藤
- 岸山さん、どうぞよろしくお願いします。
今日は、新しいフォーマルについてお聞きしたくて。
新作を見て、
SAQUIのフォーマルが進化している! って、
びっくりしたんです。
夏物をつくったのには、
なにかきっかけがあったんですか。
- 岸山
- はい。昨年6月に身内を亡くし、
喪主側として喪服を必要とする機会があったんです。
もちろん今までつくった
SAQUIのフォーマルを着たんですが、
まず、つくっておいてよかったな、と、
感じました。
- 伊藤
- そのときは何を着て?
- 岸山
- 6月上旬でしたから、
フレアのワンピースに、
シンプルなタイプのジャケットを着て行きました。
和室が多かったので、フレアが、とてもらくで。
- 伊藤
- なるほど。ずっとお座敷で?
- 岸山
- いえ、式場は椅子席だったんですが、
控室が和室で、正座をすることも多かったんです。
- 伊藤
- フレアなら、正座の場でもらくでしょうね。
- 岸山
- そうなんです。
あと、車の乗り降りもとてもらく。
脚も見せずに済みますしね。
そして四十九日が7月中旬で、
すごく暑いときだったので、
ジャケットはなしで、
フレアのワンピースだけにしました。
けれども私の地元のおばさまがたは、
ちゃんと夏用の喪服を持っているんですよ。
袖がちょっと透けているようなジャケットですね。
- 伊藤
- やっぱりそうなんですね。
ご近所さんとか、お手伝いもあるんでしょうね、
着る機会が多いのかも。
だから、いつ、どんなことがあっても大丈夫なように
「ちゃんとしておく」ということなんでしょうね。
- 岸山
- そう、まさしく「ちゃんとしてる!」と思いました。
でも、ジャケットを着ればいいかというと、
さすがに真夏に裏地のついたジャケットでは、
着る方も、見た目も、ちょっと暑苦しい。
あと、SAQUIのイベントで百貨店に立っていると、
「夏用のフォーマルはありませんか」
と訊かれることもあったんです。
- 伊藤
- 多くのかたがきっと
夏用のフォーマルウェアを欲していると、
ご自身の体験も含めて痛感したんですね。
- 岸山
- はい、これはつくらないと! と思いました。
そして、つくるにあたって、
ノースリーブだけじゃダメだな、と。
半袖にしても、私たち、
肘を出すのは避けたいわけで、
そういう条件のもとで、いちばんシックで、
素敵に見えるフォーマルってどういうものなのかな、
って思いながら、デザイン画を描きました。
そうしたら、だんだん、
中はノースリーブで涼しく、
肩周りにちょっとしたケープみたいなものがついて、
肘まで隠れて‥‥と、
このワンピースのデザインができあがって。
- 伊藤
- そういうことだったんですね。
素材はいままでと同じですが、
裏地のないつくりですね。
- 岸山
- はい。実は夏用として
薄い生地でつくることも考えていたんですが、
こういうミニマムなデザインって、
薄い生地だと安っぽくなるんです。
ですから今までずっと使ってきた生地でつくるのが
いいんじゃないかなと。
裏地は切り替えの部分だけです。
- 伊藤
- 身頃に裏地がなくても透けない生地ですから、
大丈夫ですね。
それに、フォーマルウェアって、
着た状態で外を長く歩くようなことが
ほとんどありませんから、
裏地なしのこの生地なら夏物として着ても
大丈夫だと思いました。
- 岸山
- はい。それに、脇の下をあけているから、
風が通って、涼しく感じますよ。
- 伊藤
- 隠したいところは隠れている、
という安心感もあるし、
ちゃんと「わきまえている」デザインですよね。
SAQUIらしさもあって。
- 岸山
- ありがとうございます。
ケープって、SAQUIらしいデザインだと思うんです。
前につくった
「ノーカラー スリットスリーブ ジャケット」も
ちょっとケープっぽいですよね。
手がちらりと見えて。
- 伊藤
- ほんとうに。
- 岸山
- これから夏を迎えるにあたって便利です。
- 伊藤
- すごくカッコいいと思う!
一枚持っていれば安心ですよね。
わたしも、昨年の9月、伯母のお葬式があったんです。
まだすごく暑くて、母が、
「親族だけだし、黒いシャツとパンツで大丈夫よ」
って言うのを、それはダメよ、と、
わたしはSAQUIのジャケットとテーパードパンツにして、
母にはSAQUIのワンピースを貸したんです。
それで、母は前の方の席にいたんですが、
後ろから、喪服を着た人がズラッと並んでいる中で、
母がすごく質のいいものを着ているのがよくわかりました。
あとから、「ほら、これでよかったでしょ?」
「ほんとねー!」って。
- 岸山
- お似合いになりそう。
- 伊藤
- ね。やっぱりフォーマルをちゃんと持ち、
適切な機会に着ることは、
とても大事なことだなと思って。
自分の見え方もそうなんだけれど、
亡くなった人に対する礼儀として、
「ちゃんとしてきました」っていうことですよね。
大人としてきちんとしていた方がいいし、
実際そうしてよかったって、そのときすごく思いました。
- 岸山
- そうなんです。私も母のお葬式のとき、
職業柄、皆さんが着ているものを見ちゃうんだけれど、
総レースの人がいると、なんだか嬉しかったです。
間に合わせのものじゃなく、
母のために、きれいにビシッとして
来てくださったんだなって。
亡くなった人に対しての思いは、
残された者にも伝わるんですよね。
- 伊藤
- そう思いました。
- 岸山
- 準備は大事。まさか! と思ったけれど。
こんなに早く‥‥、と。
- 伊藤
- そうですよね。
わたしも昨年あたりからお別れが増えてしまって。
古くからの友人が60歳で亡くなったときは、
お通夜にSAQUIのフォーマルを着ていきました。
お通夜はもうちょっと簡単な服装でもいいと言われますが、
ちゃんとしたい気持ちがあって。
- 岸山
- 地域によってはお通夜からちゃんとしましょう、
というところもありますね。
- 伊藤
- そうみたいですね。
(つづきます)
2025-04-14-MON